「刺さる人には刺さる」では終わらせない。アルファ ロメオが本気で市場を獲りにきた。待望の新型コンパクトSUV「ジュニア」が、ハイブリッドとEVを引っ提げ420万円からという戦略的価格で日本上陸。合理性や静粛性がトレンドの市場に、イタリアの情熱と色気、そして“操る快感”という名の爆弾を投下する。これは、かつてのジュリエッタ/ミト難民を救い、次世代のアルフィスタを創出するための、周到な一手だ。
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アルファ ロメオの新型コンパクトSUV、ジュニアが6月24日のアルファ ロメオ生誕記念日に合わせて日本でも発表された。パワートレインはハイブリッドのIbrida(イブリダ)と、電気自動車のElettrica(エレットリカ)の2タイプとなり、イブリダは4,200,000円/4,680,000円(プレミアム)/5,330,000円(スペチアーレ/デビュー限定200台)、エレットリカはプレミアムのみの設定で5,560,000円となる。
プレゼンテーションは、1月から就任したステランティスジャパン代表取締役社長の成田 仁氏、アルファ ロメオ事業部 事業部長の黒川進一氏、そしてアルファ ロメオのチーフエクステリア AR デザイナーのボブ ロムケス氏によって行われた。
成田氏は次のように語った。「幼少期から車に囲まれた環境で育ち、自動車業界でのキャリアは自然な流れでした。ステランティスジャパンで日本市場全体の責任を持つ職務に就くのは初めてで、日々大きなプレッシャーも感じる一方で、車好きには「夢のような職場」と語っています。
使命は、強い情熱を持って日本の顧客に多くのステランティス製品とそのアフターサービスを届け、ブランドへの喜びを感じてもらうことです。ステランティスは世界で15のブランドを擁する自動車メーカーですが、日本市場では商用車を含む8つのブランドを展開しています。
それぞれのブランドは多様で個性的であり、日本のお客様に愛されています。アメリカやイタリアにルーツを持つブランドは、それぞれの国で培われた文化、歴史、人々のライフスタイルを体現したモデルを揃えています。ステランティスジャパンは、顧客の様々なニーズに応え、「車のある生活そのもの」を提案したいと考えています。
これらの8つのブランドと製品は、日本市場のメインストリームではないかもしれませんが、「刺さる人には刺さる」存在です。単なる移動の道具やステータスブランドではなく、顧客一人ひとりの人生やライフスタイル、生き様を表現するための「ステートメントブランド」として製品を提供し続けたいです」
アルファ ロメオは、1910年にミラノで誕生したイタリアそして世界が誇る、レーシングスピリットに溢れたブランドである。エンツォ フェラーリをはじめ多くのレーサーたちがブランドに魅せられ、数々のレースシーンでその名を馳せてきた。サーキットでの栄光に裏付けられたスポーツマインドと、磨かれた走りの技術と情熱で、様々なモデルを世に送り出し、今年で115周年を迎える。
日本市場における現在のラインナップは、スポーツセダンのジュリア、レーシングスピリットに溢れるSUVのステルヴィオ、そしてミドルサイズSUVのトナーレの3車種だ。時代と共にアルファ ロメオは大きな進化を続け、プラグインハイブリッドをはじめとした電動モデルにおいてもラインナップを充実させてきている。その中で、多くの顧客からコンパクトカーの復活が望まれていた。かつてのジュリエッタやミトといったコンパクトカーは好評を博していたのも事実である。
そのような機運の中で発表されたのが、まさに顧客の期待と歴史に裏付けられたスポーティーなデザインやテクノロジーを受け継いだ新型コンパクトSUVのジュニアである。コンパクトサイズであっても、アルファ ロメオらしい大きな情熱に満ちた車である。アルファ ロメオジュニアに乗ることで、そこに存在する「紛れもないアルファ ロメオの情熱のDNA」を感じてほしいと語られた。
