ベントレー コンチネンタル GT長期レポート2:ベントレー コンチネンタル GTの塗装にトライ

スペシフィケーション:

ベントレー コンチネンタル GT W12

エンジン:
5945cc W12気筒ツインターボTSI アクティブAWD 635ps 900Nm

燃費:
8.2km/L,278g/km CO2

パフォーマンス:
0-100km/h 3.3秒 , 333km/h

重量:
2260kg

価格:
27,335,000円/200,345ポンド(3,070万円) テスト車両/月額46万円

「トップギアでプランニングした」コンチネンタル GTの詳細を決めたのが、5か月ほど前。もちろんその間ベントレーからきちっと連絡はあったけれど、いろんな事情が重なってしまい、あれからずーっと宙ぶらりん状態にされてて、おかしくなりそう!もうとっくに注文は完了したってのに、カラーやホイールやレザーについて、いいや、すべてについて、別の候補が頭をよぎるんだ。ふと気づくと、ほぼ毎日パソコンに向かってコンフィギュレーターをいじっちゃってる僕。ダメだダメだ、もう考えたって遅い。だって、今日はドイツのライプツィヒからトラックに乗ってシャシーとボディシェルが届く日なんだから。あとは組み立てるだけ。

というわけで、今からみんなをステップバイステップの組み立て作業ツアーに案内しよう。僕にはそれができちゃうんだな、だってクルーで実際に作業しちゃったんだから。木を寸法通りに切ったり、レザーを塗ったり、W12エンジンにシリンダーを落としたりと、本物の組み立てラインでクルマの全行程を追ってきたってわけ。ここは人呼んで「ベントレー トップギア ライン」、ってとこかな。僕の主な仕事は2つ、「ほかのみんなの邪魔をしないこと」、それと、「あちこちに行ってボルトを締めること」。考えたんだけど、これってベントレーにしたら相当ラッキーなことじゃないか?何かあったら全部僕のせいにすればいいんだからさ。

初めの行程は、塗装だよ。

ベンテイガのホイル包みが送られてきた!

ウッド&レザー部門は、ベントレーラインで作業員がより多く充てられている部署で、24時間体制の稼働だ。塗装部門を含むほとんどの他の部署は、朝7時から始まる。これが一番最初に届いたやつだよ。銀色のホイルに包まれたベンテイガ!わずかに磁気を帯びてるから、空気中のホコリやチリを吸着しちゃう。だから、空気をきれいにして、塗装のシミを防ぐんだ。

シームシーリング(継ぎ目充填加工)

届いた車両のボディにはEコートが施されてる。Eコート、すなわち「電気亜鉛メッキ技術」とは、鉄素地を亜鉛メッキ浴に浸けて電解することで塗装を剥げにくくするって工法。なんでも、電圧が高いほど薄く被膜ができるらしいんだけど、それはドイツがやる作業なんで…。

このラインですることは、シーラントを使ってボディの合わせ目の隙間部分をふさぐこと。まずロボットが正確に目地にシーラントを吹き付けて、その後、溝が深いとことか、丸身を帯びたとことか、角度がきつめの角なんかの細かいとこの調整を、人間の作業員が手作業でハケを使って行う。でも、どれほど「自分、器用っす!」って人がいようと、ロボットの正確さには到底及びっこない。ちなみに、一台の車につき使われるシーリング剤の量は計8.5kg。

下地処理と準備

ベントレーの塗装場は、今ちょうどアップグレードされてるとこなんだ。これまでに5,000万ポンド(75億円)がつぎ込まれてて、主な目的は塗装のスピードアップ。 組み立てラインでは日に44台ものコンチネンタルが仕上がるってのに、今の塗装ゾーンでは35台しか塗装できないんだよ(コンチネンタルとベンテイガだけね)。

新しくなった部分はより自動化が進んでるんで、一度下塗り作業が済んだ車両は、あと2工程が済むまで再度お目にかかることはない。はじめにロボット2台がベースとなるプライマーを塗っていく。色はブラック、グレー、ホワイト、レッドの4種類のうちのどれかで、選んだトップコートの色によってどれが使われるのかが決まる。トップギアの今回チョイスしたヴァーダントにはブラックの下地だって。塗り付けが済んだら、塗装と乾かし、シーラントを硬化させるために160℃で37分30秒焼きつける。

37分「30秒」って、なんでこんなきっちりしたタイミングなのかって?工場内では、すべてが「takt時間」ってので進められるんだ。taktはドイツ語で本来「指揮者が持つ棒」を表すんだけど、生産現場では「メトロノームみたいに規則正しく物事が進められる」って意味で使われるんだって。塗装場では、すべての作業が1takt=12分基準で行われる。焼きの作業にかかる37分30秒ってのは、3takt+ラインからラインへと移動させるのにかかる30秒(×3回)を含めた時間なんだ。

