【体験レポ】ハーレーの乗り方が激変!10年ぶり50代ライダーが公式レッスンで感動した理由

正直に言えば、清々しいほどに、バイクから遠ざかっていた。最後に跨がったのは10年前。身体は年月に正直に衰え、反射神経もすっかり錆びついた。そんな50代の“元ライダー”の前に、ハーレーダビッドソンがライディングレッスンへの挑戦状を叩きつけてきたのだ。「スキルを改善し、強化する」だと?結構。まずはこの、忘却の彼方に消えたスキルとやらを、記憶の底からサルベージするところから始めなければならない。

自動車ブランドが主催するドライビングレッスンはこれまで数多く実施されており参加したことのある人も多くいると思うが、バイクのライディングレッスンを受けたことのある人はまだあまり多くいないのではないだろうか。

ハーレーダビッドソンのライディングレッスンは実に長い歴史を持ち、創業当時に警察や軍に向けて行われたものがその原型だという。そのルーツは、警察や軍の屈強な男たちに、この鉄の馬をねじ伏せる方法を叩き込んだことに始まるのだ。1973年には北米でMSF(二輪安全協会)の発足を支援し、業界全体のライダー教育の基盤を作る。2000年代初頭にブランド独自の教育プログラムである「Rider’s Edge」を展開、その後「Harley-Davidson Riding Academy」と形を変えて現在に至っている。

今回受講した「スキル ライダー トレーニング」の特徴は、大きく分けて2つある。

1つ目は、ハーレーダビッドソンアカデミーが認定するコーチが講師を担当しているため、全国で行われるレッスンにブレが生じないということである。そのためハーレーダビッドソンをより楽しんで乗れるようなブランドからのメッセージを確実に感じることができるのも大きなメリットだと感じる。二輪業界のレジェンド、ケニー佐川氏が主任講師として率いるコーチ陣は、国内外のレースで修羅場をくぐり抜けてきた猛者ばかり。メーカー主催という看板は伊達じゃない。参加者の満足度というより、もはや畏敬の念を抱かせるレベルの布陣だ。コーチ陣のレベルの高さも参加者の満足度を上げる要因となるのではないだろうか。

2つ目の特徴は、ハーレーダビッドソンに特化している点である。このレッスンの核心は、これが「バイクのレッスン」ではなく、徹頭徹尾「ハーレーを乗りこなすためのレッスン」であることだ。一般的なライディングスクールでは異端児扱いされがちな、あの長く、重く、どこまでもトルクフルな“クロームの塊”を、いかにして手懐け、共に踊るか。その一点にすべてが注がれている。コーチ陣は各モデルの特徴を熟知されているので、より個人にそしてモデルに適したライディングのヒントを得ることができる。レッスンは自分のバイクを持ち込んで参加することができるのでその恩恵は大きいのではないだろうか。

一般的なライディングスクールではハーレー乗りが少ないため、自分のライディングに活かしきれないと考える方には最適なプログラムとなる。

このプログラムはあらゆるレベルのライダーを対象にし、「来たとき以上に上手になれる」スキルを理論と実践から学ぶことが目的となる。「免許は持っていてもハーレーに乗れるか不安」、「ハーレーらしいツーリングモデルで練習してみたい」、「こっそり上達したい」などという顧客の要望を叶えるのがこの「スキル ライダー トレーニング」である。

さて、では実際のどのようなことを実践するのかご紹介しよう。体験記を執筆する前提となるが、筆者は10年前にバイクを手放してしまった50代中盤の元ライダーである。大型バイクには長年乗っていたがハーレーは初体験で、10年のギャップと身体の衰えで他の参加者同様にプログラムをこなせるのか不安なままの参加となる。

今回のプログラムは4つにグループが分けられた。「初心者」「中級者」「上級者」というスキル別ではなくランダムにグループが組まれ「八の字・スラローム」「コーナリング」「急制動」「低速走行」というプログラムを順番にサーキットするスタイルである。

筆者に割り当てられたのは最新のクルーザーモデルである「BREAKOUT」。これまで体験したことのないライディングポジションとその重さに戸惑いながらまずは「8の字・スラローム」に挑むこととなった。コーチの指示は実に明確で、まずは「視線の確認」を徹底する。320kgの巨体を前に、まずは「8の字」という名の試練が与えられる。コーチの指示はただ一つ、「私を見て」。視線を中央のコーチに釘付けにするだけで、あれほど絶望的に思えた巨体が、嘘のように小さく旋回を始める。次に教わったのは、内側の尻にほんの少し力を込めること。大げさな体重移動ではない。ただ、片方の尻の筋肉を意識するだけ。すると、ブレイクアウトはまるで「待ってました」とでも言うように、さらに滑らかに円を描く。これは魔法か? 段々と、この気難しい鉄の塊との対話の仕方が見えてきた。このレベルに併せてちょっとずつヒントを貰えるスタイルもありがたい。段々と仕上がっていく感じが実感できる。

また、この、あえてスキル別にしない意図がよくわかった。待ち時間に上手い人のライディングを見ることができること、そしてその人に対するアドバイスを聞けることがなによりも自分への参考になる。

