個性磨きがクルマの販売増につながる FCAジャパンの躍進

アバルトのMT車比率はなんと48%

FCAジャパンが2019通年の合計販売台数で過去最高を更新した。それなら日本国内の自動車販売の調子がよいのではないかと思う人もいるかも知れないが、必ずしもそうではない。国産の自動車は2018年2019年ともに-3%となっており、その内訳として、乗用車は-2%、軽自動車は-4%となっている。輸入車の方も、2019年は-3%だ。FCAジャパンではその状況を打破し、2018年が+5%、そして2019年は+10%の成長を遂げている。他の輸入車ブランドを細かく見ても、メルセデス・ベンツはさすがというべきか、微減といった感じだが、BMWやフォルクスワーゲン、アウディ、ミニなどドイツ勢も、今年は苦戦を強いられたようだ。逆にFCA、ボルボ、PSAなど、比較的台数の小規模な個性あるブランドが、躍進している。

FCAの取り扱いブランドは、ジープ、フィアット、アバルト、アルファロメオだが、4ブランド合計の販売台数は、2019年11月末時点で2018年の販売台数を136台上回っており、12月の販売台数がすべて純増となった。2019年の合計販売台数は24,666台に達し、過去最高記録更新は4年連続となっている。FCAは、2019年に最高月間販売台数を7か月達成しており、これには、ジープの月間最高販売台数8回更新とアバルトの月間最高販売台数3回更新が大きく寄与している。

中でも特に好調なのがジープだ。ジープは2013年以来6年連続で台数を増やし、13,360台を販売した。ジープ・ブランドは、現在FCAジャパンの販売台数の54%を占めている。2019年のジープ・ブランドの年間販売台数は対前年比で16.3%増加した。2018年に11年ぶりにフルモデルチェンジした新ラングラーは、年間を通じて高い需要に支えられ、5,000台に迫る過去最高の販売台数を記録した。2009年時ではわずか500台だった販売台数が10倍まで増えているということだ。国内のフルサイズSUVのランキングを見ても、グランドチェロキーが1,743台と、BMWX5の1,389台に差をつけている。ジープは若い層が購入しているということも特徴だ。業界平均では2011年に48歳で2018年には53歳となっている。だがジープは2011年も2018年も変わらず39歳が平均年齢である。

ジープ ラングラー

また、ラングラーは、日本カー・オブ・ザ・イヤー2019-2020において、「10ベストカー賞」と部門賞「エモーショナル賞」の2つの賞を受賞した。その他のモデルの販売もおしなべて好調を維持し、ジープのフラッグシップモデルである「グランドチェロキー」とコンパクトSUVである「レネゲード」は共に、過去最高を更新している。新CIに基づいて行われているディーラー拠点の刷新も順調に推移しており、日本でのジープのブランド力の強化に大きく貢献している。新CIを導入して刷新または新築された店舗数は、2020年1月現在、全80拠点中、57店舗に達しており、ジープでは、これを2020年中に75店舗まで増やす計画だ。

イタリア・ブランドも好調を維持している。同一モデルをベースとする、フィアット500及びアバルト595/695のシリーズ合計販売台数は、販売開始から12年目であるにもかかわらず、過去最高を更新し、6,970台となった。日本でもことに競争が厳しいコンパクト車市場において、この記録は快挙と言えるだろう。その他の要因としては、ジープ、フィアット、アバルト、アルファロメオの全ブランドでの、限定車を含む商品力の充実と、そして、ブランドの魅力をよりよく伝える、新コーポレート・アイデンティティ(CI)導入のディーラー拠点の拡充が挙げられる。

アバルト 695 70°Anniversario(セッタンタ・アニヴェルサーリオ)

フィアットとアバルトも好調な販売を維持した。特に、アバルト595/595Cシリーズは、2,628台を販売して過去最高を更新している。好調の要因は、アバルト・ブランド創立70周年を記念して、2019年4月から11月に行われたアバルトファン感謝イベント「ABARTH DAY」まで、様々な取り組みを行ったことが挙げられる。70周年記念限定車「ABARTH 695 Anniversario」は、富士スピードウェイで行われた「ABARTH DAY」において、参加台数350台、参加者600名のアバルトファンの前で発表された。なお、アバルトブランドの70周年を記念する限定車「695 70°Anniversario(セッタンタ・アニヴェルサーリオ)」は200台の限定車だったが、発売から10分で完売してしまったというほどだ。さらにアバルトは、オーナーのMT比率が48%もあるという。FCAジャパン代表取締役社長兼CEOのポンタス・ヘグストロム氏によると「ヨーロッパの方ではさらにMT比率が高いので、日本はグローバルで見たらそれほど高い比率というわけではありません。とはいうものの、日本市場においては、MT比率がとても高いブランドになっています」とのこと。最近はMTの設定車両がとても少なくなっていることもあり、アバルトのMT人気はますます高まりそうだ。

他方、2019年はフィアット・ブランドとしても120周年を迎えた年となった。2019年、フィアットは120周年記念限定車「Tuxedo」を発表して記念日を祝うとともに、「Tuxedo」を含め全10モデルの限定車を導入した。そうした一連の施策が奏功し、ローンチ後12年目となる昨年もフィアット500の販売の勢いは堅調で、11月にはフィアット500の日本輸入50,000台を達成している。フィアットブランドでは2005年に15%しかなかった女性オーナーの比率が2018年には62%まで増加をしている。また国産乗用車からフィアット チンクエチェントへの乗り換えも52%になっているという。アルファロメオ・ブランドの販売は、輸入車市場と同様のトレンドとなった。他方、新たに導入されたディーゼルは、自動車評論家と消費者の両方から賞賛をもって迎えられた。ステルヴィオは695台を販売して導入初年度を上回りましたが、それを支えたのはディーゼルであり、販売台数の半数はディーゼルエンジン搭載モデルが占めた。

ポンタス・ヘグストロム氏は、2019年の好業績について次のようにコメントした。

「2019年、FCAジャパンは再び、輸入車市場の下降トレンドには組せず、力強い成長軌道を維持しました。日本の自動車文化がより豊かになることを目指す弊社のミッションステートメントを革新的なアイデアで実現するために、我々は常に果敢に新たな顧客の開拓に挑んでいます。例えば、活動的な女性ドライバー、若い世代の自然愛好家たち、マニュアルトランスミッション愛好家などに積極的にアプローチし、ジープ、フィアット、アバルト、アルファロメオと暮らすことで広がる生活の可能性ついてコミュニケーションしています。FCAジャパンの販売を生み出しているのは、個性あふれる製品群と、その製品が生み出す本物の体験をお客様に届けてくださるディーラーの皆様です。ジープとアルファロメオの新CIに基づく店舗刷新は順調に進んでおり、フィアット/アバルトも今年は同様に刷新を進める予定です。FCAジャパンは、2020年も独自の成長軌道を続けるべく、新たな製品、革新的なマーケティング施策、そして魅力的な体験を提供していく所存です」

ブランドごとの個性を磨き上げ、ユーザーターゲットを絞ったことが、FCAジャパンの成功と言えそうだ。そういう意味では、現在でも4つのブランドを持ち、少し先にはPSAとの合併も予定され、FCAもますます力強くなっていくだろう。2020年は限定車を45台予定しているというFCAジャパン。今年も高成長が期待できそうである。




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