ここでアルファ ロメオブランドCEOサント フィチリ(Santo Ficili)氏からのビデオメッセージが紹介された。
「ジュニアは単なる車ではなく、コンパクトで効率的なパッケージにパフォーマンス、デザイン、テクノロジーを融合させた、未来への架け橋となるクルマです。既に全世界で14,000台以上の受注があり、そのうち15%が日本からの受注であることから、日本市場の重要性を理解しています。日本は美しさと精密さ、パフォーマンスと情熱が融合するブランドを常に評価しており、それがアルファ ロメオであると述べています。現在、インド・アジア太平洋地域の売上の50%以上が日本からのものです。
アルファ ロメオの伝説的な歴史 - フォーミュラ1世界選手権、ミッレミリア24時間レース、8C、ジュリア、デュエット、新型33ストラダーレなど -は、この遺産が最先端のテクノロジーと情熱を融合させ、未来を形作るのです。テニス選手のジャスミン パオリーニ選手とのパートナーシップが「決意」を象徴し、アメリカズカップ挑戦艇「ルナロッサ」とのエキサイティングな旅が「挑戦への情熱」を示しています。ジュニアは「皆さんのために」作られた車であり、多くの人がジュニアを体験し、情熱を感じてほしいと願っています。アルファ ロメオは「ハンドルの後ろに座った瞬間に真の輝きが明らかになるブランド」であります。
世界的な課題(コスト上昇、新技術、激しい競争)に直面していますが、アルファ ロメオは決して簡単な道を選ばないブランドであり、情熱、個性、そして紛れもないアイデンティティがジュニアには宿っています。日本との新しい章が始まることを喜んでおります」
アルファ ロメオ事業部長黒川氏による説明が行われた。
ジュニアの3つの魅力:
1.唯一無二の美しいスタイリング:感動的で魅力的なデザインはアルファ ロメオにしか作り出せない。単なる移動の道具ではなく、所有することで感性を刺激する特別な日常が手に入る。
2.官能的な走りの喜び:ステアリングを握った瞬間、胸の高鳴りが官能的な体験へと昇華する。アルファ ロメオの真髄はその走りにあり、スペックの数字だけでは語れないドライバーと車が一体となる感覚がある。日常の退屈な移動を五感に訴えるエモーショナルな時間へと変えてくれる。効率や合理性を追求した車とは全く異なる次元の存在である。
3.アルファ ロメオの歴史に刻まれたDNA:車が本来持っていた「運転する楽しさ、操る快感」をこの1台に注ぎ込んだ。人を揺さぶる車を作り続けられるのはアルファ ロメオの歴史とDNAがあるから。
「ジュニア」の名称:かつて若者たちを熱狂させた伝説へのオマージュ。
ジュニアが体現するもの:美しさへの執念、速さへの渇望、そして車に魂を込める職人たちの情熱。過去から未来へ続くアルファ ロメオの熱い血が紛れもなく流れている。
ターゲット層:単なるニューモデルではなく、「次世代のアルフィスタ(Alfa Romeoファン)」のために作られた新たなアイコンであり、次世代に向けたアルファ ロメオの新しい挑戦の始まり。これまでのアルフィスタはもちろん、車や自身のライフスタイルに「本物のこだわりを持つ新しい世代」に届けたい。
ジュニアの製品特徴とラインナップ
実用性:セクシーなボディの中にライフスタイルを考え抜いた実用性が秘められている。
サイズ感:全長4.195m、全幅1.78mと、日本の都市部でも意のままに操れるコンパクトなボディ。
カーゴ容量:400L超えで、クラストップレベル。週末の冒険や日々のショッピングを自由にサポート。
パワートレインとラインナップ:顧客の多様なライフスタイルと価値観のために2つのパワートレインを用意。
1.イブリダ(ハイブリッドモデル):
