英・BBCトップギアの元看板司会者ジェレミー クラークソンは、この車を「これまで運転した中で最高の車」と断言しつつも、一方で「シートベルトを締めるだけで肺に穴が開く」「カップホルダー一つなく、パブに行くのすら苦行」と、その不便さを容赦なく酷評した。LFAはなぜこれほどまでにエンジニアたちの狂気を感じさせるのか。2013年に掲載されたアーカイブ記事から、クラークソンがLFAに抱いた「愛と魂」の全貌を、当時の熱気そのままにお届けする。
レクサス LFAのV10エンジンは、アイドリングからレッドラインまでわずか0.6秒で回転を跳ね上げる。あまりに速すぎて、既存の針式タコメーターでは追いつけず、エンジニアたちはデジタル式タコメーターを装着せざるを得なかったほどだ。
トヨタは完璧なハンドリングのために、重量の52パーセントをリアアクスル(後輪車軸)上に配置すべきだと考えた。その結果、LFAのラジエーターとバッテリーは後方に配置されている。ウォッシャー液のタンクまでそこにある。
この車はシングルクラッチのセミオートマチック・ギアボックスを搭載している。変速は遅く、そして野蛮だ。だがギアを入れ替えるたびに、まるでミスター・マッスルマン(筋肉モリモリの怪力男)に背中をハンマーで殴られたかのような衝撃を受ける。これこそ、ドライバーに自分が本当にレーシングカーに乗っているのだという感覚を与えてくれる。
ボディは従来の形をしているかもしれないが、ここには正真正銘の空力設計がある。私がカリフォルニアのウィロー スプリングスで体験したように、速度を上げれば上げるほど、グリップは増していくのだ。
エンジンの吸気音を直接コクピットに届けるサウンドチューブがある。そして、トランクの中には、一番近いフュージョン料理レストランを探してくれる女性(ナビゲーター)が隠れている。私はLFAが大好きだ。あまりにも好きすぎて、最近これを「これまで運転した中で最高の車」だと評したほどだ。
当然、これにはハモンドとメイが声を大にして嘲笑した。主に、彼らが口を酸っぱくして指摘するように、価格が359,590ポンド(当時のレートで5,000万円以上)もするからだ。これは日産 GT-Rの5倍近くの値段であり、GT-Rの方がどちらかと言えば技術的にはさらに高度である。フェラーリ 458やメルセデス SLSよりもずっと高い。彼らが主張するには、これはバカげた価格設定だということだ。
だが、彼らは間違っている。LFAが高すぎるという議論は、1,000億ポンドのモナ リザが高すぎる、と言っているようなものだ。あるいは、5ポンド出せばオックスファム(チャリティショップ)で素敵な石のラッコの置物が買えるのに、2,000万ポンドのヘンリー ムーアの彫刻を買う意味がない、と言っているのと同じだ。
LFAのような車において、価格など関係ない。これは単なる「技術の祭典」なのである。咆哮し、突き進み、タイヤを鳴らす、工業グレードの「見せびらかし」の矢印である。これは、ある時代の記念碑として、空調管理されたコレクターのガレージに置かれるべきものだ。実際に購入して普段使いするような車では断じてない。もしそうするなら、時折、少しばかりイライラすることになるだろう。
なぜなら、その栄光のディテールと、エンジニアリングのサイコパス(狂人)たちが設計したであろうセンスの裏側に、いくつかの小さな問題が潜んでいるからだ。そして、そのすべてがパブへ向かう短い旅で露呈した。
BBCの真面目なニュースチームは、運転者に「どうしても必要な場合」以外は外出せず、家にいるよう勧告していた。だが、外出は必要だった。昼食が食べたかったからだ。とにかく、美しい一日だった。空には雲一つなく、地面にはジャックフロスト(霜の妖精)が撒いたような、雪が薄く積もっていた。
私はLFAに乗り込み、10分後、首を痛め、肺に穴を開け、腹をねじりながら、どうにかあの極めて扱いづらいシートベルトを装着した。その10分後、とてつもない回転半径を克服するために77回の切り返しを行い、ようやく正しい向きに鼻先を向けた。だが、どこにも行けなかった。レース用タイヤが凍った砂利道に完全に手こずっていたからだ。
