【試乗】プジョー 3008:伝統と革新が織りなす、新時代のドライビングプレジャー

8年ぶりに生まれ変わったプジョーの旗艦SUV、新型3008。クーペのように流麗なフォルムと、未来を映す21インチの「パノラミックi-Cockpit」が乗る者を魅了する。横浜で試乗したマイルドハイブリッドは、驚くほど滑らかで洗練された走りを提供。一方で、その乗り心地には課題も。美しさと走りの官能性を追求した一台を徹底レポートする。

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新時代の幕明けを告げるフラッグシップSUV

横浜のベイエリアに佇む新型プジョー 3008は、彫刻のような造形美で周囲の視線を集めていた。試乗車である「GT HYBRID アルカンタラパッケージ」のボディカラー「オブセッション・ブルー」は、港町の風景の中で深みのある輝きを放ち、このクルマが特別な存在であることを静かに主張している。8年ぶりのフルモデルチェンジを果たし、プジョーの次世代フラッグシップとして日本に上陸した3008は、単なる移動手段であることを超え、ブランドの新たな哲学「SERIOUS ABOUT PLEASURE(車を運転すること、所有することの喜びに真摯に向き合う)」を高らかに宣言する一台である。

CセグメントSUVという激戦区において、新型3008は日産 キャシュカイといった実力派をライバルと見据えつつも、その視線はアウディQ3やミニ カントリーマンといったプレミアムセグメントにも向けられている。先進的なデザイン、卓越した内外装の質感、そして革新的なハイブリッドパワートレインを武器に、独自のポジションを築こうという強い意志が感じられる。ステランティスが新開発した電動車向けプラットフォーム「STLA-Medium」を初採用したモデルとしても、その走りに大きな期待が寄せられる。

エクステリア:空力と美学が融合したファストバックの衝撃

新型3008のデザインは、大胆かつ流麗だ。SUVの力強さとクーペの美しさを融合させたファストバックスタイルは、単にスタイリッシュであるだけでなく、優れた空力性能にも貢献している。 フロントマスクでは、ブランドエンブレムを中央に配した大型のフレームレスグリルが強烈な個性を放つ。ボディと同色にペイントされたグリッドが、まるで幾何学アートのように精緻な表情を作り出している。 そして、プジョーのアイデンティティであるライオンの爪痕をモチーフにした3本のLEDデイタイムランニングライトが、その眼光を鋭く縁取る。

サイドビューは、このクルマのデザインにおける白眉と言えるだろう。プジョーとして初めてサイドウィンドウモールが表に見えないように設計され、フロントからリアへ流れるようなシームレスなラインを実現している。 足元を飾るのは、日本の槍ヶ岳から命名されたという19インチアロイホイール「YARI」。槍の穂先をイメージしたモダンなデザインは、エアロダイナミクスも考慮されているという。 リアに回り込むと、立体的な3本のLEDランプがモダンで洗練されたブランドの世界観を表現し、夜間においても唯一無二の存在感を放つ。

インテリア:未来を体感するパノラミックi-Cockpit

ドアを開けた瞬間、誰もが息をのむだろう。そこには、これまでの自動車の常識を覆す、先進的でドライバー中心の空間が広がっている。 新開発の「PEUGEOUT Panoramic i-Cockpit」は、このクルマの革新性を最も象徴する要素だ。

ダッシュボード上には、まるで浮いているかのように21インチの巨大なパノラミック湾曲スクリーンが鎮座する。 表面はドライバーに向けてゆるやかにカーブしており、必要な情報を集約しつつ、優れた視認性と操作性を両立している。 画面左側には速度や運転支援情報、右側にはナビゲーションやインフォテインメントが表示され、まさに未来のコックピットと呼ぶにふさわしい。 スクリーン下部に仕込まれたアンビエントライトが、この浮遊感をさらに幻想的に演出する。

そして、プジョーの「キラーアプリ」とも言えるのが、カスタマイズ可能なショートカット機能「i-Toggles(アイトグル)」だ。ダッシュボード中央に配置されたこのスクリーンには、エアコン調整やナビの目的地設定、お気に入りのラジオ局など、頻繁に使用する機能を10個まで登録できる。これにより、運転中の視線移動を最小限に抑え、直感的な操作が可能となる。

フランス車ならではの色彩や質感へのこだわりも健在だ。先代で好評だったテキスタイル調のトリムは継承され、8色から選択可能なアンビエントライトと組み合わせることで、上質でモダンな空間を演出している。

シートと居住性:長距離を厭わない至福の空間

試乗した「アルカンタラパッケージ」のシートは、まさに絶品であった。 シート中央部に配されたアルカンタラ®素材は身体の滑りを抑制し、確かなホールド感を提供する。ショルダー部までしっかりと支えるサイドサポートには、プジョー初となるアダプティブボルスター機能を搭載。シチュエーションに応じてドライバーの体型や好みに合わせてフィット感を電動で調整できる。

「プジョーのシートに座ると腰が楽になる」と語る人までいるように、その人間工学に基づいた設計は、長時間の運転でも疲れを感じさせない。横浜の市街地から高速道路まで、様々なシーンを走行したが、腰への負担は皆無であった。

一方で、後席のスペースについて「あまり良くない」との指摘も見られる。確かに、クラス基準で比較すると絶対的な広さでは見劣りするかもしれない。しかし、実際に乗り込んでみると、着座位置が高く設計されており、前席の下に足を収めることができるため、窮屈さは感じにくい。ファストバックスタイルでありながら、頭上空間にも十分な余裕が確保されているのは見事だ。520Lという荷室容量はクラストップレベルであり、後席を倒せば最大1480Lまで拡大可能。 日常使いからレジャーまで、幅広いニーズに応える実用性を備えている。