アルファ ロメオ伝統のフィーリングと未来の効率性を融合。従来のマイルドハイブリッドとは異なり、発進時や街中の低速走行ではEVとして静かで滑らかに振る舞う。
アクセルを踏み込むと電気モーターがエンジンを瞬時にアシストし、力強い加速を生み出す。燃費のためだけに妥協したシステムではなく、アルファ ロメオの走りのコンセプトをモーターの力でさらに研ぎ澄ますための新しい選択肢。
2.エレットリカ(電気自動車モデル):
未来的な静粛性とアルファ ロメオならではのダイナミックな走りを両立。アルファ ロメオの走りの哲学を電動化時代に合わせて再定義した。
航続距離:フル充電で494kmと十分な距離を誇る。日常の充電の煩わしさから解放され、ストレスのないロングドライブが可能。
走り:フロア下のバッテリーによる低重心設計が、路面に吸い付くようなコーナリングと驚くほど俊敏なハンドリングを実現。静かでありながらダイレクトなトルク感が意のままのドライビングを可能にする。新しい時代の「人馬一体」を体験させ、未来のアルファ ロメオそのもの。
黒川氏は次のメッセージを伝えた。「新型ジュニアは、人生はもっと自由であるべきという問いかけでもあります。常識や他者の評価ではなく、自身の感性を信じ、純粋に心が騒ぐものだけを選ぶ。ジュニアはそんな新しい世代のアルフィスタのための新たなパートナーになれる存在だと確信しています。ジュニアに託したメッセージは「胸よ、さわげ」。この直感の答えを確かめてほしいです」
続いて、チーフエクステリアデザイナーボブ ロムケス氏によるデザイン説明が行われた。
ピエモンテ州ヴェルチェッリ県にあるアルファ ロメオの歴史的なテストコース、バロッコプルービンググラウンドで走行テストが行われ、非常に楽しい走りであり、ハンドリングも優れている。
デザインのインスピレーションは、「ロッソ(情熱)、イタリア(イタリアらしさ)、スポルティーヴォ(スポーティーさ)」。アルファ ロメオは常に真のスポーティーブランドであり続ける。ヘリテージと歴史も重要だ。過去を大切にし、デザインアプローチは「エモーショナル」「ビジュアル」。車が楽しさ、スピード、動き、特に「楽しさ」を刺激する。ジュニアはこれらの要素を正確に捉えている。ジュニアの顔つき、筋肉質なショルダーラインは、車とオーナーの間の非常に強い感情的なつながりを生み出す。
フロントデザイン:
ヘッドランプはジュニアの「目」であり、個性と決意を持ってデザインされ、路上に焦点を当てている。中央の「スクデット」が主役。このスクデットは、アルファ ロメオ史上初のフルEV車であるジュニアの「新技術への移行」を告げる特別なものだ。ロゴ(ミラノの紋章とビショーネ)が拡大され、よりモダンでグラフィックな解釈がなされており、ヘッドランプへ横方向に広がっている。ヘッドランプは特徴的で象徴的な「3x3ライティングシグネチャー」を特徴としている。
サイドプロファイル:人間の体のように、ジュニアのボディには平らな面がない。動きとダイナミズムの感覚を生み出すために、影と光を彫刻のようにデザインしている。
ディテールへのこだわり:リアウィンドウの円形の形状は、過去の車のリムからインスピレーションを受けている。
リアデザイン:
スポーティーさは、リアウィンドウの逆さになった「コーダ トロンカ」(切り詰められた尾)の形状によって強調されている。これは歴史的なモデルから受け継がれたレガシー要素だ。
デザイン哲学「ネチェッサリア ベルレッツァ」(必要な美しさ)を体現しており、最高の空力性能と美しさを両立させている。
インテリア:足を踏み入れた瞬間に「真のアルファ ロメオ」を運転していると感じる。歓迎され、スポーティーでエレガント。レーシンググローブのようにフィットする。
