プレミアムミッドサイズSUV電気自動車のQ6 e-tronおよびスポーツグレードのSQ6 e-tronが発表された。アウディがポルシェと共同開発したBEVプラットフォームPPEをベースにした初の市販モデルであり、アウディの電動化戦略における重要な一歩となる。
プレミアムミッドサイズSUV電気自動車のQ6 e-tronおよびスポーツグレードのSQ6 e-tronが発表された。Q6 e-tron(後輪駆動)が839万円、Q6 e-tron quattroが998万円、SQ6 e-tronが1,320万円となる。Q6 e-tron edition one grey(1,238万円)とedition one blue(1,253万円)を限定販売。発売は、4月15日から。このモデルは、アウディがポルシェと共同開発したBEVプラットフォームPPEをベースにした初の市販モデルであり、アウディの電動化戦略における重要な一歩となる。
フォルクスワーゲン グループ ジャパン 株式会社 代表取締役社長兼アウディ ブランド ディレクター マティアス シェーパース氏は、「日本市場は、電気自動車に最も向いていると思います」と語った。その理由は、ドイツと違ってアウトバーンがなく、そんなに長距離は走らないし、住宅街では、隣近所に騒音で迷惑をかけたくない気持ちが強いからだという。確かに、そういった傾向はある。けれども、EV市場の普及率は2%と、まだ低い現状であり、世界的なEV市場の成長とのギャップにも言及した。そこを打開すべく、アウディジャパンは、魅力的なEV商品の導入、充電インフラへの投資(プレミアムチャージングアライアンス(PCA)の拡充、Audi charging hubの設置、レクサスとのローミング連携など)、ディーラーとの連携強化の3つの柱を中心に事業を展開してきたと説明した。今後も魅力的なEVモデルの導入を予定しており、プレミアインポートEV市場でのナンバーワンを目指す方針を示した。
続いて、マーケティング部の丹羽 智彦氏から、Q6 e-tronについて説明があった。PPEプラットフォームの採用による性能向上とエネルギー消費の低減は今回の発表で最も重要な部分といえるだろう。アウディはこれまで3つの専用プラットフォームを展開してきたが、Q6 e-tronは4つ目の新しいプラットフォームであるPPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)を採用している。PPEでは、高度に統合されたコンポーネントをコンパクトに設計しており、様々な革新技術を採用することで、性能の向上とともに消費エネルギーを低減している。PPEの採用により、Q6 e-tronはシステム最大出力185kWからSQ6 e-tronの360kWまで、幅広いラインアップを可能にしている。PPEをベースとした初の市販モデルシリーズであり、洗練されたアウディのSUV、Qモデルのスタイルと、e-tronのデザイン言語を融合させた次世代電動SUVであると述べられている。PPEの採用により、長いホイールベースと非常に短いオーバーハングを特徴とし、アウディのSUVであるQモデルならではの力強くダイナミックなシルエットを形成している。PPEの柔軟性を活かしながら、アウディのDNAと個性を組み込み、電動ラインアップ拡充の新たな原点となるモデルであると説明された。PPEの採用により、広々としたスペース感覚と居住性を両立し、高い実用性を実現している。Q6 e-tronのPPEでは、電子アーキテクチャーE3 1.2が採用されており、これは5つのハイパフォーマンスコンピューティングプラットフォーム(HCP)を備えている。これらのHCPが、ドライブ、ダンパー、ドライバー安全システム、インフォテインメント、ヘッドライトなどを制御し、緻密な技術を正確に実現している。PPEでは、足回りに対しても新たな技術が採用されており、サブフレームに固定されたステアリングラックと洗練されたアクスル構造により、ステアリングの挙動とドライビングパフォーマンスを向上させている。また、PPE採用モデルとして初めてFSB(フリークエンシーセレクティブダンパー)システムを採用し、快適性とロードホールディング、ドライビングダイナミクスと安定性を向上させている。
