スズキ初の軽乗用BEV「eスカイ(SKY)」プロトタイプの試乗インプレッションをお届けする。昨年のJMSで披露されたコンセプトモデルの市販版がいよいよ今秋登場予定だ。一充電走行距離310km、日常使いに最適なパッケージングと軽快な走りが特徴。雨天のテストコースで確認したその実力と魅力に迫る。
軽自動車界にもBEV(バッテリー電気自動車)の波が押し寄せるなか、スズキは同社初となる軽乗用BEV「eスカイ(SKY)」を公開した。今秋の正式発表に先がけて、テストコースでプロトタイプの実車を確認し、試乗する機会を得たのでファーストインプレッションを報告する。
一部で競合として名前が挙がる新型BEVの中には、全高の高い「スーパーハイトワゴン」を採用するモデルもあるが、eスカイの立ち位置は明確に異なる。eスカイはハッチバックの全高を少し高めた「ハイトワゴン」パッケージを採用。後席ドアは通常のヒンジ式とし、室内空間や荷室アレンジは必要十分な実用性を確保しつつ、普段使いの扱いやすさを重視している。
昨年のジャパンモビリティショー(JMS)に出展されたコンセプトモデル「ビジョン eスカイ」の時点で、その完成度は高く、すでに市販版をベースにショーモデル用のアレンジを加えていたことが窺える。
eスカイの開発コンセプトは「イージー to スイッチ!」。ガソリン車から違和感なく乗り換えられることを目指し、日常使いにちょうど良い実用性と、BEVならではのスムーズな加速、高い静粛性を両立したという。
パワースペックの詳細は未発表だが、スズキ内製のeアクスルと26kWhのLFP(リン酸鉄リチウムイオン)電池を搭載し、一充電走行距離は310km。交流電力消費率は国産BEV最小の97Wh/kmを達成している。軽自動車ユーザーの1日当たりの平均走行距離(平日約20km、休日約150km)を考慮すれば、普段使いは充電不要で、週末の遠出もストレスフリーにこなせるスペックだ。
エクステリアは、グリルレスのフロントマスクやデジタル数字のような灯火類のグラフィック、浮遊感のあるルーフなど、BEVらしいユニークさと親しみやすさを同居させた2ボックスのトールワゴンスタイル。インテリアは、陶器のような質感のインパネからドアへ続くラウンドラインが広さを演出する。10.1インチのディスプレイオーディオや2段トレイコンソール、レザー調ステアリングホイールとステアリングヒーターといった装備は、スズキの軽自動車として初採用となる。
今回の試乗は、あいにくの強い雨に見舞われ、テストコースは終始ヘビーウエットという条件だったが、かえって基本性能の素性が明らかになった。
走り出してまず感じるのは、軽量化の恩恵だ。必要十分なバッテリー容量に抑え、高張力鋼板を多用することで、車両重量は1030kgに留められている。最高出力は軽自動車の自主規制値である64ps(47kW)に設定されていると見られ、絶対的な加速力こそハイパワーBEVに譲るものの、アクセル操作に対するレスポンスは軽やかで、全開加速時の力強さも十分以上だ。
ハンドリングも含め、スズキの軽自動車らしい軽快感はBEVになっても健在だ。ロック・トゥ・ロックは大きめだがスラロームも軽快にこなし、ヘビーウエットの路面でも操縦安定性に不安はない。直線路でのハードブレーキングでもABSが的確に介入し、安定した姿勢を保った。また、ワンペダル感覚で操作できる「イージードライブペダル」機能は、滑りやすい路面での繊細な車速コントロールに大いに役立った。
操作系については、大半の軽自動車ユーザーが使い慣れているインパネシフトを採用。メーターやディスプレイの視認性も高く、ガソリン車から乗り換えても操作に戸惑うことはないだろう。
安全・快適装備を充実させ、初めてのBEVとしても最適なスズキ eスカイ。残る焦点は車両価格と補助金だ。エントリーグレードが実質200万円を切る価格設定となれば、軽自動車市場に多大なインパクトを与えることは間違いない。(文:篠原 政明/写真:原アキラ、ほか)
■ スズキ eスカイ 主要諸元(プロトタイプ参考値)
●全長×全幅×全高:3395×1475×1625mm
●ホイールベース:2460mm
●トレッド 前/後:1285/1295mm
●最低地上高:140mm
●車両重量:1030kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:未発表(推定47kW<64ps>)
●最大トルク:未発表
●バッテリー総電力量:26kWh
●WLTCモード航続距離:310km
●最小回転半径:4.4m
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:165/65R14



