<概要>
どんなクルマ?
ハンサムな見た目だろう?この、グリルを見れば、納得(大きな声では言えないが、ヒゲクジラを想起する人もいるかも。だとしたらきっと、オキアミの選別が得意だろうね)。まずは、このプロポーションのバランスを見てほしい。前輪の位置を前に移動させたのに合わせてフロントガラスが後退しており、ホイールベースが延びているのだ。これまでのベントレー フライングスパーでは見たことないほど、横から見たデザインがかなり素晴らしい。
この名前は、1957年に発表された4ドアのサルーンのバッジからつけられたというわけではない。そのクルマにフライングスパーと名付けたデザインディレクター、アーサー テイラー ジョンストーンの紋章の要素だったのだ。そしてフライングスパーという名は、2005年にコンチネンタル GTのサルーンバージョンとして復活して以来、再び使われるようになった。見た目が特別人目をひくわけではなかったが、ベントレーはこれまでにフライングスパーを37,000台も販売している。問題は先代のフライングスパーで、2013年に改良されてもなお、ドライバーズカーではなくショーファードリブンカーだったことである。見た目にも乗り心地的にもノーズが重すぎて、後ろに座る方が良いくらいだった。
性能においては、この先代と新しいフライングスパーの間には、非常に似ている点がある。どちらも6.0リッターの12気筒ツインターボエンジンを搭載しているのだ。馬力は新しい方が10hp上がっているだけ。そして重さは38キロ軽く、長さは21ミリ、幅は2ミリ長くなっただけだ。新型フライングスパーは4ミリだけ車高が低く、先代同様トランクルームと後部座席は広い。しかし次の点は、変化がある。車体はほぼ同じ長さなのに対して、車軸は130ミリ離れている。シャシー(全て新しいアルミニウム製で、ボディワークも同様)は48Vの電子システムを搭載しており、アクティブアンチロールバーとステアリングをコントロールしている。4WDシステムはリアドライブ、ギアボックスは普通のATではなくツインクラッチの8速である。トルクは100Nm上昇し、燃費はWLTP基準において15%上昇している。6.8km/Lで337g/kmのCO2排出量というのはあまり自慢できるようなものではないが。
それはさておき、こういった基本情報を聞くと、このクルマはもっとダイナミックな一台に感じてこないだろうか。電子制御のエレクトロニックオールホイールステアリングにより、リア側にさらに大きなトルクを伝達してくれ、ドライバーの座る位置は、長くなったホイールベースによって後退している。最高出力は635psで、S65を含め全てのメルセデスベンツ Sクラスよりも速く、0-100km/h加速は3.8秒。最高速度は333km/hで、ローンチコントロールも搭載している。こういった機能は、ほとんど(リアステアリングを除く)は、今のコンチネンタル GT クーペには搭載されていない。そのことからも、ベントレーがこのフライングスパーを、どのような立ち位置のクルマにすべきかを長い時間をかけながら熟考してきたかが分かるだろう。運転するのが自分であれお抱え運転手であれ、こんな機能満載のクルマが自分の物になるなんて、幸せなことだ。この巧妙な戦略は、世界中にその魅力を波及させていくだろう。しかし、ほかのショーファードリブンカーとは話が違ってくる(現在、Sクラスを自分で運転するクルマとして買う人は、なかなかいないだろう?)。
価格は2,667.4万円とコンチネンタルGTクーペよりもちょうど130万円ほど安い。さらに大きくて重い、ベントレーの現状のフラッグシップモデルであるベントレー ミュルザンヌは3,672.1万円なので、それよりも圧倒的に安い。15年以上前に初代フライングスパーが開発されていた時、フォルクスワーゲンはその一連の様子を注視し続けていた。今では、ベントレーはフォルクスワーゲングループの傘下になり、一翼を担っている。とまあ、情報だけを見てみると魅力的に感じるが、実際にはどうなのだろうか。