1971年の登場から18年もの長きにわたり生産されたメルセデス・ベンツ「SL (R107)」。SクラスやEクラスと並び、長年その高いブランド価値を守り続けてきたこのモデルは、今やクラシックカーの定番としての地位を確立している。当時のメルセデス特有の堅牢なドア音、ふかふかのシート、そして何よりも流行に左右されない圧倒的な「優雅さ」は、現代の車に何が欠けているのかを教えてくれる。今回は、このR107型SLを所有するための現実的なアドバイス(特に購入時の錆対策!)から、その唯一無二のドライブ体験までを、お届けする。
メルセデス SL。どの世代の話だ?
メルセデスには、その名声を世代を超えて維持し、正当化してきた素晴らしい歴史がある。Sクラスだけでなく、EクラスやCクラス、そしてそれらが現在の名称になる前のモデルたちもそうだ。SLが72年もの間、7世代にわたって存在し続けていると聞けば、一貫したアイデンティティを持つ車だと思うだろう。
しかし、現実は違う。伝説的な「ガルウィング」として誕生した長距離レースカーは、やがて魅力的なスポーツカー「パゴダ」となり、そしてこの第3世代へと姿を変えた。これはより大きく、よりソフトなクルーザーだ。決して「ドライバーズカー」ではなかった。
だが、悲しむことはない。そしてボビー・ユーイング(※米ドラマ『ダラス』の登場人物。このSLの愛好家として有名)のことは忘れてほしい。人々はこの車を愛した。それも、納得の理由でだ。
R107型は1971年から1989年まで、実に18年間にわたって生産された。販売台数は約25万台。当時の新車価格がジャガー Eタイプのほぼ2倍だったことを考えれば、これは驚異的な数字だ。この車は、後のSLが持つ「安全、快適、技術的完成度」というテンプレートを作り上げた。クラシックカーとして見た場合、非常に所有しやすい一台である。
少し見て回ろうか
そのスタイルは生涯を通じてほとんど変わらず、フェイスリフトも小規模なものに留まった。スチールボディのコンバーチブルだ。脱着可能なハードトップはよく選ばれたオプションだったが、ソフトトップの布製ルーフも保護性能は抜群で、金属カバーの下にすっきりと収まる。ただし、展開作業には人間自身の筋肉が必要で、電動油圧式ではない。
パワーユニットは、非常に頑丈な直列6気筒(M110系)とV8(M116/117系)エンジンが中心で、3速・4速のオートマ、あるいは4速・5速のマニュアルが組み合わされた。すべてを列挙するのは勘弁してほしい。生涯を通じて何度も仕様変更があったからだ。中には特定の市場向けモデルもあった。例えば後期型の強力な5.6リッターV8は、ここ英国では売られず、実際には英国仕様の500SL(245bhp)の方がパワフルだったりした。
すべて後輪駆動で、独立懸架サスペンションを採用している。下回りの設計は1968年の「W115」ミッドサイズ・サルーン(縦型ヘッドライトが特徴のモデル)に基づいている。ちなみに、後継のW123サルーンもほぼ同じシャシーを使っている。つまり、時代遅れだったのではなく、ドイツのタクシーとして50万kmを走破するほど非常に信頼性が高く、堅牢だったのだ。
インテリアは?
SLは実質的に2人乗りだ。後部座席は「+2」と呼ぶのもおこがましい。背もたれを倒すと荷物置き場になる。トランクは非常に実用的で、屋根を開けて走っていても荷物を鍵付きの空間にしまっておけるのが良かった。
SLのフロントシートは大きく、ふかふかだ。これがドライブの性格を決定づけている。目の前には巨大なステアリングホイールと、読み取りやすい3つの大きな丸いメーター。一番左のダイヤルには、燃料、温度、油圧のサブゲージが収められている。
当時のメルセデスに共通する印象は、圧倒的な「品質の高さ」だ。装飾は最小限で、ただただ頑固なまでの堅牢さがある。ドアを閉めれば「ドスン」という重厚な音が響き、スイッチやレバーは頑丈で、ボディパネルは厚く、完璧に取り付けられている。構造全体がガチガチに硬いのだ。
ボディバリエーションは?
実はもう1つある。R107の最初の10年間、並行して販売されていたのが「SLC(C107)」だ。Bピラーのないルーフと、サイドガラス後部の独特なスリットが特徴の、超優雅なモデルだ。ホイールベースが36cm長いおかげで、大人でも座れるリアシートを備えていた。ちなみに、ラリー競技のホモロゲーション取得のために作られた5.0リッターの軽量型SLCも存在した。サファリラリーのような耐久イベントに最適だったことは言うまでもない。
走りはどうだ?