パワートレインと動的性能:洗練と課題の二面性

オブセッション・ブルーのボディを横浜の市街地へと滑り込ませる。新型3008に搭載された48Vマイルドハイブリッドシステムは、ストップ&ゴーが繰り返される環境でその真価を発揮する。モーターのアシストによる発進は驚くほど滑らかで、エンジンとの連携はシームレスそのものだ。渋滞時には、数メートルほどエンジンを始動させずに静かに前進する。これはトヨタのフルハイブリッドシステムが持つEV走行距離には及ばないものの、都市部での燃費向上と静粛性に大きく貢献していることは間違いない。

アクセルペダルから足を離すと、即座にエンジンは停止し、運動エネルギーをバッテリーへと回生する。そして再び加速が必要な場面、特に低回転域でアクセルを踏み込むと、内蔵されたモーターが短くも的確なブーストを加え、1.2リッター3気筒ターボエンジンが本来持つターボラグを巧みに補う。ギアチェンジとモーターからエンジンへの切り替えは、注意深く意識していてもほとんど感知できないほどスムーズであり、このパワートレインの洗練性の高さを物語っている。

特筆すべきは、そのフィーリングである。一般的なハイブリッド車、特に遊星歯車機構を用いるトヨタのシステムがもたらす独特の「ラバーバンドフィール」とは一線を画す。新型3008は電動モーターを内蔵した6速デュアルクラッチトランスミッションを採用しており、パドルシフトも備えている。そのため、サウンドも運転体験も、我々が慣れ親しんだ「適切な」ガソリンエンジンとオートマチックトランスミッションのそれに極めて近い。ダイレクト感のある変速フィールは、運転を愛する者にとって心地よい刺激となるだろう。

しかし、そのパフォーマンスは絶対的なものではない。0-100km/h加速は10.2秒であり、胸のすくような速さを提供するわけではない。最も軽いマイルドハイブリッドモデルでさえ車両重量は1,600kgを超えているので、加速時にはその重さを意識させられる場面がある。このパワートレインは、速さよりも効率性と洗練性を追求した結果であることがわかる。

ドライバーズカーへの道程:ステアリングと乗り心地

プジョーは常に「ドライバーズカー」を作ることを公言してきた。その哲学は、新型3008のステアリングフィールにも表れている。小径のステアリングホイールを切り込むと、その反応は素早く、重さも適切だ。センター付近からロックするまで、ドライバーの意図通りに車体を正確にコントロールできる。

だが、その先に待っているはずの、路面とタイヤが対話するような感覚は希薄である。グリップが限界に近づいても、ホイールを通じて伝わってくるフィードバックはほとんどない。それでも、このクルマは流暢にコーナーを駆け抜けていく。これは、素早いステアリング操作が過度なボディロールを誘発しないよう、硬く締め上げられたアンチロールバーの恩恵であろう。

しかし、このアンチロールバーが、乗り心地においては諸刃の剣となる。高速道路の継ぎ目や、市街地の舗装が荒れた路面を通過する際、車体は左右に揺すられる感覚を伴う。これは、かなり硬めに設定されたスプリングからの突き上げ感をさらに増幅させる要因となっており、滑らかな路面に出るまでは快適性が損なわれると感じるかもしれない。

矛盾しているようだが、このクルマは驚くほど「静か」である。エンジン音やロードノイズは巧みに遮断されており、硬めの足回りから想像されるような騒々しさはない。この静粛性の高さが、長距離移動における疲労を軽減してくれることは間違いない。新型3008のシャシーは、俊敏なハンドリングと引き換えに、ある程度の乗り心地を犠牲にしている。これは、プジョーが目指すドライビングプレジャーと、ファミリーSUVに求められる快適性との間で、難しいバランスを取ろうとした結果なのだろう。

秀逸な運転支援システム

一方で、先進運転支援システム(ADAS)の完成度は非常に高い。誤検知による唐突な警告音や、ステアリングへの不自然な介入はほとんどなく、極めてスムーズに作動する。特に、アシスト付きレーンチェンジ機能は、現在市場に存在するシステムの中でも最高レベルにあると言っていい。ウインカーを操作すると、車両は周囲の状況を的確に判断し、滑らかに車線を変更する。後方に車両がいても、無理に割り込もうとしていつまでもウインカーを出し続けるような、他のドライバーを困惑させる挙動は見られない。ドライバーの意思を尊重し、ストレスのない運転を支援するという思想が貫かれている。

所有する喜びと運転する喜びを高次元で具現化した一台

横浜での試乗を終えて確信したのは、新型プジョー 3008が単なる高性能でスタイリッシュなSUVではないということだ。それは、日常の移動を非日常の体験へと昇華させる力を持った、まさに「運転そのものが目的になる」クルマである。

革新的なパノラミックi-Cockpitに包まれ、洗練されたハイブリッドシステムがもたらす静かで滑らかな走り、そしてひとたび鞭を入れれば応えてくれるスポーティな心。これらすべてが融合し、ドライバーに深い満足感を与える。乗り心地にやや硬さを感じる場面もあるが、それを補って余りある魅力に満ちている。

5,580,000円という価格は、決して安価ではない。しかし、その独創的なデザイン、ライバルを凌駕するインテリアの質感、そして運転する喜びと所有する喜びを同時に満たしてくれる唯一無二のキャラクターを考えれば、十分にその価値はある。新型プジョー 3008は、日本のプレミアムSUV市場に、鮮烈なフランスの風を吹き込むことになるだろう。

写真:上野和秀

アルファ ロメオ 33 ストラダーレ/ランド ノリス✕R32 東京ナイトドライブ/R35日本取材:トップギア・ジャパン 068
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