この時点で、すでにかっこよくない?でも、この後の展開が少し気になるな…。

サンディング

研磨サンディング、つまり車両に傷をつけてもいいんだ。僕がシーラント作業でみせた奮闘については口数少なかった作業員が、今回は「どうぞどうぞやって下さい!」って。誰でもいいんだってさ。サンディングする主な理由は二つ。一つはトップコートをより定着させるため、あと一つは下地を研磨すると表面がさらに滑らかになって塗装がはがれにくくなるからなんだ。初期段階での塗装ミスは、工程を経た後に響くからね。

表面には簡単に傷がつく。ブラックだった下地が、あっという間にグレーの粉状へと変わり、どこまで作業したのか一目瞭然だ。埃を最小限に抑えるため、天井からポンプで空気を送り込み、床では落ちた削りクズを吸い取る。これは、金も時間もかかる工程だ。車両全体の研磨には作業員6人がかりで12分がかかるし、週にだいたい5,900枚の研磨機のディスクを使うんだって!それから車は自動トンネルを逆戻りして、下地処理をしたところで下地クズや埃をきれいに洗い流されると、車体についた水を掃除機で丁寧に吸引されて、加熱乾燥される。

塗料の確認

これは僕には関係がないとこだったんだけど、正式な塗装の一工程として一応書いておくね。って言うかこの一角、塗料の入ったバケツが山ほどあって驚いちゃったよ。コンチネンタル GTが必要とする塗料は1台につき2.3kgで、それぞれ2.4kgずつが要る下地とトップコート(トップのラッカー層)より少なめ。

本塗装

ブラックの下地を使っていた下塗りのときとは違って、今回は実際の車両の色が散布されてくのがバッチリ見られる。てっきり時間をかけてメインカラーを何層か塗るもんだと思ってたんだけど、4体のトリフィド(架空の食人植物)みたいなロボットが、たったの12分でチャチャっと塗り上げちゃった。あ、ミュルザンヌとか、特注カラーやマット塗料を使うのクルマの場合はこうはいかないから。どれももっと複雑だし、ここではできないんだ。僕が初めに欲しがったマットグレー、あれの値段が23,000ポンド(350万円)だって言えば、だいたいの理由は察しが付いてもらえるかな。

うしろについてる黒いリングプルが見える?あの輪の中にロボットが「手」を突っ込んで車を持ち上げて、下側もちゃんと塗るのである。塗りが終わったら、また12分の焼き付けの工程。焼きあがったらクリアコート層が塗られて(これも非公開ね)、またまたまた12分の焼きの工程。

この時点でちょっと不安になってきた。塗装が思ってたより暗かったから。

真実の瞬間

塗装場に入って奥の出口から出ていくクルマを見送ってから最終点検の準備が整うまで、45分待たされることに。やっとボディシェルが薄暗い所からモノレールで運ばれてきた。あらためて見ても、やっぱり僕が希望した色より暗いような気がする。

最終点検

ま、これはこれでいっかぁ!っと、色について呑み込んだ僕のかたわらで、最終点検のチームが作業に取り掛かった。暖色系と寒色系の白い棒電球がいっぱい並んだ頭上の照明は、傷などの欠点が際立って見えるよう、できるだけありのままを照らし出す設計がなされている。どうやら、今いる作業員たちはルーフの点検だけが専門らしい。ボディシェルが進んだ先には、側面、ボンネット、トランク、ウィングなどなど、いろんな専門チームが待っている。

関わっている作業員の数と車体に残されたグリースペンシルの跡の多さに、あらためて驚愕した。ヴァーダントが、いかにトリッキーな色なのかが分かる。いろんな物質が混ざり合ってできた色ってことは、中で物質が弾けて気泡ができやすく、乾いた時にちいさな凹凸ができやすいことってことだよね。小さすぎて初めのうちは何もないように見えたんだけど、そのうち目がなれて、僕でも見えてきた。

磨き

一台一台が、丁寧に磨き上げられる。パッドが回転する磨き機を使って、浸透させていく…。

フラッフィングバフ研磨

ここで僕もお手伝いするぞー!写真のは、パッドがない磨き機。まだ回ってるのにボディから離したんで、飛んでっちゃったんだ。人の話はちゃんと聞くべきだね。しかし見事に天高く飛んだよ、フリスビーみたいにね。ここは慣れてる作業員に任せたほうがよさそう。あと数台が磨かれるのを待ってるから。

塗装ラインの果て

検査工程が全て終了したボディシェルはラインの突き当りまで運ばれて、ほかのパーツが組み立てられる間の1、2日を別棟の倉庫の中で過ごす。

今回お邪魔させてもらって一番驚いたことは、ハイテクばりばりなのに、多くの人間が作業に関わってるってこと。すべての作業が上のコントロールルームで行われて、ほぼ完全に自動化されてて、クルマに人間の手が触れることなんてほとんどないんじゃないの?って思ってただろうけど、工場内には作業員がいっぱいいた。でも、ここには、僕が選んだ「ヴァーダント グリーン」のボディシェルが、たしかにある。さてと、お次は12気筒エンジンの組み立てについてレポートするよ。

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