私はシートベルトをほどき、シャベルとバーナーと麻袋を取り出した。10分後、ようやくコクピットに戻った。この作業でさらに腹が減り、昼食を楽しみにしていた。さらに10分後、ようやくシートベルトを締め直した。そして、出発した。
喉の渇きを癒そうと、ドアポケットから爽やかな炭酸飲料の缶を手に取り、一口飲んだ。そして、カップホルダーがないことに気づいた。だが、世界の終わりではない。LFAの燃料タンクは、ジッポーライターのタンクより7%小さいだけなのだから。
私はガソリンスタンドに入るときにノーズを擦り、シートベルトをほどき、飲みかけの炭酸飲料をゴミ箱に捨て、0.3リットルのハイオクを満タンにし、乗り込み、シートベルトを締めるまでの10分間の短い中断を経て、また低いノーズを道路に引きずり出した。そして、出発した。
激しくジグザグ走行しながら。実に奇妙だ。私は同じ車を以前、夏にヨークシャーで運転したことがあったが、その時は真っ直ぐに走った。しかし、それ以来、誰かがオーバーオールを着て下回りを少し改造したらしい――タイヤか? キャンバー角か?――そのせいで、ハンドルをどう動かそうと、道路のわずかな轍(わだち)をすべてなぞってしまうのだ。
問題を忘れようと、素晴らしいマーク レビンソンのステレオでDABラジオを選択した。動かない。そしてまたガソリンを入れる時間になった。
この後、またしてもシートベルトを締める際に肺に穴を開け、ようやく道が開けたのでアクセルを全開にした。すぐに時速70マイル(113km/h)に達したが、耳から血が出始めた。この速度では、エンジンが3,000rpmで咆哮し続けているからだ。LFAには7速ギアが欲しくなるが、存在しない。
トランクのスペースももっと欲しい。スーツケースはすべて座席の後ろのスペースに押し込まなければならないからだ。つまり、バックミラーからは何も見えない。警察の車が近づいているのに気づかなかったのは、そのせいだ。
少し説教を食らった後、ラジオのノイズとエンジンの咆哮、そして除雪車が作った轍にタイヤをとられながら、また走り出した。最終的にたどり着いたのは除雪車の車庫だった。オーバーオールを着た男がスパナを持って下回りを確認した後なら、どんなLFAドライバーも最後にはここに行き着くことになるだろう。
とはいえ、最終的にはパブにたどり着き、夕食となってしまった食事をとりながら、LFAに思いを馳せた…。
V8のアリエル アトムやケータハム R500を除けば、冬の晴れた日にパブに行くことをこれほどまでに苦行にしてしまう車は他に思い浮かばない。ウィロー スプリングス用? イエス。パームスプリングスの郊外の丘を登る曲がりくねった道用? イエス。だが、チップリクニング ノートンからキングハム プラウまで、カタツムリ料理とキノコのトーストを食べに行くため? ノー。ジョギングした方がマシだ。
しかし、私はこの車についての考えを変えるつもりはない。今でも、これまで運転した中で最高の車だと信じているからだ。
数ポンドあれば、マントルピースの上に飾る絵を買えるかもしれない。それはそれで素敵だろう。だが、だからといって、ターナーの至宝『雨、蒸気、スピード』を所有することを夢見るのをやめることはできないだろう。
この車は古い。ひび割れている。あやふやで、保険料は莫大だ。だが、どちらを選ぶ? そっちか? それとも『泣く少年(※呪いの絵として有名な安っぽい絵画)』か? ハモンドとメイなら『泣く少年』を選ぶだろう。だが私には魂がある。だから私は選ばない。
(本記事は『トップギア』マガジン2013年2月号に掲載されたものです)
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「なんて車だ! あのV10は壮大だったよ!」





