ベントレー コンチネンタル GT長期レポート4:いよいよ納車

スペシフィケーション:

ベントレー コンチネンタル GT W12

エンジン:
5945cc W12気筒ツインターボTSI アクティブAWD 635ps 900Nm

燃費:
8.2km/L,278g/km CO2

パフォーマンス:
0-100km/h 3.3秒 , 333km/h

重量:
2260kg

価格:
27,335,000円/200,345ポンド(3,070万円) テスト車両/月額46万円

どんなルックスなのかは、もちろん分かってる。だって、スペック選びに何時間も悩んだし、ピストンのとりつけから最終承認の瞬間まで、すべての工程を工場で追って来てんだから。ホースをねじこんだり、ボルトを締めたり、車体やウッドパネルやレザーを磨いたり、もう二度と日の光を浴びることがないであろう部品を拝んだりしてきた。文字通り、裏から表から全てを知ってる。唯一知らないものと言えば、ナンバープレートくらいだ。

だけど、まだナーバスなんだ。カラーだよ、分かるだろ。ヴァーダント、暗すぎたか?トラディショナルすぎなのか?正直、まだ気になってる。自分はそこまで伝統を重視するタイプの人間じゃないんだけどさ、グリーンのボディにレッドの内装をしたコンチネンタル GTだよ、これじゃまるで、90年前にベントレーボーイズが乗ってたスピードシックスを復刻させたようなもんじゃん。知り合いのカメラマンたちが言うには、ヴァーダントは直射の元では素晴らしい色だけど、日が沈んでからあの色のクルマを撮影するのは「悪夢」だって。うん、確かに、とっても暗い。「悪夢」ねぇ、陰でそんな風に言われちゃうのか、やだなあ。

生産ラインで作業できたのは、すごく面白い経験だったと思う。ビビったり、顔をしかめたりすることもいっぱいあったけど、感銘を受ける場面が結構あったし。そう言えば作業員の誰かが、ブラックがコントラストに使われたアルペングリーンのボディが本当の「究極」なんだって教えてくれた。「究極」?気になったんで、さっそく後でどんな見た目なのか調べてみたんだけど、これがなかなかのいい感じ。とっても気に入っちゃった。え?それって僕が究極にヤバいってこと?マジか?マジなのか?

考えれば考えるほど、神経がすり減っていく。いろいろ考えを巡らせているうちに、テムズ川沿いのパンボーンにあるベントレーのディーラーに到着した。幕で覆われたコンチネンタル GTらしき物が、いかにも最高級なオーラをムンムンに漂わせてショールームに鎮座してる。セールスマネージャーのイアン ルイスがコーヒーをすすめてくれた。これ以上、神経を刺激するのはいかがなものだろうかとも思ったけど、せっかくだから頂くことにした。未だに一番人気なのはボディもキャビンもタイヤも黒+黒+黒のオールブラックだってことだとか、クーペよりコンバーチブルの方がよく売れてるってことだとか、コンバーチブルでもグリーンのは滅多に見ないってこととか、コーヒー片手に僕らはいろんな世間話をした。彼は僕のチョイスもべた褒めしてくれた。でも、若干の間があったような?

とはいえ改めて考えると、新車の仕様を一から決めることができるなんて、どんだけ恵まれたポジションなんだろう。しかも、それがベントレーであってもダチアであっても、どれだけ金がかかろうと、僕は最後にただ首を縦に振るだけで、フィックスされてしまうんだ。今んとこ、まだ瞬時にチェンジできる塗料は発明されてないけど、こっちは天下のベントレーなんだぜ?オプションに事欠く心配なんていらないんだから、恵まれてるにも程がある。でも、ってことはつまり、選択肢のなさを言い訳にすることはできない…。できあがったクルマは、その人の個性をモロに反映させたものになるって…。マジか。

コンチネンタル GTを覆ってた幕が引かれた瞬間でさえ、どこに立ってればいいのか分かんなかったなんて、僕がどんだけオロオロしてたか察しが付くだろ?どうも頭の中で「ああでもない、こうでもない」って、ごちゃごちゃ組み立て過ぎたみたい。そんなナーバスな僕をよそ眼に、営業チームは僕らがこのクルマに満足できるよう、ありとあらゆる事をしてくれる気満々だ。ほんのちょびっとだけ、演技じみてたものを感じた気もしないでもないんだけど。