特徴としてヨークステアリングホイールが挙げられる。「カンノキアーレ」(メータークラスター)は象徴的なダブルD型で、常にアルファ ロメオ車に存在する特徴だ。ダッシュボードのエアベントは、「クローバーリーフ」の形をしており、幸運のお守りにインスパイアされている。また、非常にスポーティーなシートプロファイルを持っている。
デザインの経緯:2021年夏にCEOから、アルファ ロメオのラインナップを完成させるためのコンパクトなスポーツカーのデザインを依頼された。33 ストラダーレも同時期の活動となり、同じブランドで極端な車を同時に持つことは非常にユニークなことだ。
同日夜には、Alfa Romeo JUNIOR Japan Premiereが開催され、長谷川京子さんとケイ コッツォリーノさんとのトークショーが開かれた。長谷川さんは次のように語り、アルファ ロメオへの愛情が伝わってきた。
「1台目にアルファ ロメオの159を購入し、数年間乗った後、アルファ ロメオ専門のヴィンテージショップで、90年代のアルファ ロメオ スパイダー ベローチェに「一目惚れ」し、乗り換えました。このスパイダー ベローチェはオートマチック車でしたが、マニュアル車の免許も取得しました。私はとてもスポーツカー好きです。スパイダー ベローチェの魅力として、丸みのある作りの中に女性らしさや色気など全ての要素が入っていると思っています。特に、黒いスパイダー ベローチェにベージュの革のシートのコントラストがたまらなくって購入を決めました。ヴィンテージカーに乗るのは、唯一無二感であったりとか、乗っている時の高揚感がありますね。運転中には周りの人が見てくるため、お洒落に気が抜けないのです。
この新型ジュニアを見た時、最初に159やスパイダー ベローチェを見た時と同じくらいの「あっという感じ」がありました。車内に乗った際には「包まれる感じ」や「繭の中にいるような安心感」を感じたと同時に、「スポーティさもあってとても素敵だなと思いました。
私にとって車は、離れられない生活の一部であり、「第2の家」なのです。移動手段として車を使用し、台本を読む時や一人で昼食を軽く食べる時、そして「とにかく一人になりたい時」にも車の中にいるからです。車の中の空間は自分の家と同じぐらいの居心地の良さがあり、さらに居心地の良さプラス高揚感を重視しています。機能性や便利性はもちろん大切ですが、「胸がワクワクするっていうことがいかにこう自分を高めているか」という点を車に求めています。自分の運転にも自信があります(笑
1台目の車が2シーターだったものの、購入後すぐに子供ができたため、その後セダンに乗り換えました。あと数年で子供たちがもうね、社会に旅立つタイミングでまた2シーターに乗り換えたいです。将来的には、アルファ ロメオのスパイダー ベローチェをその時に出会えたら買いたいなと思います。
アルファ ロメオって乗ってみないと分からない、イタリアのムードがあるんですよね。とくに旧車は簡単な車ではなくて、大変なんだけどそれが可愛いみたいなところもあるのです。まだ新型ジュニアを試乗できていないため、早く乗りたくて仕方がないです」
アルファ ロメオのチーフエクステリアデザイナーであるボブ ロムケス氏への質疑応答が行われた。
―2種類のスクデット(グリル)のデザインの違いについて、特にEVへの移行を考慮したデザイン変更点は?
プレゼンテーションで発表した車両のスクデットは、EVへの移行を大胆に、かつ短期間で表現することを意図しました。非常に大きな横方向のグラフィックが特徴で、これによりモダンさを表現しています。ジュニアは最も小型の車種ですが、このサイズでも遊び心を表現したかったのです。
もう一つのスクデットはよりクラシックなタイプで、より落ち着いた表現が含まれています。発表時に使われたものが「プログレッソ(Progresso)」、クラシックな方が「レジェンダ(Leggenda)」と名付けられています。
―今後、アルファ ロメオの他の車種もこの新しいデザイン哲学を用いるのか?
