現代の自動車は、まるでリビングルームのように快適で退屈だ。しかし、世界にはまだ血の通った機械を操る喜びに憑りつかれた狂人たちがいる。6月14日、スポーツランドSUGOを舞台に行われた「CATERHAM CUP JAPAN」第2戦は、電子制御の恩恵を全てかなぐり捨てた男たちによる、最高に痛快でむき出しのモータースポーツの祭典だった。
電子制御などクソ食らえ、我々には鉄パイプと風があればいい
昨今の自動車業界とくれば、いかにドライバーを運転から遠ざけ、スマートフォンを弄らせるかに血道を上げている。だが、1973年にグラハム ニアンがロータスから「SEVEN」の権利を買い取って以来、ケータハム カーズ リミテッドの連中はただひたすらに「走る楽しさ」という哲学を貫き通している 。彼らの辞書に妥協という文字はない。
そんな彼らが日本市場に持ち込んだのが、ナンバー付きの「SEVEN 170 CUP」を用いた新たなワンメイクレース「CATERHAM CUP JAPAN」だ 。この狂気的なマシンは、SEVEN 170をベースにFIA基準適合の安全装備をこれでもかと詰め込んだ代物である 。エアコン? シートヒーター? そんな甘ったれた装備を探しているなら、今すぐ最寄りの家電量販店へ行くべきだ。
SUGOの魔物に挑む、むき出しの勇者たち
6月14日、朝から快晴に恵まれた絶好のコンディションのもと、東日本を転戦する「PETRONAS Syntium Series」の第2戦が宮城県のスポーツランドSUGOで幕を開けた 。ヨコハマタイヤ「ADVAN dB V553」のワンメイクタイヤを履きこなす全12台のマシンが、容赦ない高低差を持つ難コースへと解き放たれる 。
予選でいち早く牙を剥いたのは、開幕戦の覇者である#73田中選手だった 。彼は計測1ラップ目にして1分49秒123というファステストタイムを叩き出し、誰にも背中を追わせることなくポールポジションをもぎ取った 。だが、真のドラマは12時46分にレッドシグナルがブラックアウトした瞬間に始まった 。
フロントローから絶妙なクラッチミートを見せた#80佐藤選手が、1コーナーで鋭く田中選手のインをえぐり、トップの座を強奪したのだ 。SUGO特有のロングストレートでは、スリップストリームの激しい応酬が繰り広げられた 。佐藤選手はレース後、「驚くほどスリップストリームが効くので、DRSでも付いているのかと思ったほどです」と語り、F1も顔負けの空力バトル(もちろん、この車には立派なウインドスクリーンとむき出しのサスペンションがついているのだが)に冷や汗を流しながらも歓喜していた 。
レースが大きく動いたのは7周目 。先頭集団による三つ巴のドッグファイトの最中、レインボーコーナーで姿勢を乱した田中選手が痛恨のスピンアウトを喫する 。そのままイエローコーションとなりセーフティカーが導入されるという、バックガレージのメカニックが頭を抱えそうな波乱の展開へ 。最終的にトップでチェッカーを受けた#41古濱選手が走路外走行のペナルティで奈落の底へ突き落とされ、結果として#80佐藤選手が繰り上がりで表彰台の頂点に立った 。
2位には、なんと右足の怪我というハンデを抱えながらも「決勝では気持ちも上がって抑えきれました」と豪語する#98山田選手が入り 、3位にはスタートのシフトミスに泣きながらも執念で食らいついた#25笹尾選手が滑り込んだ 。男たちの闘争本能は、痛みを凌駕するらしい。
闘いはまだ続く、次なる戦地へ
この最高にクレイジーなシリーズは、今年が初年度 。東日本の「PETRONAS Syntium Series」と西日本の「OBERON Series」の2シリーズ体制で、それぞれ各3戦、合計6戦という長丁場で争われる 。すでに各初戦は消化されており、今回の第2戦を経てランキングトップには不屈の山田選手が躍り出た 。
2026年4月よりVTホールディングス傘下のエルシーアイ株式会社が輸入総代理店のタクトを振るうケータハムだが、彼らが提供する体験は、どれだけ時代が移ろいでも色褪せることはない 。
もしあなたが、重すぎるバッテリーを積んだ退屈なエコカーのステアリングを握りながらあくびをしているのなら、週末にサーキットへ足を運んでみてはどうだろうか。そこには、風を切り裂き、蟲を顔面で受け止めながら、純粋な内燃機関とギアボックスの咆哮に酔いしれる「本物のドライバー」たちがいる。さあ、次はあなたの番かもしれない。
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