当時は十分だったが、現代の基準では「威厳がある」と言っておこう。280SLで180bhp前後、V8モデルで200〜245bhpと、性能の幅は驚くほど狭い。すべて滑らかだが、メルセデスらしく、キャラクターを主張するようなエンジンではない。排気音は抑えられ、燃料噴射装置のおかげでキャブレター特有の吸気音もない。
高回転を回すようにも設計されていない。70年代のサルーン用エンジンだからだ。トルクの波に乗り、オートマに任せて走るのが正解だ。初期の4速オートマはあまり滑らかではなかったが、後期型では上品さが改善された。高速走行は快適で、安定感も抜群だ。
クルーザー、ということか?
その通り。ひらひらと流すのが似合う車だ。乗り心地は枕のように柔らかい。14インチホイールには背の高いタイヤが巻かれ、スプリングのレートも低いため、鋭い段差も吸収する。ダンパーはかなり自由に動くため、大きなうねりではふわふわと浮いたような感覚になることもあった(※1985年のフェイスリフトで、15インチホイールへの変更と共にタイヤは扁平になり、足回りは少し引き締められた)。
コーナーでは、あの巨大なハンドルを回す必要がある。メルセデスはボール循環式ステアリングから、より正確なラック&ピニオン式への移行が遅かった。調整されたSLのステアリングには遊びはないが、路面からのフィードバックはほとんどない。パワステは軽いだけで、路面感覚をさらに遮断している。
つまり、ロールする、ふわふわする、ステアリングはぼんやりしている……悪夢のように聞こえるだろう? しかし、結論を急ぐな。サスペンションの基本設計が正しいため、無理をしても行儀が悪い挙動にはならない。それが全体的な安心感と、優越感につながっているのだ。
現代の視点で見ると?
所有することは比較的簡単だ。メルセデス純正およびサードパーティの部品産業が非常に活発だからだ。大切に扱われてきた個体であれば、高走行距離はSLにとって障壁ではない。
購入時に注意すべきは「錆」だ。ステアリングボックスの修理やサスペンションのブッシュ交換はいつでもできるが、SLにはボディの心臓部である「バルクヘッド(隔壁)」に錆びやすいという悪評がある。購入前に専門家に見てもらうこと。さもなければ、ダッシュボードまで取り外す大手術が必要になるかもしれない。
1980年、そして1985年と防錆処理は改善されているので、後期型の方が有利だ。
結論を頼む
この世代のSLは、「中古車の安っぽさ」というフェーズを通り越して、新車からそのままクラシックカーになったような車だ。流行を追わず、実直で優雅。類を見ないほどの工学的深度が、この車を長生きさせている。
どんな道に連れ出しても愛おしい一台だ。派手でも、騒がしくも、馬鹿げたほど速くもない。だからこそ、自分自身がそうなることを防いでくれる。クラシックロードスター界における「大人」の存在なのだ。
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新車にリースで乗る 【KINTO】
=海外の反応=
「メルセデスSL。これは、急ぐ必要がない人たちのための公式車両だ。なぜなら、彼らは『他人が自分を待っている』ような立場の人たちだからね。他人が自分を待ちわびている間に、自分は休息して気楽に到着すればいい。だってあなたは最高であり、最高を受けるに値する人間なのだから。そして、最高のもの(SL)を買ったのだからね」
「ところが、ダイムラーとクライスラーの合併(※1998年)以降、すべてが坂道を転げ落ちるようになり、二度と回復することはなかった」
「正直なところ、今のモデル(※新型R232型)は結構気に入ってるんだ。運転したことはないし、実物を見たことすらないかもしれないけどね。でも、以前のモデルのいくつかに比べれば、ずっと素敵に見えるよ」
「今のSLは2トンの戦車だ。年を追うごとに価値は下がり、数年後にはせいぜい1万ポンド(約210万円)の価値しかないだろうな」
「私は古いメルセデスが大好きだ。流行などお構いなしの、まさに『防弾仕様』さ。90年代後半にその魂を失ってから、二度と戻ってきていないと思う。ずっと一台欲しいと思っていたが、今ではかなり高価になってしまった。本当に愛すべき車たちだよ」
「SLは、アメリカ仕様の骨抜き版(※パワーダウンモデル)ならともかく、それ以外は高嶺の花だね。でも1980年代のSE系(※エンジンや仕様)なら、280モデルで妥協すればまだ手頃なクラシックカーだよ。V8はもっと金がかかるし、Kジェトロニック(※当時の燃料噴射システム)をEFI(電子制御燃料噴射)に改造する費用として少なくとも3000ポンドはプラスしておかないと、エンジンが不調で無駄食いする羽目になるぞ」
「あの頃のメルセデスは、スイスの銀行の金庫みたいに長持ちするように作られていたから、みんな愛しているんだ。とんでもない距離を走れても、毎朝ちゃんと始動して、すべてが新品のように感じられた。SL R107は美しく時代を超越した車だし、内装はシンプルなのに造りの良さが際立っている。間違いなく名車だよ。今のメルセデスを見ると皮肉な話だけどね」