アルファ ロメオにとって非常に大切なのは、どの車種もそれぞれ個性を持っていることです。将来もその方針を維持していきたいと考えています。
―コンパクトな車に多くのデザイン要素を詰め込むとごちゃごちゃしがちだが、どのように解決したのか?
デザインにおいて、常にプロポーション(比率)が最も重要だと考えています。個々の線の形やバランスを常に考慮し、機能上必要なラインは含めつつも、できる限りラインや形状を削減するよう努めています。
―造形的なデザインは製造現場から難しさのクレームはなかったか?
全くありませんでした。生産側との連携も非常に円滑に進みました。設計時には常にエンジニアリングと機能の両面で最高の品質を目指しています。
―デザインにおいて最も苦労した、あるいはチャレンジングだった点はどこか?
どの車にとっても「フロントフェイス」が最もチャレンジングな部分です。なぜなら、フロントが各車種のアイデンティティを表現する部分だからです。
今回の小型車種であるジュニアでは、遊び心があり、個性的で、決してプレーンではないフロントデザインを目指しました。フロントを見たときに車の意思が感じられ、目となる部分が自分に注目してくれ、表情が表現できるものでなければならないと考えています。
―アルファ ロメオのエントリーモデルとしてジュニアのエクステリアデザインを任された時、最初に何を思い、どのようなデザインを作りたかったか?
2021年夏にCEOから、アルファ ロメオのラインナップに加わるエントリーレベルの車の設計を依頼されました。
最初に頭に浮かんだのは、皆に受け入れられる「美しいもの」であること、そしてそのセグメントにおいて「入手可能な(アクセシブルな)もの」であることでした。
遊び心があり、個性が豊かで、筋肉質で表情豊かな車種にしたいと思いました。
さらに、アルファ ロメオの伝統である「コーダ・トロンカ」(切り株のようなリアデザイン)をリアに取り入れたかった。これは空気力学的に優れており、美しさと機能性を両立させるものです。
これら全てをコンパクトなサイズに収めることは非常にチャレンジングでしたが、スポーティーなものができたことを非常に嬉しく思っています。
―「コーダ・トロンカ」のデザインはアルファ ロメオ SZやアルファスッドなど特定のモデルを意識したのか?
特定のモデルを真似るというよりは、レガシーの要素として何を取り入れるべきかを考えて反映しました。
「コーダ・トロンカ」はアルファ ロメオのデザイン哲学の1要素です。SZのようにテールをカットオフすることで、より強力な空力性能を生み出すことができた歴史があり、広く愛され、性能も備わった車としてこのデザインを採用しました。
―他のブランド(シトロエン、DSなど)でのデザイン経験も踏まえ、アルファ ロメオのデザイン哲学についてどう考えるか?
私にとってアルファ ロメオは「最も美しいブランド」です。キャリアのどこかで最終的にはこのブランドに携わりたいという思いがありました。
アルファ ロメオが非常に長い歴史を持っていること、そして過去の要素を現代化し、未来にも反映させることができるという点が非常に気に入っています。
―日本のナンバープレートの位置(オフセット)についてどう思うか?
ナンバープレートの位置は「大好きです」。プレゼンテーションでも述べたように、スクデットはアルファ ロメオのアイデンティティを最も強力に表す要素であり、それを邪魔する要素を置きたくなかったため、オフセット配置を採用しています。ジュリアやステルヴィオも同様にオフセット配置であり、これはアルファ ロメオの中で非常に気に入っている要素の一つです。
続いて、成田社長・黒川事業部長のラウンドテーブルが行われた。
―ステランティスの強みと、各ブランドの今後の展開についてどう考えているか?
