【トップギア試乗】フェラーリ 296 GTB:電動化でスーパーカーに豊かな深みと奥行きを与えた

「電動化でスーパーカーに豊かな深みと奥行きを与えたんだから、これは大きな前進だ。これでマクラーレンは、眠れぬ夜を過ごすことになる」

いいね!
スリリングで美しい。パワートレインがハイブリッドV6なのは、マジで高得点

イマイチ
触覚スイッチがイラつくのと、キャビンに余り進化が見られないことくらいかな

概要

どんなクルマ?
大躍進。伝説のディーノの血を継ぐクルマ。技術開発が天才的。マクラーレンの的を狙う警告ショット。ダウンサイジングすることで、既存モデルもまだまだ良くなるって証明してる。フェラーリがハイブリッドや電気に本腰を入れたって証拠。これら全部が真実だ。他にもいろいろあるけど、中でも特にお伝えしておきたいのが、現在手に入るスーパーカーの中のベストだってことね。

これがフェラーリ 296 GTB。ディープで、恐ろしいほど複雑なクルマだ。と言っても運転する分にはそんな感じは一切しないから安心して、公道でもサーキットでもね。フェラーリが言うには、これはF8 トリブートの直の代わりじゃないんだと。だってF8 トリブートはまだ現役で販売されてるし(あと一年は長生きして)、296 GTBよりずっと安いからね。296 GTBの値段はF8 トリブートより40,000ポンド(660万円)くらい高くて、241,550ポンド(3,985万円)するんだ。とは言え、308から47年間途切れることなく続いてる、458 スペチアーレとかの伝説的な要素を含む「普段使いのミッドエンジン フェラーリ」のカテゴリーに属してる。

どんな技術構成なのかカンタンに教えてよ
シャシーはこれまでと変わらずアルミニウム製で(マラネッロの自社鋳造工場があるのだから、当然っちゃ当然)、発電プラントの前には2つのシートがある。シート裏にあるちょっとした収納スペースの下には、7.45kWhのバッテリーパックが積まれてるね。このバッテリーは、165hpの電気モーター(フライパンくらいの大きさ)に供給され、全く新しい(マセラティMC20とは無関係)V6エンジンと8速のツインクラッチの間に挟まれるように置かれている。

SF90にはリア1基+フロント2基の計3基の電気モーターがあって、それらが4WDを可能にしてる反面、トランクスペースを食っちゃってるんだけど、296に搭載されてるモーターは1基のみ。1基でも、135km/hまで出すことができる。だが得意技はビクトリア朝時代の小学生ばりに静かに這うように走るることで、目には見えるんだけど音を立てないこと。ドライビングについては後ほど詳しく話すよ。

フェラーリの核、エンジンってどんな感じなの?
あれはちょっとした革命だよ、長い歴史を持つフェラーリで初の量産V6エンジンなんだ。ディーノ?あれは、あくまでサブブランドだから。エンジンルームを覗き込むと、あの「フェラーリエンジンと言えば」的な赤いクラックル塗料が施されたエンジンカバーが見える。今度のは2つが離れてて、バンク角は120度。エンジンベイの最高位には曲線が美しい、光沢のあるメタル製の熱板があって、シリンダーバンクの「ホットV(ホットインサイドV)」レイアウトのエンジンの中には、SF90にも採用されてるIHI製のターボが2基押し込まれてる。より高速回転できるように(180,000rpm) 若干小型に設計されてる両端にあるタービンは24%効率がアップしてて、反応も早い。

で、どうなった?
この「エントリーレベル」(と言いたくなる)フェラーリの総パワーは820ps。電気の補助が165ps、それプラス、ツインターボV6エンジンから655馬力が発揮されるんだ。うれしい&驚くことに、いかにも「ターボチャージャーついてます!」って感じはしない。F8 トリブートのV8エンジンは違う。F8のV8は、トップエンドよりもミッドレンジが印象的で、強大な力を生み出すジェネレーターのように感じられ、より力強い印象を放ってる。でも296は違うんだ。回転は8,500rpmまで行くんだけど、最大トルクが発生するのは6,250rpmからなんで、ついそこまで回してみたくなる。また、とくに電動化されている感じでもない。ターボや電気モーターは、あくまでV6エンジンを強化する役割であり、自分たちがショーの主役になるわけじゃない。もちろん、タイムラグゼロのボトムエンドの力強さは健在だが、そのブレンドの仕方は天才的。健康的な自然吸気エンジンに乗っているような錯覚に陥るだろう。

そしてこれまた、いい音なんだよね。F8 トリブートのフラットなV8サウンドに比べて、ハイピッチで音に深みがあって、より勢いよくシューシュー音をたてる元気いっぱいのエンジンだ。フェラーリのエンジニアは、これを「ピッコロV12(小さなV12)」って呼んでんだって。そりゃ、バロック様式的な華やかさもないし、ゾーンに入った時の812が放つ誇り高きローマ的な威風堂々オーラもないけど、でも一目見ればあのエンジンがどういう経路をたどって来たのかわかるはず。