優れた走行性能と充電性能を両立し、Q6 e-tronは500km以上、SQ6 e-tronでは最長672kmの一充電走行距離を実現。0-100km/h加速は、後輪駆動モデルで7.0秒、quattroモデルで5.9秒、SQ6 e-tronで4.3秒(ローンチコントロール使用時)だ。エクステリアデザインでは、完璧なプロポーションのSUVを目指し、スプリットヘッドライト、クローズドシングルフレームグリル、クワトロブリスターなどのデザイン要素がある。デジタルライトの進化、8つの選択可能なライトシグネチャー、ダイナミックライト、コミュニケーション機能など、愛着が湧きそうなライトシステムである。ドライブシステムは800Vアーキテクチャー、急速充電能力、回生ブレーキシステム、モーター構成(quattroモデルはフロントにASM、リアにPSM)など。電子アーキテクチャーは、E3 1.2と5つの高性能コンピューター(HCP)による車両制御が行われている。シャシーはサブフレーム固定ステアリングラック、洗練されたアクスル構造、FSB(フリークエンシーセレクティブダンパー)システムによる優れた乗り心地とハンドリング性能となっている。MMIパノラマディスプレイ、MMIパッセンジャーディスプレイ、ARヘッドアップディスプレイなどの最新の車載技術も搭載。標準装備のAudiサウンドシステム、オプションのBang & Olufsen 3Dプレミアムサウンドもある。
e-tronシリーズの新車購入者は、PCA(プレミアム チャージング アライアンス)の利用登録後1年間、月額基本料金と都度充電料金が無料になるという特典もある。アウディは、数年前から「プレミアム チャージング アライアンス(PCA)」をスタートさせ、アウディ、ポルシェ、フォルクスワーゲンの全ての拠点で、現在ほぼ完成形の充電ネットワークを構築している。このネットワークは375拠点に及び、アプリを通じて利用可能だ。
特筆すべき点として、レクサスとのコラボレーションが発表されており、2024年7月以降、お互いの充電ネットワーク(レクサスとPCA)をローミングによってシームレスに利用できるようになった。ただし、これは「ローミングパートナー」という形であり、PCAアプリでレクサスの充電スポットが、レクサスのアプリでPCAのスポットが利用できるようになるということだ。シェーパー氏は「レクサスが150kWという急速充電戦略の重要性を理解したと考えており、価値観が合致した結果、日本で最も早い充電ネットワークを協力して構築し、顧客の利便性を高め、EVの魅力を伝えていきます」としている。将来的には、PCAとしてメリットがある場合、他のブランドとのローミングパートナーシップを拡大していくことも視野に入れているということだった。アウディが独自に投資して開設した充電ステーション「Audi charging hub」(紀尾井町)について、興味深いデータが示されている。2023年4月から12月までの実績として、約4割がプレミアム チャージ アライアンス以外の、つまり他メーカーの顧客に利用されているとのことだ。この事実は、高性能な急速充電ステーションに対するニーズが、アウディ、ポルシェ、フォルクスワーゲン以外のEVオーナーにも相当数存在することを示唆している。この結果を受け、アウディは今後も継続的にこのような取り組みを進めていきたいと考えているようだ。また、アウディのディーラーに設置されている充電ステーション(パワーヘルスチャージングステーション)についても、アウディの顧客だけでなく、他メーカーのEVオーナーも利用している状況が伺える。
これらの情報から、アウディは自社だけでなく、他社との連携を通じて充電インフラの拡充を図っており、実際にアウディの充電ステーションは他のブランドのEVオーナーにも利用されている状況が明らかになった。アウディは、このような状況を踏まえ、よりオープンで利便性の高い充電ネットワークの構築を目指していると考えられる。もちろん、Q6 e-tronをはじめとしたEVの販売にも力を入れていくのだが、こういった充電インフラの拡充にも絶えず投資を行っていく姿勢に、環境課題の解決に向けて邁進していくアウディの哲学が感じられた。
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