【トップギア試乗】ポルシェ タイカン クロス ツーリスモ:プロトタイプ EV

ポルシェみたいに見えるけど、バッジはいずこ?
これはタイカン クロスツーリスモのプロトタイプだ。リアの体重増加、オフロードパッケージ、ドライブセットアップの「グラベルモード」などによって、ポルシェが100%EVの市場のすべてを制覇できるような、これまでに出たどれよりもクールなものにする貴重な存在となっている。このクルマは、クロス ツーリスモの正式発表に先立ち、アメリカの海岸から海岸までをドライブし、大西洋を航海し(もちろん、船に乗ってるってこと。水中を歩いたり運転したりすることはできない)、スカンジナビアを経てイギリスに入った。通常、たいていのテストカーはこれよりも少し光沢があるように見えるが、コロナウイルスのディープクリーニングは別にして、このクルマの汚れはすべて物語の一部である。私たちは、エセックスの田舎の泥を使って、この汚れに、少しだが手を加えて、オリジナルなものにした。

ポルシェの面白いPR作戦だな。でもコレ、実車にほぼほぼ近いってことだよね?
その通りだ。「スポーツ クロノ」ゲージの代わりにコンパスが付いているのは、通常はタイカンのダッシュボード中央にあるもの。トップギア編集部員の多くは、ここで説明し切れないほど、スピードが出せる準オフロード向けエステートが好きなのだが、ネット上に上がっているレンダリング画像の数から判断すると、そういう趣味趣向の人は、私たちだけではないんだろう。3年前のジュネーブモーターショーで初公開された、ミッション E クロス ツーリスモのコンセプトを見事に実現したポルシェに乾杯!

最近出た「Porsche Unseen」というタイトルの本では、デザインスタディモデルが紹介されているが、それが示すように、ポルシェのデザイナーたちは、可能であれば全モデルのセミオフロード/ファストバックバージョンを作っているし、彼らのほとんど全員がオフィスの壁には80年代半ばの959 ダカールのポスターを貼っているはずだ。

OK、イメージはつかめたよ。タイカン クロス ツーリスモの他の特徴は?
まあ、後ろの方が荷物を入れるスペースがあるのは明らかだ。トランク容量は約1,200リットルで、イケアの細長い絨毯や犬を乗せることができる電動ポルシェである(ただし、全開でスタートする際に、リアガラスに犬の顎を乗せとかないように)。このプロトタイプの、マットなカモフラージュペイント仕上げによって、ビジュアルの差は隠されているが、ホイールアーチエクステンション、ファンキーなホイール、そして「ライフスタイル」を満喫するのなら、牽引バーやバイク用のラックを装着することができる。ここに装着されているオプションには、ルーフレールと、より大きなパノラマルーフが含まれている。クロスツーリスモの座り心地は、超低めのスタンダードカーよりも20mm高く、オプションのオフロードパックを装着した場合は、30mm高くなる。リアのヘッドルームも36mm拡大されており、タイカンのめっちゃケチなキャビンスペースを、ゆったりと迎え入れてくれるようになっている。そうそう、埋め込み式のフットガレージも気に入っている。オンラインのコンフィギュレーターはまだ見ていないが、このタイカンのより実用的なバージョンは、2021年に私たちが期待していたような、完全なる電気宇宙船に近づけられるかもしれない。これは本当に素晴らしいモーターカーだ。

おそらくレギュラーのタイカンと同じくらい、めちゃくちゃ速いんだろうな?
そらそうよ。でも、これが来週のショービズの舞台上でお披露目されるクルマだってことを考えると、いつもよりも少しプレッシャーがあったけどね。エセックスの泥ならいいけど、エセックスの原っぱは、NGとかさ。正直、この件をツッフェンハウゼンに電話したら、気まずいだろうな。とはいえ、実際のところ、フルファットのタイカン ターボ Sだと、何が起きているのかを脳が計算するのに時間がかかるほどの獰猛さとレスポンスの速さで、道を突っ走っていくのだ。

