ベントレー コンチネンタル GT長期レポート6:サウンドの概念を変えたネイム

スペシフィケーション:

ベントレー コンチネンタル GT W12

エンジン:
5945cc W12気筒ツインターボTSI アクティブAWD 635ps 900Nm

燃費:
8.2km/L,278g/km CO2

パフォーマンス:
0-100km/h 3.3秒 , 333km/h

重量:
2260kg

価格:
27,335,000円/200,345ポンド(3,070万円) テスト車両/月額46万円

クルマの中って、ラジオや音楽など、いろんなもの聴くよね。時間つぶしには音が最適。僕もよくやるんだ。ポッドキャストとかオーディオブックとか、喋るやつばっかり聴いてた。コンチネンタル GTが来るまではね。

トップギアで作ったコンチネンタル GTにはネイム(Naim)のオーディオシステムがついてんだ。6,595ポンド(100万円)のオプションで、結構な出費だったよ。でも、そう思うのはベントレーの他のオプションの額と比べてみる前だから。それか、他のネイム製品でもいいや。最高級のやつだと、コンチネンタル GT本体よりも高額だって言うから、ビビるよね。

ビックリするくらい高かったってのは認める、でもこれが僕のこれまでの「ものを聴く」って行為を根本から変えてくれたんだ。これが来てからは、トークショーよりも音楽を楽しむようになった。だって音がとにかくすごいんだもん。バング&オルフセンが採用されたアストンとアウディでしょ、ブルメスターが付いたメルセデスでしょ、バウワース アンド ウィルキンス付きのBMW M5でしょ(これ、特に感動モノだった)、いいオーディオを積んだクルマには、これまでさんざん乗ってきた。どれもすごくよかったし、すごく楽しかった。でも、僕に聴くという行為を変えさせるまでの影響力をもってたやつはなかったな。もしかしたら、クルマとハイファイの相乗効果ってやつなのか?コンチネンタル GTの道路での威風堂々たる圧倒的な存在感と礼儀正しく品位に溢れたふるまい、あれが乗る人のリラックス度とか物の聴こえ方に関係してるとか?

その真偽のほどはともかく、気が付いたことがある。走りとか品の良さに対する感謝の念は当然のことなんでこれは除くとして、「音楽を聴くこと」がこの車との暮らしの中で最も感謝してるとこかも。毎日当たり前のように使われてて、運転とは切っても切り離せない部分。だって、めちゃ完璧に互いを補完し合ってるからさ。こんな事考えてたら、このオーディオシステムについてもっと知りたくなってきちゃったんで、ソールズベリーの中心部にあるネイム オーディオの本社に向かった。

イギリスの専門業者の多くがそうであるように、ネイムもかつて産業革命の牽引役だったアルゴス工業地帯の裏手にひっそりと拠点を構えていた。けど、一歩足を踏み入れてみると…、うーわ、なんだここ!どこから説明したらいいのか全く見当がつかないんで、かわりと言ってはなんだけど、あのウルトラスーパー高音質を生み出す秘訣につながる逸話を2つ紹介しよう。

彼らが使っているケーブルは、サプライヤーから届けられるんだ。1メートルあたりの価格はめちゃめちゃ高くて、コイル状にグルグル巻かれて配達されてくる。それを見たネイムのエンジニアたちは、巻かれる工程でケーブルの電気の流れが「ほんのわずかに」変わっちゃってることに気づいたんだって。すると、すべてをストレスフリーなまっすぐな状態に戻してあげようって、ばかデカい装置をわざわざ建ててさ、ケーブルを端から端までやさしく揺らしてほぐしたんだって。一方の端から180フリフリ、反対側からもう180フリフリだよ。いや~、見上げたもんだよね。

それと、トランジスターの話もすごい。ケーブルもそうだけど、トランジスターも最高級品の部品がもうあるんだ。だけどネイム社員にはわかっちゃったんだよね、全く同じとされる部品の中にもチョー僅かながらに違いがあるってことに。そこで彼らは、チョー正確な電気抵抗が測れる箱を自分たちで作ったんだ。中に128個のトランジスターを入れてスイッチを入れると、全く同じペアが見つかるたびに音が鳴る。ここで真におんなじだと判定されたペアだけ、一緒に使うことが許されるんだって。

ここでは2つしか紹介しなかったけど、こんな話が山ほどある。体にたまった電気を放電するために、館内では靴にカバーをつける。溶接工のための身だしなみチャートが用意されているんだ。ワイヤが完璧に組み込まれ、美しい曲線を描いている回路はどれも芸術作品のようで、若干の干渉さえ存在しない。ああ、もうなんだか、クルマのことは忘れちゃいそうだ―ぶっちゃけ、ここより適当にやってる工場なら以前取材したことあるけど。

ネイムがベントレーに製品供給を行い始めてから、今年でもう12年になる。現在、他とはどことも提携してないらしい。ところで「贅沢」の定義って何だ?選択肢が多いこと?いや、違う。選択肢が多すぎて逆に苦しむことから、解放されることなんだ。それより、すべてが既に完ぺきな製品であることの方が僕にとっては重要なんだ。ドイツの自動車メーカーには、このことに気が付いてもらいたいもんだよ。こないだ乗ったメルセデス、どうしたもんか悩んだんだから。それはまぁいいとして…、コンチネンタルのサウンドバランスは変えることができるよ。って言っても、低音か高音かってくらいだけど。僕はほぼ変えないけどね、僕の14の息子はよくやってる。僕がいじるのはDSPモード(デジタル信号処理)と、トークか音楽かを選ぶくらい。でも、さっきも言った通り、ここ最近トークは全く聞いてない。だってコンチネンタル GTに乗ったら、聴くのは「音楽」以外あり得ないっしょ?

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