アストンマーティン 新型ヴァンテージ GT3とロードカーの共通点とは?

鈴鹿のSUPER GTレースを前に、新型ヴァンテージ GT3の実車の特別展示が行われた。D'station Racingドライバーの藤井誠暢氏、チャーリー ファグ氏がヴァンテージの魅力を語る。

今年の2月に 新型ヴァンテージと同日に発表した、新型ヴァンテージ GT3の実車の特別展示が、アストンマーティン青山ハウスにて行われた。鈴鹿のSUPER GTレースに出走する実車とともに、D'station Racingドライバーの藤井誠暢氏、チャーリー ファグ氏もレーシングスーツに身を包み、メディアの前にさっそうと現れた。

ヴァンテージ GT3は、2018年にデビューし大成功を収め、最近生産終了となったヴァンテージ GTEおよびGT3の総合的な進化版となる。これらのモデルと新型ロードカーヴァンテージと同じ機械的アーキテクチャを採用するヴァンテージ GT3は、アストンマーティンの実績ある接着アルミシャシーを中心に組み立てられ、4.0リッターV8ツインターボエンジンを動力源とする。ノーズからテールまで一新された感動的なエアロダイナミクスパッケージ、全面的に見直されたサスペンション、最先端のエレクトロニクスを誇っていいる。

2024年に新設されるLMGT3カテゴリーを含め、FIA GT3クラスの全レギュレーションに適合する新型ヴァンテージ GT3はまさにグローバルで戦うことができるGTカーだ。FIA世界耐久選手権(WEC)、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(IMSA)、ファナテックGTワールド チャレンジ、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)、ニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)など、世界で最も競争の激しいGTシリーズに挑む。

ヴァンテージ GT3はアストンマーティン・レーシング(AMR)とアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)の初めてのコラボレーションから誕生した。

外観的には、ヴァンテージ GT3は新型ヴァンテージの目を見張るデザインと、レーシングドライバーやファンの間でGT3レースの人気を高める要素ともなっている、ダウンフォースを発生させるための過激なエアロダイナミクスを組み合わせている。数値流体力学(CFD)の広範な活用によってFIAのダウンフォース規制の枠内でエアロダイナミクスの性能・効率性目標を達成する一方、アストンマーティンのデザイン部門の貢献により、純粋に機能的な要件に合った完全なフォルムが実現した。

ロードカーであるヴァンテージの筋肉質の特徴的なデザイン言語 と、サラブレッドのレーシングカーの他を圧倒する攻撃性と身のこなしの両者を備え持つ一台だ。中でも特に目を引くのが新しいノーズである。新型ヴァンテージで広くなったグリルは見た目が素晴らしいだけでなく、AMRはそれによってダクトでブレーキに流す冷却用空気の量を増やし、より安定したパフォーマンスを確保している。

ノーズそのものはカーボンファイバー製の大型の一体型クラムシェルで、クイックリリース設計でレース中のアクシデントで損傷した際にすばやく取り外し・交換ができる。幅全体に広がるレーザーライトのほか、スプリッターを短くすることで圧力の中心を後方にずらし、ピッチ感度を下げて安定性を向上させている。フロントホイールアーチの上の大きなルーバーは高圧の空気を逃してリフトを低減し、さらに多く用意されたリアアーチのルーバーで高圧を逃してドラッグを低減する。

幅広い適合性を持つ新型ヴァンテージ GT3は、世界中で拡大を続ける見事な顔ぶれのAMRパートナーに選ばれる車となっている。長年のAMRパートナーであるハート・オブ・レーシングや、今回のDステーション・レーシングに、ドイツの ヴァルケンホルスト・モータースポーツ、ベルギーのコム・トゥ・ユー・レーシングなどが新たに加わっている。既にヴァンテージ GT4パートナーチームであるフライング・リザード・モータースポーツも、米国でヴァンテージ GT3にステップアップする。2024年シーズンが終わるまでにレースに参戦するヴァンテージ GT3は30台に上ると想定されている。

発表後すぐ好評を博したことは、AMR製のこのマシンにとって最高の後押しとなるだろう。既にロレックス・デイトナ24時間への出場を果たし、今年のニュルブルクリンク24時間、スパ・フランコルシャン24時間、そして最もアイコニックなル・マン24時間でも勝利を目指して戦うことが予定されている。

2012年に世界の檜舞台に躍り出て以来、いくつもの世代を通してアストンマーティンはGTレースの最高峰で一目置かれるべき存在として君臨し続けてきた。WECデビューで勝ち取った最初の優勝を含め、52回のクラス優勝、11回の世界選手権タイトル獲得、その他数多くの国内・国際大会での勝利という途方もない成績で、ヴァンテージの名はGTレースの勝利の代名詞となっている。その伝統は、新型ヴァンテージ GT3によって受け継がれることになる。