幕はマジシャンがやるみたいに一気に引かれ、次の瞬間そこには念願のコンチネンタル GTが!…全然暗くない。ただステルス的に重々しいだけ。派手さは一切なく、筋骨隆々とした堂々とした佇まい。あからさまに目を引くような感じじゃないけど、実はさりげなくキャッチーだった。「見た瞬間、畏敬の念が込み上げてきた」とまでは言わないけど、急激に心拍数が平常レベルに戻ったのは確か。

クルマを日の光が当たる所まで移動させると、もっと嬉しいことが判明!濃いグリーンだよ、これが思い描いてたグリーン! 赤いクリケットボールみたいな赤茶色のレザーを使った内装。これは見た瞬間、リスペクトが込み上げてきたね。あれにして正解だったよ。コントラストのリネンのステッチは思ってた位置より短めで終わってはいるんけど、車内の雰囲気はすごくいい、サイコーじゃん。僕が決めたとこ以外のこういった細やかな仕事は、すべてベントレーがやってくれた。スマホ接続のことから、ナビのことから、室内の間接照明のことまで、クルマのシステムについて一通り説明を受ける。わかんないことがあったら連絡しておいでって。それでおしまい。僕は、生まれたばかりの一人目の我が子を乗せて病院の駐車場から自宅に戻った時みたいに、やさしく丁寧にディーラーの駐車場からコンチネンタル GTを出した(二人目のときは…、ホールデンのモナーロをターボでぶっ飛ばして連れて帰った。でもね、あれには「虫に思いっきり噛まれてた」って正当な理由があったんだよ)。

フルデジタルなメニューシステムが複雑そうだったんで、かわりに4,770ポンド(72万円)の回転ディスプレーを使って、3つのアナログなダイアルを表示させた。僕には、こういうのがいいんだな。見た目も愛らしいし、シンプルで使いやすい。どうもデジタルのにはいろんな機能が付きすぎてて、気が散っちゃうんだ。

えーっと、他には何があんのかなー?頑張ってオプションを7つまでに抑えたってのに、それでも全部で36,375ポンド(545万円)もしたんだよ。金食い虫トップ2を教えてあげよう。まず、ぶっちぎりで高かったのはマリナー ドライビング スペシフィケーションで、10,045ポンド(150万円)。正直僕はこれ、そこまでの値打ちがあるようには思わないんだよなあ。22インチのホイールは別として、ほかはダイナミクスやメカニカルな点でノーマルとの大きな違いが感じらんないから。でも、内装にはメタル製のペダルとオイル&燃料フィルター、それにベントレーB刺繍のエンブレムと、ダイアモンドステッチが使われてる。これは欲しかった。ってことは、このコンチネンタル GTには310,675ステッチがあるってことだよね、そっか。310,675だよ、すごくない?1ポンド(150円) で31ステッチって計算か。こりゃすごい価値がある。

次の金食い虫は、コンサートホール級の音が楽しめるって言うNaimのサウンドシステム。これに、6,595ポンド(100万円)をぶっこんだ。ああ、自分でも分かってますよ、バカだってね。でも、それだけつぎ込んだ価値は絶対にある!こないだ、まとまった休みを使って、14歳の息子と一緒にこのクルマで南部のドーセットまで行ったんだ。そ、14歳。彼はクルマにドはまりしてる。僕らは一番重低音がきく道だけを選んで走った。あのシステムが一番嫌うような道でさ、あれはかなり興味深かったねぇ。おもろかった。って言うか、サイコーだった!爆笑したり、キャッキャ言ってはしゃいだり、歌を歌ったりもしたんだ。コンチネンタル GTのおかげで、すごいいい旅をさせてもらったよ。どれも新しい経験ばかりでさ、ずっと記憶に残るはず。

次の日、湿ったビーチの長い散歩を終えて車に戻ろうとしてた時、前にいたカップルの会話がチラッと聞こえてきたんだ。「俺、あれとおんなじやつにしたい」って彼氏が言うと、「あの色、すごく素敵だもんね」って彼女。もう、うれしかったのなんのって。その日の気分はサイコー!

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