ベントレー マリナー バカラルで見えたベントレーの方向性

ベントレーはバカラルを製作するにあたり、各分野から選び抜かれたエキスパートの方々と協力関係を結んだ。一台一台を仕上げていく持続可能かつ革新的な技術は、現代における最高の職人技であり、何世紀にもわたって少しずつ発展してきたものがほとんど。素材はもちろん、環境に配慮して採取されたものが使用されている。

キャビンでまず目を引かれるのはラップアラウンドダッシュボードに使用されている「リバーウッド」という名称のサステナブルな木材だ。イングランドのイーストアングリア地方フェンランドの湿地、湖、川などで発見された5千年以上前の倒木から採取された。

「リバーウッド」は何千年もの間、湿った大地の中で眠っていた手つかずの倒木のため、独特の黒味が実に美しく、ダッシュボードの素材として最適だった。その天然の風合いを維持し、損傷を防ぐため、採取された木材は管理された環境下で長期間乾燥される。まっすぐな杢目がバカラルのインテリアが持つ流れるような曲線を引き立て、独特の深みと趣きを醸し出す。

ウッドパネルを貼り付けたダッシュボードを文字通り2枚にスライスし、上下を分割するよう中央に幅3mmのクロームストリップを配置した。上側の「リバーウッド」は杢目と色合いを活かすナチュラルな仕上がりのオープンポアフィニッシュだ。

下側のパネルはハイグロスフィニッシュだが、伝統的工法に現代的なアレンジがプラスされている。ダッシュボード下部はウッドパネルからハイグロスのPiano Blackへとシームレスに溶け込み、ビスポークならではの凝った仕上がりを印象付けてくれる。バカラルにはルーフがないため、この秀麗なウッドパネルを外からもはっきりと見ることができる。

ベントレー マリナーは英国の伝統ある織物工場と協力し、テーラーメイドの高級スーツにも匹敵するウール生地も生産した。マリナーにはもともと、織布を生産する技術と知識が何世紀にもわたって受け継がれており、その技術と知識を活かしてバカラル専用のオリジナル生地を完成させた。顧客は好みの生地をオーダーメイドすることも可能だ。

伝統的な技法で作られた生地はシートインサート、シートバック、ヘッドレスト側面に使用されている。また、インテリアのスタイリングラインに沿って、センターコンソール側面とインストルメントパネル下側からドアへと流れるように配置される。

持続可能な職人技の活用と貴重な産業への支援はこれだけではない。イングランド伝統のウィルトン織機で最高級の天然糸を織り上げたラグジュアリーなオーバーマットもある。ウール100%のウィルトン織りディープパイルカーペットは、フットウェルとラゲッジスペースにぴったりと収まるように手作業で形が整えられる。シートに施された模様ともマッチする。

クルーにほど近いピークディストリクトのサプライヤーとも提携し、職人によるパイピングを特注できるという珍しいオプションも用意している。このパイピングによってシートのダイナミックなスタイリングラインを一層強調できる。オーナーは個人的に思い入れのあるものをモチーフとし、パイピングのパターン、カラーの組み合わせ、エンボス加工などを指定できる。

塗料もサステナブルな原料にこだわって選定した。使用されている顔料は、彫刻のようなエクステリアの直線、曲線、佇まいを際立たせ、光によって変化する色合いが魅力となっている。

この顔料は、酸化鉄でコーティングされた合成の二酸化ケイ素プレートレットだ。合成過程では、コメ産業の副産物であるもみ殻の灰を使用して純度90%の二酸化ケイ素を生成し、埋め立てゴミとなるもみ殻を削減している。

バカラルはベントレークルー工場内のマリナー専用ワークショップでハンドクラフトされる。クルー工場は高級自動車メーカー初となるカーボンニュートラル認証取得工場だ。

トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2020/03/21228/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

トップギア・ジャパン 064

アーカイブ