【試乗】マツダ ロードスターは今なお世界最高のスポーツカーか? トップギアが下した「買い」の評決

誕生から35年、マツダ ロードスター(MX-5)は世界で最も売れている2シーターオープンカーとして君臨し続けている。2024年の改良を経た今、その「人馬一体」の走りは健在なのか? 英国編集部が1.5Lと2.0Lモデルを徹底テスト。維持費、実用性、そして純粋な運転の楽しさを辛口レビューする。

「MX-5は、完全に合法的な速度域でオープンエアの楽しさを提供し、維持費はタダみたいなものだ。これ以上何を望むというのか?」

いいね!
髪をなびかせる楽しさ、安い維持費、気楽な生活

イマイチ
長身の人には狭い、風の巻き込み音がうるさい、あまり高級感がない

概要

これは何?
MX-5(日本名:ロードスター)は、地球上で最も認知されたスポーツカーの一つであり、最高傑作の一つである1960年代のロータス エランにインスパイアされている。1989年、マツダはロータスの非の打ち所がないステアリングフィール、純粋なドライビング、そして羽のような軽さを、独自のコンバーチブル形式で再現しようとした。その結果、モダン・クラシックとも言うべきMk1(NA型)MX-5が誕生し、以来、この日本の自動車メーカーは称賛の中で量産し続けている。

つまり、ただのコピー?
全く違う。2015年時点でMX-5は第4世代(ND型)に入っており、もはや単なる英国製スポーツカーの模造品ではない。それ自体がアイコンなのだ。マツダは2016年に累計販売台数100万台を突破し、ギネス世界記録に認定された。それ以来、さらに25万台を売り上げている。

他社もMX-5の方程式に迫ろうとしたが、そのほとんどが失敗に終わった。これは数十年にわたって磨き上げられた勝利への努力の結晶であり、自然吸気ガソリンエンジンのパワーは後輪へと伝えられる。ここにはAWDもターボもない。そしてそれらのエンジンは――それほど強力ではないものの――マツダの「スカイアクティブ」エンジン開発によるニュアンスに富んだ技術の恩恵を受け、これまで以上に賢くなっている。

待てよ、2015年? こいつは古いじゃないか!
その通り。ここ数年、スポーツカー市場があまりにも停滞しているため、マツダにはMX-5を最先端に保つプレッシャーが全くなかったのだ。コロナ後のブームを経てなお販売が比較的堅調な今、レシピをいじくり回す必要があるだろうか? 我々はマツダが電動化について積極的に考えていることも知っているが、それは「一度壊して最初から作り直す」ような仕事であり、彼らとしては可能な限り先送りしたいと考えているはずだ。だから、Mk4(ND型)はまだ数年は現役で奮闘し続けるだろう。

2024年、マツダはMX-5を新鮮(風)に保つためにいくつかの変更を加えた。新しいLEDヘッドライトはND型のデザインにおける初の変更点であり、新しい非対称リミテッド スリップ デファレンシャル(LSD)と大型化されたタッチスクリーンは、マーケティング部門に仕事のネタを提供した。また、便利な「半分オフ」のトラクションコントロール設定も追加されたため、セーフティネットのある状態でスライドを学ぶことができる。これこそがMX-5の真髄、「手の届く楽しさ」だ。

どんなエンジンがある?
選択肢は依然として1.5リッターと2.0リッターの間にある。どちらも、ブレーキ時のエネルギーを回生して電装品に電力を供給し、燃料を節約する広範なアイドリングストップ技術(i-ELOOP)を備えている。1.5リッターは130bhp(132PS)と152Nmを発生し、0-100km/h加速は8.3秒。一方、2.0リッターは182bhp(184PS)と205Nmで、同加速を6.5秒でこなす。どちらもよく回る小さな努力家であり、特に2.0リッターは7,000回転を超えても元気に回り続ける。(※英国仕様ではソフトトップでも2.0Lが選択可能)

コンバーチブルが好きじゃない場合は?
手動のソフトトップ(素晴らしい出来だ。運転席から片手で開け閉めできる)を敬遠して、より重く電動アシストされた何かを選ぶなら、MX-5の完全な体験を逃すことになるだろう。とはいえ、マツダは現代の嗜好(いや、電動SUVのことではない)に対して小さな譲歩をしており、最近は電動折りたたみ式ハードトップのMX-5も提供している。

