ベントレー コンチネンタル GT長期レポート1:ベントレーのオーナーになるって、どんな手続が必要なんだろう?

スペシフィケーション:

ベントレー コンチネンタル GT W12

エンジン:
5945cc W12気筒ツインターボTSI アクティブAWD 635ps 900Nm

燃費:
8.2km/L,278g/km CO2

パフォーマンス:
0-100km/h 3.3秒 , 333km/h

重量:
2260kg

価格:
27,335,000円/200,345ポンド(3,070万円) テスト車両/月額46万円

いやあ、なめてたね。始める前は、絶対青を選ぶと思っていたのに。気が付けばもう3時間が経ってるけど、まだ決心がつかないんだな、これが。ヴァーダント グリーンにするべきか、いや待てよ、やっぱりライト グレーステインの方がいいかな?目の前のテーブルには150もの車っぽい形をしたカラーサンプルがズラリと並べられてる。あれだけの中から最後の2つにまで候補を絞り込めたんだ、むしろ自分を自分で思いっきり褒めてあげたい気分。

もちろん150のうちの半分は悩むまでもなく選択肢から消せた。ワンポイントに明るい白のサインをつけたディープマホガニーを基調として、それに合うスチールグレーっぽい色なら、とにかくどれも一次審査はクリア。

同じCで始まるけど、カリフォルニアは、イギリスのクルーじゃない。そりゃそうか、そもそも国が違うもんね。でも、たとえ同じクルー市内であっても、今いるこの場所も、もはやクルーだとは思えないんだ。僕は今、イギリスのクルーにあるベントレー モーターズ本社内のコミッショニング スイート、つまりクルマの細かい仕様とかオプションなんかを決める部屋にいて、トップギアの新しい長期レポートをするためのコンチネンタル GTのデザインを選んでる。まずはボディカラーの選択なんだ。普通のクルマだったら、そんなに色もないから、ちゃちゃっと選ぶんだけど、ベントレーだから選択肢がありすぎて、たいへん!ちなみに、ここには見本としてホワイトのGTCだけが置かれてるけど、これじゃないからね、あしからず。そこで話を聞くだけ聞いてる。でも決定はしないよ。なんてったって、僕には持ち前のセンスってやつがあるからさ。ブレット ボイデルが、内装デザインのトップ。今日、「レザーはコーラル ピンクか?」「それともシー グリーン???」みたいな荒波が暴れ狂う海に果敢に船をすすめる僕の指南役を務めてくれる。

注文は自宅からオンラインでもできるんだけど、わざわざクルーにまで足を運ぶ魅力は、味気ないオンライン購入より何倍もステキな経験ができるってとこにある。たくさんのレザーサンプルが詰まった引き出し、様々な素材やテクスチャが並んだ棚、テキパキとよく働いてくれるアシスタントのみなさん、さまざまなベニヤ板、複雑なステッチの見本、部屋を満たす匂い、スペシャルなこの雰囲気、あと、アシスタントの男性ね。たった30分で、僕とボイデルの間にあるテーブルは可能性というトッピングがたんまり載ったデコレーションケーキみたいになってた。

ここに来る前に簡単なオンライン診断をうけて、僕の身元と好みをベントレーに伝えておいた。来社すると、診断内容を参考にして用意してくれたんだろうね、仮のサンプルカーの図面が出てきた。すっごくカッコいい。でも、せっかく自分で全部決められるチャンスが目の前にあるってのに、ただ首をうんうんと縦に振り続け、「それいいね」って言うだけじゃ楽しくも何ともないじゃない?でももしかしたら、迷うことで「キングフィッシャーブルーのやつ、もう一回見せてくれないかな?」って言って、相手方のテンションを爆下げしちゃうなんてことも、なきにしもあらず。

特に時間を要したのが、ボディのペイントワークとハイドと呼ばれるインテリアのレザーだ。ボディカラーの候補をグリーンとグレーに絞ったのは結構早かったし、シェードに関してもスピーディに選べた。でも、僕ができたのはそこまで。なんでも、一口にグリーンと言ってもヴァーダントだとかライトエメラルドだとか、細かい色がたっくさんあるらしくって。蛇足だけど、ヴァーダントもライトエメラルドも、実際のBRGよりもっとBRGっぽい(ブリティッシュ レーシング グリーンのことね。僕にはわずかにセージグリーンとイエローが入ってるように見える)。