運転した感じは?
滑らかで、居心地がよくて、一貫してる。ステアリングはスーパー速い…んだけどね、そこんとこは天下のフェラーリ、フロントエンドへの信頼が自然に生まれてくる。どんな路面でも対応できるわけじゃないけど、とくにコーナリングへの満足度は非常に高い。重量にせよ抵抗にせよ一貫性にせよ、すべてが素晴らしい。南スペインの滑らかな路面上での挙動には非の打ちどころがなく、トラクションには頑張ってる感が全くなく、すべてが絶妙なバランスとハーモニーを保ちながら機能してる。重たいとか違和感があるなんてことも一度もなくて、ドライバーを運ぶこと、楽しませること、よろこばせることに徹してた。気配りができているし、遊び心にあふれている。

農村部に入って、ステアリングホイールの左下にあるハプティック(触覚)eDボタンを押す。電気だけで走れる距離は24kmと主張されている。もちろん、実質的には16kmくらいだろうけど、ポイントは距離じゃない。ステルスモードで、静かに気配を消して走る。スーパーカーは、とかく注目を集める存在だ。まだ登場してないうちから情報が広がる。だが、実際に乗った者としてはそれに「無音性の進化」と「それを許容してくれる人の増加」っていう、電動化がもたらした恩恵を追加したいね。

無音で走ることとサーキットをビュンビュン切り裂いて走ることの差は、かなりのものだ。同じクルマでその両方ができるだなんて、正直にわかには信じられない。さっき、フェラーリに激推しされたんで、25,920ポンド(430万円)追加されたアセットフィオラノ仕様を施したバージョンでモンテブランコのサーキットを走ったんだ。それで分かったね、全然違うってことが。運転してると、ヒーローになった気分で最高なんだ(実際は6w-CDSにガッツリ守られてたんだけどね)。ちなみにCDSとは、各タイヤに個別に付けられたABSを管理したり、グリップを予想したり、3本のアクスルすべての動きをモニターしたりという中央ブレーン的な働きをするもの。

6w-CDSをはじめ、296にはこれまで見たことがない略語がたくさん使用されてて、頭が痛くなるよ…。それはいいとして、フェラーリの右に出るメーカーなんてないし、フェラーリの中でもドライバーの望むままに絶妙にダンスしてみせる296は間違いなく最高峰だろう。車自体がオーガニックで自然な感じだから、ドライバー自身に「戦うホルモン」アドレナリンをみなぎらせる。複雑さ?そんなのはとっくに完成されたものになっているから、何も心配しなくて大丈夫。

気になるとこって全然ないの?
SF90に引っ張られてる感のキャビンがイマイチ響かなかったかな。ステアリングホイールにあるタッチパッドの操作には集中力と努力が要るんだよ。なんか動作がぎこちないないし、反応も遅いし。デザインは普通にOK、でもあまり進化したとこがない。ま、週末の小旅行くらいになら十分使えるよ。若干の風切り音がするけど、8速ギアはロングだしシートもしっかりしてるんで、これは問題ないんじゃない?

結論は?

「電動化でスーパーカーに豊かな深みと奥行きを与えたんだから、これは大きな前進だ。これでマクラーレンは、眠れぬ夜を過ごすことになる」

V6エンジンは美であるのはもちろん、クルマそのものもおのずと美を内包したものになる。バイザーのようなフロントガラス、エンジンカバーを格納するリング型のバットレス構造、250 LMっぽいサイドベントなど、どれもが美しい。296よりF8を選ぶのって、よほどEVにアレルギーがあるって人だけだろう。電気でスーパーカーでのエクスペリエンスに深みを与えたんだ。しかも電気は必要じゃない時は影を潜め、機能している。これをパーフェクトって言わずに何て言おう?ビッグブラザーのSF90よりもとっつきやすくて愛嬌があるしね。だから使われてる技術も使いやすく感じる。これまで技術って言えばどうしても事務的で無機質な感じだったんだけど、296はそれを「使って楽しいもの」にしてる。つまり次のステップに持って行ったんだ。

マクラーレンにとっては、眠れぬ夜を過ごすことになるのは間違いないだろう。フェラーリもマクラーレンも、670馬力で182,500ポンド(3,040万円)のアルトゥーラが直接的なライバルではないと言うだろうけれど、結局は近くで一緒に踊っているだけだ。現時点で、これほどのミッドエンジンスーパーカーを作れるメーカーは他にない。それに、V6だってこと。シリンダーを2つ減らすことは、ターボを2基追加することよりも小さなステップチェンジだと考えている。けど製品の真価は、458から488になった2015年に、その純度はガラッと変わったんだ。それが今、かなりモダンな方法で戻って来つつある。


トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2022/04/47924/trackback

【トップギア試乗】フェラーリ 296 GTB:電動化でスーパーカーに豊かな深みと奥行きを与えた」へのコメント

  1. 片桐カナタ2022年7月21日 11:47 PM

    あれれ?V6エンジンってそんな素晴らしいの?すごい気になるな

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

アーカイブ