そのモデルは「リトラクタブル ファストバック」を意味するRFというバッジが付けられている。ああ、意味を知らない方が響きはクールだな。重量は30~40kg増加し、それに伴い加速性能もコンマ数秒落ちる。かつてはオートマチックトランスミッションのオプションもあったが、我々はそれを無視することに決めたし、どうやらマツダの顧客もそうしたようで、現在(英国では)提供されていない。結構なことだ。6速マニュアルが至高なのだから。

実際、ドライビング体験全体が、他の「いわゆるスポーティーな車」によく見られる、麻酔をかけられ、過剰にアシストされ、電子的に監視されたドライブに対する愛すべき解毒剤となっている。エントリーレベルのMX-5の重量は1,000kgをわずかに超える程度だが、それはマツダが「あと一つだけ機能を追加しよう」という誘惑を避け、ラードの塊のような車になってしまうことを回避し、車の使命に集中し続けたからだ。

ファーストカーとして使えるか?
友人を一人しか乗せられなくても構わないなら、もちろん、なぜダメなんだ? ベーススペックでも装備はそこそこで、全モデルにシートヒーター、LEDヘッドライト、スマートフォン接続、クライメートコントロール、純正ナビ、クルーズコントロールが標準装備されている。

130リットルのトランクは数値上かなり小さいが、ブラックタイ着用のイベントでない限り、週末旅行の荷物を詰め込むには十分だ。もし高級車からMX-5に乗り換えるなら、内装のプラスチックが耐久性重視であることや、いくつかの気の利いたディテールが欠けていることに気づくだろう。だが、豪華なキャビンのためにMX-5を買うヤツなどいない。

2025年11月現在、価格は1.5リッターで28,515ポンド(556万円 ※)、2.0リッターエンジン車はトリムレベルが上がるため33,415ポンド(652万円 ※)からとなっている。ハードトップのRFはスペックにより2,000~3,000ポンド(40万~60万円)高くなる。しかし、今日(こんにち)の基準からすれば、依然として非常にお買い得だ。(※英国価格は税金等の関係で日本国内価格より大幅に高くなっている)

他に検討すべき車は?
近年スポーツカーの販売が大幅に減少しているため、この価格帯でMX-5に匹敵する車は皆無に等しい。唯一トヨタ GR86が肉薄しているが、英国への割当分はわずか1時間半で完売してしまった。

そこで、(現在、あるいはほぼ消滅しかけている)いくつかの名前を挙げておこう。アルピーヌ A110、ロータス エミーラ、BMW Z4、トヨタ スープラ、ミニ コンバーチブル、アウディ TT RS、ケータハム セブン、ポルシェ ケイマン。懐の深さが許すなら、選択肢はたくさんある。

結論
「MX-5が世界で最も売れているロードスターであることは、偶然ではない。シンプルなメカニズムと手の届く楽しさがあるからだ」

マツダ MX-5が世界で最も売れているロードスターであるのには理由がある。シンプルなメカニズムと手の届く楽しさというレシピは、低いランニングコストと幅広い魅力を意味する。これほど少ないコストでこれほど多くのことをやってのける車は、このセグメントには文字通り他に残っていない。

マツダは方程式をいじることに抵抗し、常識的な速度でただあなたの顔に笑みを浮かべさせる車を作り上げた。こいつで屋根を開けて過ごす一日は、あなたの魂にとってこの上ない良薬となるだろう。

とはいえ…10年にわたる細かな調整が延命させてきたのは確かだが、尻に火をつけるような適切なライバルがいないため、MX-5が少し予測可能な車になりつつあるとも言える。ギアボックスは依然として傑作だが、性能よりもレジャー寄りであるため、トラックDSCモードが笑えるほど楽しいとしても、徹底的なドライバーズカーとは言えない。Mk5(次期型)では、ステアリングにもっと手応えとフィードバックを与えてほしいものだ。限界まで攻めた時の、少しフワフワしたボディコントロールも改善の余地がある。

しかし、MX-5をこれまで以上に重要な存在にし、活力源としているのは、それがとても小さく、軽く、シンプルであるという事実だ。過度に複雑で、ハイテクで、肥大化した車があふれる現代において、これは絶対的な恵みである。だから我々は、マツダが電動ブーストや、より多くの遮音材、余分な居住空間を追加しろというプレッシャーに屈しないことを願っている。そうすることは、MX-5の存在意義――1950~60年代の古典的な英国ロードスターの現代的な後継車を世界に提供すること――から遠ざかることになるからだ。

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