日本で8ブランドを展開しており、それぞれに非常に個性があること。趣味性の高い車が多く、ブランドごとのアイデンティティがしっかりしている点が最大の強みです。
価格帯も国産車より上だが、プレミアムブランドよりは少し低い位置づけ(アルファ ロメオはプレミアムブランド)であり、初めて輸入車を購入するお客様のエントリーブランドとしての数を揃えているのも強みです。
いわゆるニッチブランドですが、「刺さる人には刺さる」車が多く、自分のライフスタイルや趣味、考え方に「うまくハマるような車」がたくさんある。
成田社長自身は車好きであり、「おもちゃ箱のような会社」だと感じており、非常に楽しい会社です。
―今回デビューしたジュニアがターゲットとする「新しいアルフィスタ」は具体的にどのような層か?
現在のアルファ ロメオのユーザー層は約50代以上がほとんどであり、もう少し新しい世代にアピールしたいと考えています。
具体的には30代から40代の層ですが、年齢よりも「価値観」が重要。自分のライフスタイルを車で表現したい方、デザインやファッションにも興味があり、その根底に「運転することが好き」という価値観を持つ方が、次のアルフィスタとしてターゲットです。
―ジュニアの販売目標台数や具体的な数値はあるか?
残念ながら、具体的な数字は申し上げられないです。ただし、過去数年は3車種しかなかったため販売は苦しかったのは事実です。特に「ジュリエッタ」や「ミト」といった小型車がなくなり、それらを愛用していた顧客の選択肢がなくなっていました。
ジュニアは、かつてのジュリエッタやミトの顧客に戻ってきてもらえる車であり、黒川事業部長が目指す「新しいアルフィスタ」を作り出せる非常に魅力的な車であると述べています。
この基盤で販売を大幅に改善する予定です。
―アルファ ロメオのモータースポーツのイメージと、日本でのSUV人気のバランスを今後どう融合させてブランド展開していくか?また、次のアルフィスタにさらに刺さるようなモデルの予定は?
個人的にはモータースポーツが好きで、現在アルファ ロメオとして参戦していないのは残念に思っています。どのメーカーもモータースポーツ参戦方法(マーケティング効果含め)に頭を悩ませている状況であり、現時点で具体的な参戦計画は申し上げられないです。個人的にはできれば続けていきたいところです。
既存モデルでは、「ジュリア クアドリフォリオ」のようにサーキットで走っても面白い車があり、顧客にそのような車に乗ってもらうことで、直接レースに出ていなくてもスポーティーなイメージをしっかり作っていきたいと考えています。
将来のモデルについては、現状、言及しづらいです。
―ジュニアのライバル視しているモデルや競合車は何か?
ジュニアのセグメントと価格帯には、市場にあまり多くの競合がいないのが現状ですが、ある程度意識したのはレクサス LBXです。ただし、キャラクターとしては大きく異なるため、特定の競合を強く意識するというよりも、「アルファ ロメオはこうあるべき」という思いから、プロモーションや販売戦略を練っています。
―ジュニアは当初EVのみのラインナップだったが、後からハイブリッドが追加された。日本市場でのハイブリッドとEVの販売比率の目標は?また、充電インフラの整備はどのように進めるのか?
日本において電気自動車の普及は欧米に比べて遅れているのは事実です。しかし、輸入車に限ると2024年のEV登録台数割合が10%を超え、国産車マーケットよりも輸入車マーケットの方が電動化の進捗が早い。これは輸入車が移動の道具というよりも「嗜好品」として選ばれることが多いためと分析しています。
ジュニアの販売にあたっては、ハイブリッドとEVの比率を「同じくらい」、つまり50:50をまず目指す。輸入車市場で電動車が選択肢として増えてきているため、それに合わせて販売比率を伸ばしていきたいです。場合によっては電動モデルの追加バージョンも投入を考えています。
当然、店舗における充電施設もこれから充実させていきます。アルファ ロメオは比較的フィアットと併設の店舗が多く、そちらでは既に急速充電器の設置が完了しているため、そのインフラを活用しながら、アルファ ロメオ専売店についても充電器の設置を進めていく予定です。
両パワートレイン提供の意義としては、顧客のライフスタイルや価値観は様々であるため、両方(ハイブリッドとEV)を用意しておくことが重要と考えています。どちらも実際に乗ってみるとそれぞれに良さがあるため、販売店では両方を試乗できるようにし、顧客それぞれの価値観で選んでもらうことを重視しています。
―アルファ ロメオの正規販売店は従来「敷居が高い」イメージがあるが、今回のコンパクトSUV投入で販売戦略上で変えていく部分は?イメージ戦略の転換は考えているか?
