マセラティ・コルセ初の女性責任者、マリア コンティ氏が語るレースと電動化の未来

マセラティのモータースポーツ部門「マセラティ・コルセ」を率いる初の女性ヘッド、マリア コンティ氏がフォーミュラE東京で来日。伝統と革新を融合するマセラティのレース活動、電動化戦略、そしてダイバーシティ推進の舞台裏を語った。ブランドのDNAを再びサーキットで輝かせる彼女のビジョンとは?

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マリア コンティ氏は、マセラティのモータースポーツ部門「マセラティ・コルセ」の責任者(ヘッド)である。マセラティが女性リーダーをモータースポーツ部門のトップに据えるのは初めてであり、ダイバーシティ推進の象徴的な人事でもある。その彼女が、フォーミュラE東京に合わせて来日し、インタビューの機会を得ることができた。

彼女はマセラティのレース活動を「ブランドの情熱とDNAをサーキットで復活させること」と位置付け、伝統と革新を両立させる姿勢を強調している。また、若い世代への機会提供や育成の重要性も語っており、モータースポーツ界における多様性や次世代育成にも積極的だ。

近年は、マセラティの電動化戦略やフォーミュラEへの参戦、GT2など国際的なレースへの復帰を主導し、ブランドのグローバル展開とイノベーション推進に大きく貢献している。

彼女がマセラティ・コルセの責任者に就任した経緯は、彼女がマセラティのチーフ・コミュニケーション・オフィサー(CCO)としてブランドの広報や戦略的コミュニケーションをリードしてきた実績が評価されたことが背景にある。マセラティは近年、モータースポーツ活動の再強化や電動化戦略を推進しており、ブランドの伝統と革新を両立させる新たなリーダーシップが求められていた。

その中で、コンティ氏はブランドの歴史や価値観への深い理解と、グローバルな視点でのコミュニケーション力、多様性推進への意識を持つ人物として抜擢された。

―マセラティのレース活動の歴史を、マリアさんご自身はどのように捉えていらっしゃいますか?
マセラティはモータースポーツにおいて、1926年から続く大変長い歴史を持っています。99年の歴史になりますね。歴史はありますが、同時に現代的なブランドでもあります。ブランドのスタートは、シチリアのタルガ・フローリオという世界で最も古いレースへの参加であり、これがブランドに価値を与えてくれたと感じています。これまで、GTチャンピオンシップや、グランツーリスモを発明するなど、多くの成功を収めてきました。ファンジオと共にフォーミュラ1でも250Fで成功しています。過去には、USでのCTFや、2019年のMC12でも成功を収めています。

―2015年から2022年までの7年間の空白を経てレースに復帰し、特にフォーミュラEに参戦した一番の狙いは何だったのでしょうか?
モータースポーツは、楽しいだけでなく、マーケティングツールのひとつでもあります。それ以上に、モータースポーツはマセラティというブランドのDNAの一部であり、切り離すことはできません。また、より実用的な側面としては、車の販売にも重要な役割を果たしています。マセラティはレーシングトラックで生まれたブランドであり、そこで培われたDNAを、公道を走れる車にフィードバックしてきています。私たちはパフォーマンスの高い車を作っていますが、例えばレーシング用のGT2と、公道用のGT2ストラダーレのように、レーシングカーのデザイン、テクノロジー、DNAを行動車に反映させています。私たちの目標は、過去のレース活動の歴史を将来の公道車にも反映し続けることです。

―今後のマセラティのレース活動について、何か予定や追加参戦などがあれば教えてください。
この2年間で作り上げてきたことを固めたいと考えています。現在は、GT2カスタマーレーシングプログラムをヨーロッパシリーズから世界中に広げたいと思っています。これは、お客様がGT2チャンピオンシップに参加するプログラムで、世界中でこのチャンピオンシップが開催されています。ですから、グローバルに様々なお客様と取り組んでいきたいです。また、GT2ストラダーレのような公道版は、プロではない、いわゆるジェントルマンドライバー向けの車です。レース用の車と同じように美しい車、レースと同じ情熱を公道を走れる車に反映したいと考えています。プロダクトチームと連携して、公道車にも同じ情熱を注いでいくことが将来の目標です。

―マリアさんはモータースポーツ部門初の女性責任者として、どのような意義やチャレンジングなことを感じていますか?
この質問は、聞いていただいてとてもありがたいですし、誇りに思っています。モータースポーツ界で最初の女性と言うと、やはり250Fのドライバーだったマリア・テレーザ・デ・フィリピスだと考えています。私は運転は好きですが、レーシングドライバーではなく、このブランドをマネージする立場です。過去22年間、主に男性の多いチームで働いてきましたが、何が重要かというと、情熱、好奇心、能力、そして異なる視点をもたらすことだと考えています。マセラティはパフォーマンスだけでなく、エレガンスさも兼ね備えたブランドですので、女性ならではの視点を入れることが重要だと感じています。例えば、エンジニアと仕事をする中で、GT2の完成時には、座り心地やペダルの位置など、私の意見を求めてくれました。彼らは「女性だから分からないだろう」ではなく、「違う視点からの意見を聞いてみたい」と言ってくれます。自分にとっては、常に異なる視点や付加価値を提供する必要があるのでチャレンジングですが、皆さんから大きなリスペクトを感じます。色を決める作業など、楽しい部分もあります。

