オリジナル フィアット 500
楽しさの中には、速さが含まれていなくてもいいという究極の証明が、ここにあるのかもしれない。そう、500はこのリストの前のページに登場したクルマと同じ基本的な考え方を踏襲しているのだ。軽量化、小さなプロポーションなどの点で。しかし、それらの恩恵を受けても、標準装備の479ccエンジンの13hpという数字では、たとえ車全体の重量が500kg未満であっても、手に汗握るパフォーマンスを提供することはかなわないだろう。
もちろん、アバルト 695には18、22hp、38hpのバージョンがあった。それが700ccの2気筒エンジンで働いていたことを考えると、かなり健全だ。しかし、いずれも小さなフィアットで楽しむために必要なものではない。
チンクエチェントは、これまでに考え出されたインダストリアルデザインの中でも最高の作品のひとつであるだけでなく、TVドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の1シーズンを超える個性を持っている。材料、ランニングコスト、修理代、内装、そしてもちろん価格など、あらゆる面で可能な限り経済的になるように設計されているが、セールスマンが目の前で、両手をこすり合わせながら「お願いですから、買ってください、ノルマがあるんです!」と、必死のアプローチをしているわけではない。
だから、97km/hのトップスピードが鼓膜を打ち鳴らすような音で到達しても、ヒーターをシャットアウトしようとしてもキャビン内に熱風が漏れる傾向があることや、基本的にシチリア島以北のすべてのバンビーノには「錆びついた」という愛称を付けるべきであることなんかは問題ではない。500は、これまでに考えられた人間と機械の間の、最も純粋で最も直接的なコネクションの一つとして評価されている。あなたが火とポンプとレシプロによって、動力を与えられた機械を動かしているという事実から、緩衝材も絶縁も存在しない。
しかし、数十万円払っても、火を噴くようなサーキット専用車ではない。500は陽気で和気あいあいとしていて、クルマと二人で協力して丘を征服しているような印象を与えてくれる。ていうか、むしろ、その丘を征服するためには、絶対に協力しなければならないし。しかし、そのうちあなたは、いつも同じように協力し合うのが、好きになっているだろう。