若い層の方が入っていきやすい店舗を考えてはいます。しかし、ジュニアの投入を機に、今まであったアルファ ロメオの価値を大きく変えることは考えていません。むしろ、ベースにあるブランドの価値を広げ、様々な顧客にアプローチする、という点が販売戦略となります。「敷居が高いお店を作ろう」としてディーラーネットワークを設置しているわけではなく、あらゆる顧客にショールームへ足を運んでほしいと考えています。
従来の根っからのアルファファンだけでなく、メディアを通じてジュニアを知り「デザインが綺麗だから実車を見てみたい」という新しい顧客にも来店してほしいです。
販売店には、ジュニアを見に来るであろうあらゆる顧客に対し、「全員にきちんと実直な応対をする」よう強く指導しています。既存ファンもこれからファンになる人に対しても等しく接し、アルファ ロメオの素晴らしさ、楽しさ、そしてDNAを試乗などを通じて体験してもらう機会を確実にするよう伝えています。
結局のところ、アルファ ロメオはマーケティングロジックでいくらでも語れるが、最終的には「かっこいいよね」「乗ると楽しいよね」ということを理解してもらい、顧客が「アルファ ロメオを持っててよかった」とハッピーになることが一番の願い。そのために販売店と協力していく所存です。
―サイズ感が近い「トナーレ」との差別化戦略は?カニバリゼーション(共食い)は考慮しているか?
確かにサイズ感は近いところがあるが、実際に横に並べて見るとかなり違いがあります。ボリューム感も異なっています。最大の明確な違いはパワートレイン。ジュニアはハイブリッド(マイルド・通常両方)に加えて電気モデル(EV)があります。トナーレよりももう少し異なる層の顧客をターゲットにしていますし、価格帯も大きく違います。
―黒川事業部長が考える「アルファ ロメオとしての価値」とは何か?
本日のプレゼンテーションの通りですが、大きく3点あります。
1.スタイリング:どのモデルも非常に美しく、イタリアの色が濃く出ている。
2.乗って楽しい走り:アルファ ロメオの開発チームは車好きが多く、いかにアルファ ロメオを楽しく乗れるようにするかを常に考えている。
3.歴史とDNA:これらが根底にあり、これがないと上記の「美しさ」や「楽しさ」といった価値は実現できない。これがアルファ ロメオが提供できる大きな価値です。
―ディーラー数を拡大するなど、タッチポイントを増やしていく計画はあるか?
現在のところ、40店舗のネットワークを維持していくつもりです。拡張も縮小も考えていません。ただし、ジュニアがどれくらいの販売拡大に貢献できるかによっては、ネットワーク拡大のチャンスがあれば視野に入れていきたいと考えています。
―価格設定は大変だったか?
はい、かなり頑張りました。事業として成立させるバランスを見るのが一番の課題で、ある程度利益を絞ったとしても、販売ボリュームで収益を上げていくという考えで、ギリギリの線を攻めて価格設定を行っいました。このプロセスには約半年を費やしたのです。当初は本社からもっと高い価格が提示されたが、日本の市場を考え、「これでは無理だ」というところから始まり、現在の価格に落ち着きました。
特に意識したのは、かつて「ジュリエッタ」に乗っていた顧客が数年後にアルファ ロメオを買い替えようと考えた際に、「これくらいならありだよね」と思えるような価格帯に設定したこと。
赤字を出さず、適切な収益を確保した上で設定しています。この価格設定が、販売台数と収益の面積を最大化できると考えた結果であり、顧客に喜んでもらえることが何よりも重要なのです。
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