リターンライダーするなら情報をアップデートすべし! 最新世代のハーレーダビッドソンは精密機械を実感できる乗り味だった。
外車限定の車買取サービス【外車バトン】
TECH::CAMP【エキスパートコース】 集客プロモーション
アメリカ大統領が日本に対して「アメ車が売れていないのはおかしい」と指摘すれば、日本の自動車ファンが「アメ車は魅力がないからだ」と反発するのは、何度も見てきた光景だが、四輪でいえばジープ、二輪ならハーレーダビッドソンといったブランドは日本での評価が高い。はたして、最新のハーレーダビッドソンはどうなっているのか…そんな好奇心からハーレーダビッドソン2025年モデル試乗会に出向いた自動車コラムニストが見たものとは?
いまさら説明することもないだろう、「ハーレーダビッドソン」とはアメリカンモーターサイクルの象徴といえるブランドである。足を前に投げ出すようなライディングスタイル、空冷Vツインエンジンの独特の鼓動や排気音にはアメリカンというカテゴリーのステレオタイプともいえる。
しかし、ハーレーダビッドソン2025年モデル試乗会に訪れた筆者の目に入ってきたのは、そのような伝統的イメージを受け継ぐモデルだけではなかった。もちろん、Vツインエンジンを積むクルーザーモデルも充実しているが、目を惹かれたのは「スポーツスターS」という最新世代のハーレーダビッドソンを象徴するモデルだった。
「スポーツスターS」において、なによりハーレーダビッドソンのイメージが変わるのは、エンジンに空冷フィンが見当たらないこと。リアタイヤを覆うフェンダーもないスタイルは名前の通りにスポーティな印象を強めている。エキゾーストがハイマウントデザインとなっているのも典型的なハーレーダビッドソンとは異なるスタイルを表現しているポイントといえそうだ。
2025年モデルではブラックアウトされたVツインエンジンは水冷(ハーレーダビッドソン流に記すと“液冷”が正しい)のRevolution Max。ボア×ストロークは105mm×72.3mmで総排気量は1252cc、最高出力90kW(121HP)、最大トルク125Nmとなっている。この数字自体は排気量からすると驚くほどではないかもしれないが、いざ右手のスロットルを回したときのフィーリングには心底驚かされた。
最新世代のハーレーダビッドソンと初対面となった筆者の中には「ハーレーダビッドソンのVツインエンジンはトルクフルでもレスポンスは平凡な部類だろう」という先入観があった。しかし、そうした思いは走り出した途端に完全に間違っていると教えられた。4インチ液晶フルデジタルのメーターが示すエンジン回転数が、右手のわずかな動きにも反応しているのが確認できたからだ。
試乗の舞台となったのは、横浜みなとみらい地区。推奨コースは赤レンガ倉庫から山下公園を眺めて大黒埠頭へ向かうといったもので、どこか異国情緒というか、海外貿易の今と昔を感じさせる設定となっていた。そういえば、2025年5月10日~11日には日本最大級のハーレーイベントである「ブルースカイヘブン」が山下埠頭で開催されるわけだが、港町とハーレーダビッドソンは本当によく似合う。
こうした一般道を流れに乗って走るといったシチュエーションだったが、前述したハイレスポンスを確認すべく、あえて1速固定で走ってみた。カタログスペックで228kgと軽量なボディに前述した1252ccの高性能エンジンを積むスポーツスターSであるから、スロットルの微妙なコントロールができなければギクシャクとしてうまく乗れないはずだ。
いうまでもないだろう、スポーツスターSは1速固定でもスムースに走ることができた。感覚的なスロットル開度でいうと1度単位での操作でもしっかりエンジン出力の違いを実感することができた。スポーツスターSにはトラクションコントロールなどの電子制御も充実しているのだが、そうした電子デバイスが作動しない領域での思い通りに操れるエンジンを生み出しているのが、最新世代のハーレーダビッドソンというわけだ。
ライディングモードを“スポーツ”に切り替えると、今度は荒々しいまでの加速を感じることができる。正直、慣れるまではスポーツを選ばないほうがいいのでは? と思うほど刺激的に変身する。さらに、ウェット路面に合わせたレインモードも用意。まさに最新の電子制御エンジンらしい楽しみを備えている。
右手のフィーリングで感心したのはスロットルのレスポンスだけではない。ブレーキレバーを握ったときのリニアリティも非常に高いものだった。ハーレーダビッドソンというと、どこか緩い乗り味を想像しているかもしれないが、スポーツスターSは止まる機能もスポーツの名にふさわしいフィーリングを実現しているのだ。
あらためてブレーキシステムを眺めてみると、前後ともブレンボのシステムが備わっている。とくにフロントは剛性感を高めるラジアルマウントとなっており、しっかりとしたブレーキフィールは、レベルの高いハードウェアが生み出していると理解できる。ちなみに、フロントサスペンションが倒立フォークとなっている点もスーパースポーツ的な設計思想を感じさせるところだろう。
両足を前に投げ出すようなライディングポジションにハーレーダビッドソンの世界観をビンビンに感じることのできるスポーツスターSだが、走り味や機能面では日欧のスポーツモデルと比べても見劣りしない。スポーツバイクに乗ってきたベテランライダーがハーレーダビッドソン的な世界を味わう最初の一台として最適といえそうだ。1,998,800円という価格設定も、そうしたニーズにジャストフィットすると感じた。
もう一台、「リターンライダーにおすすめしたい」と心底感じた最新世代のハーレーダビッドソンを紹介しよう。それが「X350」である。ハーレーダビッドソンに乗るとなれば大型二輪免許が必須と思うかもしれないが、X350は総排気量353ccのパラレルツイン(直列2気筒)エンジンを積んだモデル。つまり普通二輪免許で乗れるハーレーダビッドソンなのだ。
エンジンスペックは最高出力27kW(36HP)、最大トルク31Nmとけっして目立つものではないが、驚くのは全域にわたる粘り強さ。市街地では4速に入れっぱなしでも思い通りに加速できるほどであるし、6速を使ってもエンジンが無理をしている感覚はない。ある意味、ずぼらなライディングができてしまう懐の深さがある。
ハーレーダビッドソンには名前の響きからも“ハレ”なブランドイメージがある。「今日はハーレーに乗るぞ」と気合を入れなければならない…と思いがちなところもあるが、ことX350に関していえば「毎日乗れるハーレー」と表現したくなる。699,800円というフレンドリーな価格もうれしい。
だからこそ「リターンライダーにおすすめしたい」のだ。バイクに乗ることが特別な行為ではなく日常になるのがX350である。そうしてバイクのある生活にリターンした上で、よりディープなハーレーダビッドソン的世界に踏み込んでいきたくなったら、いよいよ大型二輪免許を取得してみるとステップを踏むのはいかがだろうか。
文:山本晋也