「人とクルマ」-この関係性も、時代とともに変遷してきた。今後はさらなる変化が訪れると思われるが、ベントレーでは、変わらないものがある。それがベントレーを作り上げる人々とクルマの関係だ。ベントレーのすべてのモデルは、英国クルー工場で手作業によって組み立てられているが、これを支えるのが、伝統のクラフツマンシップだ。今回は、ベントレーを支えるさまざまな人にフォーカスを当てよう。
最終ページには、3択のベントレークイズもあるので、楽しんでみよう。
01 トリム一筋50年
現在ベントレー本社で最も勤続年数の長い社員は、インテリアのトリムなどを担当する「コーチ・トリマー」のノエル トンプソン。入社は彼が16歳だった1969年9月1日で、昨年の9月1日に勤続50年となった。トンプソンは50年前のその日、クルー工場で働き始めた60人の見習い社員の1人でしかなかった。入社から12カ月間は、主にエンジニアリング部門のさまざまな部署を回るローテーショントレーニングを受けた。ちなみにこのトレーニング制度は今でも続いており、高
い技能を持つ職人を何人も育ててきた。
実は、トンプソンの父親もベントレーの工場で塗装を担当するクラフツマンの1人で、トンプソンの入社から22年間、同じ工場で親子2代にわたって仕事をするという幸運に恵まれていた。また、トンプソンの祖母も第2次世界大戦中にクルー工場で働く社員だった。
トンプソンは、自身が入社した頃のベントレーの本社はまるで別の場所だったと振り返り、「私が勤め始めた頃、工場はすでに時代遅れとなっていました。車両のクレードルは手で押して移動させていましたし、床はコンクリートがむき出し。1940年代の防空壕も残っており、倉庫として使用していました。年間の生産台数も1,800台ほどで、製造するモデルの種類も極めて限られていました」などと語っている。
1998年にフォルクスワーゲン・グループ傘下になってからの目覚ましい変化も目の当たりにしてきたトンプソンは、まさにクルーの生き字引。エリザベス女王のステート・リムジンのトリムもトンプソンが手掛けるなど、確かな技術でビスポークにも対応してきた。長いキャリアについては、「私は信じられないくらい幸運でした。近年では一生の仕事に出会える人は極めて少ないと思います。私はさまざまな人たちと出会い、仕事を分かち合うことができてきたのですから」と述べた。