次に向かうのはコーナリング。左のブラインドコーナーで奥が更に深いコーナーになっているという想定である。このパターンはよくツーリング中に出くわすケースだが、実践を想定しての反復練習はやはりためになる。私は右コーナーが苦手なのだが、「右コーナーが苦手ですか?それはニーグリップが甘いからですよ」コーチの指摘は的確だった。内腿でタンクを締め上げ、内側のステップにグッと荷重をかける。するとどうだろう。あれほど頑なに感じられた車体が自然に傾き、まるでレールの上を走るようにスムーズなラインを描いていく。320kgの巨体を、意のままにねじ伏せるこの感覚。そうだ、身体の使い方がほんの少し違うだけで、ライディングはこれほどまでに楽になるのか、と驚いた。

3つめは「急制動」。はじめはリアブレーキのみでABSを体感し、次にフロントブレーキを加え、最終的には前25%、後ろ75%の理想のブレーキングバランスの感覚を掴むというプログラムである。私の乗ったBREAKEOUTのABSは制御が細やかで、以前所有していたモデルの「ガッガッガ」というような無粋な音も立てずに止まる。ハーレーではハンドブレーキまたはフォットブレーキ操作で両輪にブレーキ力を配分する機構であるElectronically Linked Braking(ELB)や、バンク角(車体傾き)を検知し、コーナリング時に前後ブレーキの配分を電子制御するCornering Enhanced Electronic Linked Braking(C-ELB)などが付いているモデルもあるので、いざというときの安心感が高い。この急制動のプログラムでも近くを見すぎるという視点に関するアドバイスを受けた。急制動の先には「障害物回避」というアクションが伴うので広く見ることが大事になる。練習のための練習ではなく、すべてのアクションに実践が想定されている点は、このセクションでも感じることができる。

最後は「低速走行」となる。ギアは1速で半クラ状態をキープしながらフットブレーキでスピードをコントロールする。初めて乗る車両なので、どのくらい深く踏むとリアブレーキを引きずる感じになるのか分かりづらかったが、駆動力とブレーキのバランスが取れると車体がピシッと安定することがわかる。低速はクラッチのON/OFFに頼りがちになってしまうが、例えば渋滞時に重いバイクを低速で安定して走らせる姿は、いかにも技術のあるライダーのようでカッコいい。ハーレーはそんなスタイリッシュなライディングスタイルにもこだわっていることがわかる。

ここまで読んで「ネタバレじゃないか」と思ったあなた、安心してほしい。私がここで書き連ねたことなど、あなたが現地で得るであろう衝撃的な「気づき」の、ほんの序章に過ぎない。「百聞は一見にしかず」などという生易しい言葉では片付けられない。これはもはや、体験という名の“啓示”なのだ。

参加費用はH.O.C会員が19,000円、一般が29,000円となる。特に私のようにバイクから離れてしまい、またバイクに乗りたいと考えているリターンライダーに特におすすめしたい。長年のブランクを埋め、さらに自己流のライディングを正してもらえる贅沢な時間である。レンタルバイクを借りて週末のツーリングを楽しむ程度費用で自分のライディングスキルを磨くことができ、さらにハーレーをより楽しむための理想のライディング方法を知ることができる。今回は「体験会」ということで半日に凝縮されたものだったが、通常の1日コースに参加すれば、きっとあなたをもう一歩先のバイクの世界に導いてくれるのではないだろうか。

【編集後記】
自動車の世界は高いクルマや速いクルマを持っている人がスゴイという価値観がまだ残っているが、バイクの世界は少し異なる。どんなバイクに乗っていてもやはりきれいにコーナーを曲がれるほか、きれいなラインを走れる人、所作が美しい人がやはり尊敬される。バイクに乗せられるのではなく乗りこなせるスキルが必要となるが、ほとんどの人が自己流で経験を重ね、乗りこなせていると錯覚しているのではないだろうか。この「スキル ライダー トレーニング」はそうしたライダーの小さなクセを修正してくれる絶好のトレーニングである。クセの修正の先には当然「安全のマージン」が生まれてくる。

今回のプログラムで最も参考になったのはちょっとした身体の使い方である。お尻の筋肉を意識した体重移動、肩の使い方、ステップに乗せた足の力の方向、腕の伸び具合など小さなことを意識すると重たく長いハーレーが待ってましたとばかりに素直に反応してくれる。そして一連の動作をリズミよく行うことで意のままにバイクを操れるようになる。そんな小さな成功体験を積み重ねて自分の成長を実感できるのもこのプログラムの特徴である。

ディーラーで話を聞くと、「みんなとツーリングに行きたいが、スキル不足で迷惑をかけてしまうことが心配」と考えているライダーが多くいるという。ぜひそんな人にはこのプログラムを受講してほしい。ハーレーダビッドソンに乗ることは「自由」「冒険」「仲間」を手に入れることである。このプログラムはそのどの要素も満たし、ハーレーというブランドとプロダクトをこれまで以上に好きになれる大きな入口になるのではないだろうか。

【体験レポ】ハーレーの乗り方が激変!10年ぶり50代ライダーが公式レッスンで感動した理由

400号記念:UK400マイルロードトリップ/フェラーリ F80/フェラーリハイパーカー:トップギア・ジャパン 069

このクルマが気になった方へ
中古車相場をチェックする
ガリバーの中古車探しのエージェント

今の愛車の買取価格を調べる カーセンサーで最大30社から一括査定

大手を含む100社以上の車買取業者から、最大10社に無料一括査定依頼

新車にリースで乗る 【KINTO】
安心、おトクなマイカーリース「マイカー賃貸カルモ」
年間保険料を見積もる 自動車保険一括見積もり





トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2025/11/82517/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

トップギア・ジャパン 069

アーカイブ