【TAS 2026】シボレー コルベット Z06:「サントリーニ」の風を纏ったアメリカンマッスル。3,000万円で買える“最後の自然吸気V8”という名の宝石

エコだ、電動化だと騒ぐ会場の片隅で、絶滅危惧種の恐竜が優雅に回っていた。シボレー コルベット Z06。改良されたコクピットと、限定車「サントリーニ エディション」。これはアメリカからの、最も美しく、最も暴力的なラブレターだ。

アメリカの野獣は、ギリシャの夢を見るか?
オートサロンの会場を歩き回って、バッテリーの容量や航続距離の話ばかり聞かされ、少しうんざりしていた私の足が、ある一点で止まった。そこには、ゆっくりと回るターンテーブルの上で、鈍く、しかし鋭い輝きを放つ銀色の弾丸が鎮座していた。

「シボレー コルベット Z06」だ。
ただし、ただのZ06ではない。シボレーは今回、少しばかり詩的なアプローチを試みたようだ。その限定車の名は「Santorini Edition(サントリーニ エディション)」。

おいおい、待ってくれ。コルベットといえば、デトロイトの工場でステーキとガソリンを食らって育ったマッチョなアメリカンヒーローのはずだ。それがエーゲ海に浮かぶ白と青の楽園、サントリーニ島の名を冠するとは、一体どういう風の吹き回しだ?

しかし、ターンテーブル上の実車「ブレードシルバー」のボディを見て、その疑問は氷解した。美しい。無骨な筋肉の塊であるはずのZ06が、冷ややかなシルバーを纏うことで、まるで精密な外科手術用メスのような知性を帯びている。

そして、ドアの隙間から覗くインテリアカラーは「サントリーニブルー」。このコントラストは、確かに地中海の休日を思わせる爽やかさだ。だが騙されてはいけない。この車の背後には、依然として5.5リッターの怪物が潜んでいるのだから。

「ボタンの万里の長城」崩壊。コクピットの大改革
今回のマイナーチェンジにおける最大のトピックは、インテリアの刷新だ。
現行コルベット(C8)が登場した時、我々はセンターコンソールにそびえ立つ、あの万里の長城のような「ボタンの列」に驚愕し、そして少し笑ったものだ。エアコンの温度を変えるのに、いちいち指差し確認が必要だったあの物理ボタンの列である。新型Z06では、あの壁が取り払われた。

代わりに搭載されたのは、12.7インチのセンタースクリーン、14インチのドライバーインフォメーションセンター、そして6.6インチの補助タッチスクリーンという、計3つのディスプレイだ。「Googleビルトイン」も標準装備され、Googleマップやアシスタントが使えるようになった。これでようやく、コルベットも21世紀の文明社会に仲間入りしたわけだ。

古き良きアナログ派は「画面ばかり増やしやがって」と嘆くかもしれない。だが、サーキットを攻め込んでいる最中に、ボタンの列から「シートヒーター」ではなく「トラクションコントロール」を探し出す苦労を考えれば、この変更は歓迎すべき進化だ。さらに、新搭載の「パフォーマンスアプリ」は、リアルタイムで馬力とトルクの流れを可視化してくれるという。8600回転まで回した瞬間のデータをグラフで見られるなんて、オタク心をくすぐる演出じゃないか。

8,600rpmの自然吸気V8という「国宝」
さて、ガジェットの話はこれくらいにして、本題に入ろう。この車の価値の9割は、ドライバーの背後に搭載されたエンジンにある。
5.5リッター V型8気筒 DOHCエンジン「LT6」。ターボも、スーパーチャージャーも、ハイブリッドシステムも付いていない。純粋な、自然吸気(NA)エンジンだ。

特筆すべきは、アメ車特有の「ドロドロ」した重低音を奏でるクロスプレーンクランクではなく、フェラーリのような「カーン!」という甲高い咆哮を上げるフラットプレーンクランクを採用している点だ。

最高出力646PS。そしてレッドゾーンは8,600rpm。現代の環境規制の中で、これほどの高回転型大排気量NAエンジンを市販車に乗せて売るというのは、もはや反社会的行為に近い。だが、だからこそ尊い。

展示されていたサントリーニ エディションのエンジンフードの下には、この芸術品が収まっている。クーペモデルで2,900万円、コンバーチブルで3,100万円。
高い? 冗談ではない。フェラーリやランボルギーニがこのスペックを出そうと思えば、倍の価格は請求してくるだろう。世界最高峰のNAエンジンを、この価格で、しかも右ハンドルで楽しめる。これはバーゲンセールだ。

純白のアクセサリー装着車が示す「普段使い」の可能性
ターンテーブルの脇には、もう一台、純白(アークティックホワイト)のコルベットが展示されていた。
こちらは限定車ではなく、専用アクセサリーを装着したモデルだ。シルバーのZ06が「特別な日のタキシード」だとしたら、こちらのホワイトは「週末のトレーニングウェア」といったところか。

ホワイトのボディは、コルベットのアグレッシブな造形をより明確に浮き上がらせる。ブラックのホイールやカーボンパーツとのコントラストが、この車がただの直線の番長ではなく、コーナリングマシンであることを主張している。

多くの来場者が、この白いコルベットの周りに集まり、運転席を覗き込んだり、低いルーフラインに感嘆の声を上げたりしていた。「スーパーカーなんて雲の上の存在」と思っている彼らも、このコルベットの前では「もしかしたら、頑張れば手が届くかもしれない」という現実的な夢を見ているような、そんな熱っぽい視線を感じた。

結論:乗れるうちに乗っておけ
今回のシボレーブースは、インタビューや派手なプレゼンテーションこそなかったものの、雄弁に語りかけてくるものがあった。
それは、「内燃機関の火を消すな」というメッセージだ。

Googleが入り、スクリーンが増え、インテリアがお洒落なサントリーニブルーになろうとも、この車の魂は、ガソリンを爆発させて走る喜びそのものだ。
日本国内の割当は、サントリーニエディションがわずか20台(クーペ10台、コンバーチブル10台)。おそらく、この原稿が公開される頃には完売しているだろう。

だが、通常のZ06ならまだチャンスはあるかもしれない。もしあなたが、銀行口座に3,000万円ほど眠らせていて、人生に退屈しているなら、今すぐシボレーのディーラーへ走るべきだ。電気モーターの静寂が世界を覆い尽くす前に、この8,600回転の絶叫を手に入れる。それは、車好きとしてこれ以上ない「上がりの一台」になるはずである。
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