僅か172psで重鈍な最新鋭を狩る。ケータハム セブン 340 スーパースプリント エディション、特別仕様の痛快なる下剋上

現代の車は重く、そして絶望的に退屈だ。そんな嘆きを吹き飛ばす劇薬が英国から上陸した。ケータハム セブン 340 スーパースプリント エディションである。電子制御を徹底的に拒絶し、むき出しの機械と直接対話する狂気的なまでのアナログ感。日本限定27台のみ生産されるこの至高のマシンが持つ、底知れぬ魅力に迫る。


2.5トンの「エコカー」を笑い飛ばす、英国ダートフォードからの刺客

現代の自動車産業は完全に狂っている。バッテリーで床下を埋め尽くした2.5トンのSUVが「環境に優しい」と持て囃され、ドライバーはマッサージシートで揉みほぐされながら、巨大なタッチパネルで空調の風向きをスワイプする。もはやそれは車ではなく、車輪のついたラウンジだ。

だが案ずることはない。英国ダートフォードにあるケータハムの自社工場では、未だに「軽量、シンプル、ドライバー中心」という正気の哲学を守り続ける職人たちがいる。彼らが今回、日本の熱狂的なファンのためだけに組み上げたのが、ケータハム セブン 340 スーパースプリント エディションだ。

事の発端は10年前に遡る。2016年と2017年、当時のセブン 160をベースにした「スプリント」と「スーパースプリント」が発表され、ヒストリックカーの祭典「グッドウッド リバイバル」で世界中のエンスージアストを熱狂させた。ここ日本でも割り当て分が瞬く間に蒸発するほどの爆発的ヒットを記録したことは、我々トップギア読者の記憶にも新しいだろう。そして2026年6月19日、待望の新作が日本の地を踏むことになった。

羊の皮を被った、むき出しのメカニカルビースト

今回の新作は、単なるノスタルジーの焼き直しではない。開発陣は、あのレトロで美しい1960年代のレーシングテイストを纏わせつつ、その心臓部に強烈なセブン 340Rのプラットフォームを採用するという凶暴な決断を下した。

細身で古典的なシリーズ3のナローボディに、172psを絞り出す2.0リッターのフォード製デュラテック4気筒エンジンを強引に押し込んでいるのだ。昨今のスーパーカーが掲げる1000馬力という数字からすれば可愛らしいものかもしれないが、車重が羽毛のように軽いこの車体において、172psという出力は文字通り「飛ぶ」ためのスペックである。5速ギアボックスを介して後輪を容赦なく蹴り上げ、LSDとビルシュタイン製ダンパーを備えたスポーツサスペンションが路面を乱暴なまでに鷲掴みにする。

このむき出しの狂気に対して、インテリアは不気味なほど優雅に仕立てられている。キャビンにはミュアヘッド製のスコティッシュレザー(イネスタン)が贅沢に奢られ、美しいキルト加工が施されている。ドライバーの目の前にはスミス製のクラシカルなダイアルが並び、その手にはモトリタ製のスポーツウッドステアリングが握られる。極めつけは、ダッシュボードに鎮座する「1960年代風バッテリーマスタースイッチ」だ。エンジンをかけるたびに、ル・マンのピットレーンにいるかのような錯覚に陥るこの変態的なディテールこそ、ケータハムの真骨頂である。

足元には13インチのアポロ特別クリームアロイホイールが輝き、外装は「ネイビーブルー」「シルバー」「ライトグリーン」「レッド」という、ヒストリックレースのパドックからそのまま抜け出してきたかのような極上の4色が用意された。驚くべきことに、普段は軟弱者扱いされかねないヒーターや、ポリッシュドのフルウインドスクリーン、さらにはソフトトップとドアまでもが標準装備となっている。

12,496,000円で買う、極上の「不便」と「悦楽」

この日本限定27台の特別なセブンは、12,496,000円という価格が付けられ、デリバリーは2026年の冬頃を予定している。

「キャンバス地のドアしか付いていない車に1,200万円以上も払うのか?」と眉をひそめる常識人もいるだろう。だが、本物の機械と格闘し、オイルの匂いと風切り音に包まれながらコーナーを駆け抜けるあの生々しい快楽は、いくら重いハイテク車に課金しても決して手に入らない。これは単なる車ではない。すべての制御から解放されるための、世界で最も美しく、そして最も危険な免罪符なのだ。もしあなたのガレージにまだ1台分の空きがあるのなら、急いでディーラーに向かうべきだ。歴史ある狂気が、あなたを待っている。

トップギア ジャパン 073:90年代の熱狂が蘇る!フェラーリ F355&初代NSXの究極レストモッド

ケータハムが気になった方へ
中古車相場をチェックする在庫車多数ガリバー

今の愛車の買取価格を調べる カーセンサーで最大30社から一括査定

新車にリースで乗る 【KINTO】

トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2026/06/92332/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

トップギア・ジャパン 073

アーカイブ