テスラが最もパワフルなモードを「ルーディクラス(馬鹿げた)」と名付けたのは、まさにその通りで、この感覚を表現するにはこれ以上の形容詞はない。ドイツ語では「グロテスク」と訳されるけれど、これはほぼ正解。このモデルにはポルシェのプレミアム バッテリー プラスが搭載されており、93.4kWhのパワーで、751hpと1,049Nmのトルクを発揮する。タイカンのサルーンでは0-100km/hを2.8秒で出しているが、この3秒未満という数値は、真のハイパーカーの加速のバロメーターであると同時に、実際には「気分悪っ!」ってほどの速さ(160km/hを6.5秒で出してるし!)を実現するポイントでもある。

機械的な雷鳴のようなものが一切ないということが、この超高性能かつエレクトリック感覚的な攻撃の、抽象的な性質を強調している。ポルシェのエレクトリック・スポーツ・サウンド・ジェネレーターは、その魂を奮い立たせようとするときには、すべての電気自動車に見られるような、ちょっとばかげたものだ(映画『ブレードランナー』でデッカードがフォークト=カンプフ検査をしてレプリカントかどうか識別しようとしているのをいつも思い起こさせる)。もちろん、いつだって少し減速することができる。そして、そうすれば、他の比類なきポルシェでの体験が一気に蘇ることになるのだ。これは驚くべき移動手段である。ポルシェは、フル充電した場合の航続距離は409km、kWhあたりの平均走行距離は4.06kmになると主張しているが、それを達成するには禁欲的な自制心が必要だ。クロス ツーリスモの800Vアーキテクチャは、兄弟車と同様に優れた充電効率を実現しており、270kWの充電器で20分で80パーセントまで充電できる。

乗り心地も良くて、扱いやすさそうだね?
その通り。このトップレベルのスペックのクロス ツーリスモは、全輪駆動を実現しているが、それにもかかわらず、まったく違和感がない。サルーンと同様に、このクルマの究極のお座敷芸というのは、その質量(2,295kg)をいかにして隠すかということかもしれない。まるでボクスターのように方向転換をしてくれるし、アンダーやオーバーステアを全く感じさせずに、ラウンドアバウトやコーナーをスキップするのが好きな人には、もっとマッチして感じられるかもね。普通のモデルよりは少し動きが良いのは、おそらくアクティブロールキャンセルが働いているんだろう。スピードを上げていくと、かなりトリッキーな起伏のあるところでは、一瞬位相がずれて浮いてしまうこともあるが、ノーマルモードにしておけば問題ナッシング。しかし、ノーマルモードにしておけば、ほとんどが美しくバランスが取れていて、非常に楽しいポルシェなのだ。今回、グラベルモードは試せなかったが、きっと楽しいはず。完成したクルマで、またこのモードを試してみたいと思う。

何か言っておかなきゃいけない問題はないの?

あまり多くはないんだ。タイカンは腰が低く、窓の縁が高く感じる。SUVドライバーに愛される、控えめで人気のある「コマンド」ドライビングポジションとは正反対だ。ホイールも思ったより細くて小さい。だが正直なところ、この2つの面が気に入っている。前方の景色は素晴らしいけれど、肩越しや後ろの景色はそうでもない。ポルシェのインテリアの質は文句のつけようがないし。現代のデジタルタッチスクリーンとしては、タイカンのグラフィックと全体的なデザインは、非常にエレガントだ。しかし、だからといってユーザーインターフェースが特に使いやすいというわけではない。また、エアコンのタッチの間隔が少し気になる。

何もかも、めちゃめちゃ気に入ったみたいね?

そうかもしれない。ポルシェはタイカンに高いハードルを設定した。EVの世界が電光石火のようなスピードで進化しても、それを脱却するには何か素晴らしいものが必要になるだろうから。より多くの汎用性を追加して、デザインを少しだけ個性的にすることで、このクロス ツーリスモこそが頭1つ抜きん出ていることは、わかってくれると思う。価格はまだ確認されていないが、140,000ポンド(2,075万円)以上だと考えてほしい。確かに大金だけれども、これは世界で最も特別なクルマの一台であることは間違いない。

トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2021/02/29698/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

HP Directplus -HP公式オンラインストア-

ピックアップ

トップギア・ジャパン 060

アーカイブ