藤井氏、ファグ氏に伺った。
―コースでの攻略ポイントなど、鈴鹿での戦略について教えてください
藤井:鈴鹿は本当世界でも有数のテクニカルサーキットですし、スピードレンジも非常に高い中高速なので、高い速度でも安定して走れるというのが、速さにつながります。新型のヴァンテージになってから、5月上旬にテストがあったんですけれども、エアロが変わってダウンフォースが増えたことで、高いレンジのスピードでも非常に安定感がありましたので、かなり鈴鹿とマシンとの相性はいいんじゃないかなというのを感じています。期待してください。
ファグ:私は、2週間前のタイヤテストで初めて鈴鹿を走りました。富士スピードウェイとはまったく違うサーキットで、幅も狭く、スピードも速いので、タイヤにとっても少しハードなサーキットだと思います。
ですから、タイヤテストに参加して多くのことを学ぶことができたのは本当に助かりました。私にとっては、タイヤテストからプラクティスへとつなげていくことが重要なのです。レースではタイヤテストのときの走りを続けて、安定したタイムアウトが取れるように頑張ります。
―旧型に比べて、新型ヴァンテージ GT3の改善点について印象的なところを聞かせてください
藤井:フロントエンジンの車なので、一般的にバランスという点では、後ろが少し不足するというのが一般的なんですけれども、新型ヴァンテージ GT3は、リアのスタビリティというのを非常に意識した作りになっています。ですから、フロントエンジンなのですが、リアが軽く感じないというのは、車両のバランスが取れているというのが大きなアドバンテージです。そしてブレーキングもさらに良くなっているので、本当に我々プロドライバーだけじゃなくて、ジェントルマンドライバーの方々にもおすすめです。アマチュアドライバーの方が乗った時の印象も実際に非常に良いという声をたくさん聞いているので、そこも大きなアドバンテージですね。誰が乗ってもオールマイティに運転がしやすく、高いレベルで攻められる車になっています。
ファグ:藤井さんと似たフィードバックになってしまいますが、このクルマは常にフロントエンドのグリップ、特に高速でのグリップが素晴らしかったのです。しかし先代のクルマでは、フロントエンドに比べてリアエンドがわずかに不足していたように感じていました。今回の新型では、その点が大幅に改善されています。よりドライバブルになり、そして、アマチュアドライバーにも運転しやすくなっているのです。誰もがこのクルマをより安定したタイムで楽しむことができます。ドライビングの幅が広がったと言えるでしょう。
―公道仕様の新型ヴァンテージにおいて、ヴァンテージ GT3との共通点はどのようなところに感じますか
藤井:基本的にこのGT3のレーシングカー自体は、その生まれがロードカーなんですよ。ですからレーシングカー専用やハイパーカーみたいな車ではないので、そのベース車が良いか悪いかというのは非常に大事なのです。そういう意味では、今我々が乗っている新型ヴァンテージのロードモデルは、素性がすごく良いので、同じようにレーシングカーのポテンシャルを秘めていて、ドライバビリティが非常に高くて、かつ運転を楽しめるクルマです。アストンマーティンというブランドはスポーティーなんですけれども、やっぱりラグジュアリーにも乗れるクーペという感じがありますから、ただアグレッシブに攻めるということではありません。運転をする人を楽しませながら、高級レストランにも乗っていけるというクルマです。特に新型は見た目も大きく変わったので、アストンマーティンのヒストリーと、新しいジェネレーションが融合されたような顔つきじゃないですか。レースカーも非常にかっこいいんですけれども、ロードカーも非常にかっこいいので、私もすごく気にしています。
ファグ:ヴァンテージのロードカーをサーキットでも公道でも走らせたことがあります。ですから、両者には多くの共通点があると感じました。まずコックピット。レーシングカーはコックピットからして違うし、ステアリングもペダルも違います。でも、ロードカーでも、レーシングカーにとても近い感覚を得ることができるのです。そして、まるで本当に、期待通り、本当に素晴らしいラグジュアリーなクルマに乗っているような気分もさせてくれます。私にとっては、サーキットでも走れるし、街中の高速道路でも楽しめる究極のスポーツカーなのです。素晴らしいパフォーマンスと同時に、極上のスタイルと快適性も兼ね備えているので、ドライバーにとっても最適の一台でしょう。
―アストンマーティンというブランドに対して、どのような思いを持たれていますか
藤井:イギリスのブランドとして長いヒストリーがあって、車の生まれもモータースポーツとすごく密な関係があります。今はフォーミュラ1でも活躍していますが、一方で私も参戦したル マン24時間という歴史のある耐久レース、ロードカーベースのGTレースにおいては、様々なブランドがある中でも非常に長い歴史を持つブランドの一つです。ブランドの価値というところで言うと、常にモータースポーツとも密接に関わっている状態で車の開発が行われてきたおかげで、ポテンシャルが高く、ブランドのヒストリーが柱にあり、そのところが魅力だと思います。
ファグ:私もイギリス人として、アストンマーティンにはとても親しみを感じています。英国にあるスーパーカーの定番ブランドのひとつですね。このブランドの素晴らしいところは、長い歴史を持っていること。ジェームズ ボンドの映画などをよく見ていた頃を思い出すよ。私がレースを始めたときの、ル マンで勝利したGTE Proは印象的でした。世界中でアストンマーティンはレースに参戦するようになり、今、F1でも素晴らしいパフォーマンスを発揮しています。これだけの歴史を持つメーカーが、GTからF1までさまざまなカテゴリーで開発し、パフォーマンスを発揮し続けているのは素晴らしいことです。これだけの成績を残すのは容易なことではありません。このブランドはとても象徴的であり、これからもそうあり続けるだろうし、私がその一員でいられることをとても誇りに思っています。

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