ベントレー コンチネンタル GT長期レポート3:ベントレー コンチネンタル GT W12エンジンの組み立て方

スペシフィケーション:

ベントレー コンチネンタル GT W12

エンジン:
5945cc W12気筒ツインターボTSI アクティブAWD 635ps 900Nm

燃費:
8.2km/L,278g/km CO2

パフォーマンス:
0-100km/h 3.3秒 , 333km/h

重量:
2260kg

価格:
27,335,000円/200,345ポンド(3,070万円) テスト車両/月額46万円

ベントレーのコンチネンタル GTにはW12とV8の2種類のエンジンが用意されているけど、選ぶならこれしかないと思う。W型12気筒エンジンだ。「ええ?それ、マジで言ってんの?」って聞かれそうだね。僕らは何かにつけてはV8のほうがいいって言ってるから。だって最高出力が635psのW12に対してV8は550psだけど、0-100km/h加速では0.4秒しか差がないほど力強いんだもん。それに最適なエンジン回転域はほぼW12と同程度に広いし、それでいて価格は抑えめだし、サウンドだってこっちのがいい(賛否アリ)。

けど、これを聞いたら君だってきっとこのビッグダディ的なエンジンの方を選びたくなるはず。それは、「メイドイン クルー」だってことさ。V8はそうじゃなくて、ドイツからのパレットに載って運ばれてくる。アウディのRS6とか、いろんなフォルクスワーゲングループのメーカーのクルマに積まれてるエンジンなんだ。いっぽう、W12ツインターボはベントレーにしかない。回転数が1,350しかない時でも最高出力635psと最大トルク900Nmを発揮でき、対のツインスクロールターボ搭載で、過給機の圧縮で熱くなった空気を冷却するインタークーラー機能もあって、排気量は5,950cc、直噴(DI)とポート噴射(PFI)を併用したダブルインジェクション形式、クワッド カムシャフト、48バルブで気筒休止システム採用。僕らがW12を選んだ理由、理解してくれたかな?

すべてを正しく行うのに、全16工程もあるから、マスターするにはかなりの努力が必要なんだ。それなのに、自分がチョイスしたコンチネンタル GTのエンジンの組み立てをしてみよう!なんて呑気に考えてたんだけど、ちょっと浅はかだったかな。でも実際のとこ、ここでは一切の失敗は許されない、よく分かってる…分かってはいるんだけどね、内径(ボア)にピストンを落とし込むのって、やっぱり、思うほど単純な作業じゃなかった。

上にあるのがエンジンブロックだ。イエス、エンジンは共通のクランクシャフトにマウントされた2基の狭角V型6気筒エンジンだよ。ガチのフォルクスワーゲンオタクなら、このV6がVR6並みに優れてるってことを知ってる。VR6と言えば、30年前にゴルフやコラード クーペ用に開発された、搭載性と出力追求を両立させたっていうあのエンジンだよね。VRの「R」はドイツ語のReihenmotor(直列または直線的なレイアウトを意味してる)の頭文字。VR エンジンはVバンク角を15度にしてブロック上面への出現がツライチになってて、直列とV型エンジンの両方の要素を持っている。

ともかく、2003年にベントレーが2基のV6エンジンを組み合わせて作った初代コンチネンタル GT以降も開発は重ねに重ねられてて、最新モデルは初代に比べて75psのパワーアップを実現してる。それも大変な進歩なんだけど、一番のすごい点と言えば、クアッドバンクレイアウトのおかげでとてもコンパクトになったってこと。ベントレーが言うには、従来のV12よりも24%短くなったんだってさ。

組み立て作業でいうと、ここは「出発地点」。大きな塊が、どの角度からでも作業できるように回転式のキャスターが付いた台の上に置かれて運ばれてきた。

すべての組み立て工程を事細かく説明して、君たちを飽きさせるつもりはないから。16ある全行程のうち、僕が作業した8つだけにしとく。そのほとんどは、大きな備品を組み立てる、初めの方の工程だよ。

たとえばこれ。クランクシャフトのズームアップだ。穴空いてんがのわかる?クランクシャフトのバランスが完璧になるようにって、ドリルでしっかり固定されてるんだ。でも、バランスが大事なのはこれだけに限った話じゃない。

これはコンロッド。この作業、とぉーっても楽しいな。各コンロッドは、強度が増すようにひとつながりの部品として鋳造されるんだけど、せっかく出来上がったやつのキャップとの接点のとこにわざと傷がつけられる。そしてこの機械がその箇所に負荷をかけて、コンロッドを折り、両端の切れ目が不揃いになる。

 