―ダイバーシティの推進や女性の活躍について、マセラティやモータースポーツ界における課題と展望についてお聞かせください。
個人的には、今までとてもポジティブで楽しい経験が多く、ラッキーだったと感じています。私が初の女性トップとなった理由の一つは、会社の皆さんが温かく受け入れてくれた、平和な環境だったからです。もちろん成果を出す必要はありますが、現時点では大きなチャレンジは感じていません。会社自体がインクルーシビティとダイバーシティを非常に重視しています。オープンな考え方や、積極的にインクルーシビティを取り入れる姿勢が非常に重要だと考えています。マセラティでは、最初の女性テストドライバーを採用しています。エンジニアチームが車を開発・テストした後、必ず女性チームがテストを行います。これは、男性だけでは想像しにくい状況、例えばヒールやスカート、着物を着たままでも運転したり乗り降りしたりといった、女性ユーザーの視点からの使いやすさを確認するためです。バタフライドアも、エレガントな着物でも乗り降りしやすいようにというフィードバックから生まれた例です。会社の文化は非常に良く、その一員であることを誇りに思っています。ただし、成果が出ているうちは問題ないと思いますが、もし課題が生じた場合に「女性だから」と言われる可能性はゼロではないかもしれません。しかし現時点ではそのような課題は感じていません。

―フォーミュラEでのマセラティのこれまでの成果と、明日から始まる日本でのレース、そして2025年に向けた意気込みについて聞かせてください。
日本は2024年に表彰台を獲得したので、マセラティにとって非常に特別な場所です。明日のレース(インタビュー実施日の翌日)については、雨が強すぎなければ、雨が降るとタイヤが路面により密着し、ドライブしやすくなるという点では良いと考えています。車の準備はできており、チームも非常にワクワクしています。ドライバーのジェイク ヒューズは、このレーストラックを楽しみにしていますし、シティレーストラックとして非常に適していると言っています。チームはモナコやパリのシミュレーターで多くの時間を費やして練習してきました。もう一人のドライバー、ストフェル バンドーンも、他のチャンピオンシップに参加するなどして練習を重ねています。チーム全体が良いムードで、準備万端です。良い結果をもたらしたいと願っています。

―電動化やサステナビリティへの取り組みとレース活動の関係性についてどのように考えておられますか?
フォーミュラEへの投資は、これが初の公式な、完全電動でカーボンゼロのモータースポーツチャンピオンシップだからです。マセラティは、グレカーレ フォルゴーレやグランツーリスモ フォルゴーレといった完全電動車のラインナップを持っています。これは単にサステナビリティへのコミットメントだけでなく、まず電動車戦略への重要なリンクです。現在、これらのモデルは日本の市場にはまだ投入されていませんが、だからこそフォーミュラEでトライデント(マセラティのロゴ)を見せることは、ブランドが電動化へ向かっているという明確な声明になります。私たちの目標は、CO2排出量を削減し、最終的にゼロにすることです。もちろん、パフォーマンスやエンジンの良い音を求めるお客様のことも忘れていません。会社としてサステナビリティにコミットしつつも、パフォーマンスを忘れないようにしたいと考えています。フォーミュラEへの参戦は、イタリアのモーターバレー(イタリアの自動車メーカーが集まる地域)で、マセラティが初の電動参戦ブランドとなったという意義もあります。現在の内燃機関車においても、CO2排出量を削減しつつ適切なパフォーマンスを出すために、フォーミュラ1の技術であるプレチャンバーなどを活用しています。

―日本のマセラティファンの方にメッセージをお願いします。
日本はGTの国だという認識がありまして、マセラティはまさにGTですので、非常に強い繋がりを感じています。週末のレースを楽しみにしています。日本のファンの皆さん、本当にありがとうございます、心から感謝しています。そして、これからも私たちをフォローしてください。マセラティの歴史の次のページを、共に書いていきましょう。

たいへん真摯に、そしてフラットに質問に答えてくださったマリアさんだったが、初の女性ヘッドという過度な気負いもなく、生き生きと仕事をこなしている様子が伺えた。そこは、マセラティという企業がインクルーシビティとダイバーシティを非常に重視し、平和な環境で働けることが要因であるだろう。結果、雨天のTokyo E-Prix第8戦はマセラティMSGレーシングのストフェル バンドーンが優勝し、Tokyo E-Prixで2年連続の勝利を飾った。これからも、マセラティの活躍が大いに期待される。

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