さて、タイヤはどうしよう?トリムはクロームかな、それともブラック?エアダムをコントラストにすべきなのか?う~ん、違うかな?ここなんだよ、ここ。すべてのペースが落ちはじめたのは。とりあえず、先にすべてのオプションの組み合わせを試したい。それから改めてもう一度最初のオプションに戻って、全部を比べて最終的に考えたい。このときのボイデルの仕事とは、にこやかに相槌を打ったり、さりげなくアドバイスをしたり、「わあ、お客様に大変お似合いですよ!」と会話中にちょいちょい挟むことだ。いい感じにエゴをくすぐられた僕は、自分の抜群にすばらしいセンスに大満足し、インテリアへと移る。

それで、先に進めば進むほど、話はどんどんややこしくなってくる。「レザーのサンプルが11種類あります」って聞いてもあんまり多く聞こえないけど、コントラストとしての内張りと組み合わせることで、11種類それぞれにさらに5つの使い道がある。すでに600以上の組み合わせがあるんだ。それに加えて、ベニヤはシングルか?デュアルか?ステッチの種類やシートのパイピングは?仕上げは?照明は?テクスチャーは???などなど。まだ、大型ステレオや回転式ディスプレイをつけるかどうかも話し合ってないってのに。こんな感じで「イエス」「ノー」問答を数分間続け、ちょっと一息ついた。

迷いに迷う。もうちょっとで、紫系のダムソンのインテリアに決めるとこだった。だって、びっくりするくらいキレイなんだから。でも、明日職場へ行って同僚たちに「僕らの新しいベントレーは紫のキャビンになりました!」って言える?…言えないよね。思いっきりトーンダウンして、ダークブラウンにすることにした。ボイデルが「クリケットボール」っていう色を指南する。その色をコンフィギュレーターで見たけれど、全然そそられない。さっき見せてくれたサンプルの方が断然いい。すると、ボイデルがスタジオの照明の下に停めてあるGTCを指さした。この内装が、高級そうで、渋くて、立体感がある、スタジオのはしっこに弾き飛ばされたクリケットボールだった。あれなら僕が選んだグリーン&グレーのペイントとよく合いそう!そう来れば、後は支払いとかを済ませるだけ。

思った通りだ、こえぇ。ベースのW12型エンジンのが159,900ポンド(2,450万円)だって。いくら「20万ポンド(3,000万円)を切るんで、お買い得ですよ」って言われても、僕の中ではからかわれ…もとい、冗談としか聞こえないんだよね。まぁともかくだ、サテンのペイントだけでも22,965ポンド(355万円)の追加だってさ。こわ。でも、あれだけは絶対外せないんだよな。ていうのも、クロームのインテリア飾りがつくと、殺伐とした印象を拭えるんだ。ただしあれって、スーパーウルトラかっちょいいんだけど、スーパーウルトラ高いんだよね。

マット塗装が高いのは生産ラインでできないからなんです、ってボイデルが説明してくれた。わざわざ違う工場まで持って行って、何回も何回も手作業でスプレーする必要があって、しかも仕上げにラッカーを使わずにきれいに仕上げなくちゃいけないらしい。それに万が一作業中に欠けたり傷ついたりして失敗したら、修復は不可能とのこと。そん時は、ベントレーの基準として、傷がついた一部分だけじゃなくて車全体を再塗装する必要があるんだ。それで、ここまで聞いてもまだマットにしたい?そうするんなら、運転に慣れるまでは、保護カバーで覆っとくのをおススメするよ。

最終的にはどうなったかって?内装はレッド+クロームディテール+ちょこっとウッド、ボディはヴァーダント、総額は200,345ポンド(3,070万円)だよ。ここに来る前に想像してたのよりずっとトラディショナルなクルマに仕上がったけれど。でも、手に入れるだけじゃなくて、とりあえず数週間一緒に暮らしてみないとわからない。コミッショニング過程はとってもいい体験だった。選択肢の膨大さに大変な目に遭ったってのはさておくとして、いろんな色や材質についてだとか、なんで「この」色グループと「あの」色グループの相性が悪いのかだとか、たくさんのことを学んだんで、なんだか色の専門家になれたような気分が味わえたな。

注文が出来上がった車の3D試乗はまだやってないんだけど、そもそも僕はこれについてはちょっと懐疑的なんだ。試乗のあとに残るものって匂いや手触りだよね?僕が納車時に一番ワクワクするのがそれ。ムード照明とかインフォテインメントとかじゃない。まぁとにかく、組み立てないことには何も始まんない。もしなんか不具合があったら、自分を責めるしかないね。だって、僕も組み立てを手伝うつもりなんだからさ。

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