クランクシャフトにボルトで固定してみると、さっきの作業がどんだけ正確だったのかとか、コンロッドがどんだけ耐久性が上がったのかがよく分かる。

これもクランクシャフトの細部。エンジンの長さが24%短いってことは、必然的に12本のコンロッドを詰めて並べないといけない。これはコンロッドがディスクに接して1本ずつ取り付けられてるのを写したとこ。大きな金属が、ミリ単位の精度で調整されてるんだ。

エンジンブロックの底部でクランクシャフトを支えてるベアリングカップ。ひとつひとつがブロックに沿って取り付ける位置が決まってる。

手作業で押し込まなければならない。

滑りをよくするために、潤滑油を注入。

クランクシャフトが降りてきた。この作業に必要なのは、小型のクレーン&すんごい集中力。かなりの精度が要求される。重い端の部分で側面を擦らないように、正確に、慎重に。

より細かい配列や位置を決める後の工程が楽になるように、ペンで上死点に印をつけとく。

さて、ピストンの作業にやってきた。まず、ガジオンピンでピストンヘッドをコンロッドと結合する。固定したいからって、ただハンマーで叩くのはダメ。そうじゃなくて、ピストンとコンロッドを慎重に金型にはめ込む。

ここは機械にバトンタッチ。ピストンとのバランスがばっちりになるように、固定したとこを削って調整したり、重さと長さをはかったりして、ちょうどいいベアリングを選ぶ。

また人間の出番。フチの周りにピストンリングが付けられてるの、見えるかな。リングの間隔は正確に決められてて、つける位置も決まってる。

ピストンをシリンダー内に落とし込む。ただ「落とし込むだけ」って思ってない?ピストン径とシリンダー内径がものすごくタイトに出来てるから、聞くほど簡単な作業じゃないんだよ。エンジンブロックの上の部分のナイロン製の工具が、うまいことピストンを完璧に整列させるよう誘導してくれるのはありがたい。でも、リングを動かさないように手で固定し続けたり、コンロッド大端部がクランクシャフトに届くまで押し込しこんだりする作業って、地味だけど、非常に安定感がある熟練作業員を必要とするんだよな。

コンロッドがボア内を通過してちゃんとシリンダーの底まで届くように、青いガイドが取り付けられる。画像に映ってる四角い板は一時的なやつ。エンジンをひっくり返して底にサンプが取り付けられるまでの間、クランクシャフトが動かないように取り付けられてんだけど、済んだら外される。

二度と外れないことを祈りつつ、外れたコンロッドのキャップをネジで留め直す。地味な作業とは言え、大事なところだから、腕が鳴っちゃう。

コンロッドは完成。おつぎは底にサンプをつける作業だ。

ボルトは締められる順番が決められてる。完璧なシーリングのために、一回だけ機械で表面に接着剤がつけられるんだ。「締め過ぎ」も「締めなさ過ぎ」も許されない。締めるのに使う道具はコンピューターとつなげられてて、精密にトルク設定がされてる。もし締め終わるタイミングが早すぎたら、やり直しさせられちゃうんだぜ。

エンジンをひっくり返して、ヘッドとバルブ系を制御するバルブ トレインを取り付ける。コンロッドやピストンリングの工程でさえ相当苦戦してた僕をみんな見てるんで、バルブやクランクシャフトの作業には関わらないほうがいいんじゃないかって、ありがたいアドバイスをいただいたよ。

と言うのもW12が気筒休止エンジンなんで、こっち側のカムシャフト(「左バンク側」のことなんだけど、今見てんのって上下さかさま?)は普通のとカムの形状が違う。バルブはバンクが閉じてても空気をシリンダーに送るために開いたままになってると思っていたんだけど、実際にはバルブは閉じられていて、空気を内部に閉じ込めている。吸気と圧縮によって、休止システムのついてるエンジンに適し弾性が得られるためだ。

ここまでの工程、けっこう飛ばしてるのわかった?そのほとんどが配管関係だよ。あと、エキゾーストとか、冷却装置とか、タイミングベルトなどなど。過給機もつけなかったんだ。だってあれ、「別組み立て部品」として届いて、ボルトで固定するだけなんだもん。

これは完成品のエンジンを写したとこじゃなくて、「コールドテスト」を受けてる様子。エンジン内に液体を入れて、外部モーターで電源を入れる。液漏れしてないかをチェックするんだ。このテストが済んだエンジンはまた生産ラインに戻され、今度は「ホットテスト」を受ける。ベントレーのエンジンは、もれなくテストされてるんだ。

じゃじゃ~ん!僕らのクルマに搭載されるドライブトレインが出来ました!ギアボックスの組み立てに移れって?あれはいいの。だってあれもV8とおんなじで、ドイツで組み立てられてから届くんだ。あと、フロントの足回りもドイツ組。だから、僕らがここで注目してんのはエンジンだけ。奥深くに眠る、僕が組み立ての一部をやったやつ。あんだけ頑張ったんだからさ、635 psの最高出力、期待してるぞ!

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