【TAS 2026】ステランティス:「魔法の絨毯」vs「ライオン」vs「動く彫刻」。フランスからの三本の矢が、オートサロンの喧騒を優雅に切り裂く

フランス車とは「理解する」ものではなく「感じる」ものだ。ステランティス・ジャパンがオートサロンに初参戦し、シトロエン、プジョー、DSの最新3モデルを投入。これは単なる展示ではない。感性への侵略だ。

フランス料理のフルコースを、立ち食い蕎麦屋で振る舞うような快挙
東京オートサロンという場所は、基本的に「油とゴムの焦げる匂い」がする場所だ。極太のタイヤ、爆音のマフラー、そしてコンパニオンの露出度を競う場所である。そんなカオスの中に、突如として「トリコロールの風」が吹いた。

ステランティス・ジャパンが、シトロエン、プジョー、DSオートモビルの3ブランドを引き連れて初出展を果たしたのだ。これは事件である。例えるなら、ガード下で賑わう立ち食い蕎麦屋の隣に、ジョエル・ロブションがポップアップストアを開いたようなものだ。「場違いだろ?」と思うかもしれない。だが、ブースに並んだ3台の車を見れば、彼らがなぜここに来たのか、その理由がわかる。彼らは「車好きの熱気」に飢えていたのだ。

Citroën C5 AIRCROSS:魔法の絨毯はハイブリッドに進化した
まず紹介するのは、シトロエンの新しいフラッグシップSUV、「C5 AIRCROSS」だ。
シトロエンというブランドは、創業以来「スペック? 何それおいしいの?」と言わんばかりに、ひたすら「人の快適性」を追求してきた変態的(もちろん褒め言葉だ)なメーカーである。

この新型C5にも、その哲学は健在だ。独自のサスペンション技術「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」により、彼らが言うところの「魔法の絨毯」のような乗り心地を実現している。

試乗していないので断言は避けるが、おそらく路面の凹凸を「無かったこと」にするレベルだろう。さらに、シートは「アドバンスド・コンフォートシート」。名前からして座ったら最後、二度と立ち上がりたくなくなる類の椅子だ。

パワートレインは1.2リッター直3ターボにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド。最高出力はエンジンが136ps、モーターが21ps。システム合計云々よりも、WLTC燃費19.4km/Lという数字が嬉しい。

インテリアには13インチの巨大なスクリーンが鎮座しているが、視点移動を最小限にする設計だという。速さよりも「いかにストレスなく移動するか」。この割り切りこそがシトロエンだ。

PEUGEOT 5008:ライオンは家族を乗せても牙を隠さない
次に、プジョーの「5008」。日本でも大ヒットした3008の兄貴分であり、3列シートを持つ7人乗りSUVだ。
普通、7人乗りSUVといえば「諦めの象徴」になりがちだ。「家族のためにミニバンは嫌だが、これなら…」という妥協で選ばれることが多い。
だが、この5008は違う。顔を見てほしい。ライオンの爪痕を模した3本のLEDライトが、「俺はまだ牙を抜かれていない」と主張している。

運転席に座れば、小径ステアリングと頭上のメーターパネルを組み合わせた「パノラミック i-Cockpit」が迎えてくれる。これはまるで戦闘機のコクピットだ。ミニバン的な生活臭は一切ない。

搭載されるのはC5と同じく1.2リッターのマイルドハイブリッドだが、全長4.8m、車重1740kgの巨体をスムーズに運ぶ。
小川フレンチブランド事業部長の言葉を借りれば、プジョーは「運転そのものが好きな人」のためのブランドだ。7人乗れて、燃費も良くて(18.4km/L)、ハンドリングも楽しい。世のお父さんたちが求めていた「免罪符」がここにある。

DS 4:動く彫刻、あるいは走る宝石
最後に、DSオートモビルの「DS 4」。
もしあなたが「スペック表の数値で車を選ぶ」タイプなら、今すぐ回れ右をして別のブースへ行った方がいい。DSはそういう人のための車ではない。
DSは「感性」の車だ。「このデザインが好きか、嫌いか」。それだけだ。

ボディサイドの彫刻的なライン、宝石のような輝きを放つLEDライト、そしてアルカンターラやステッチを惜しげもなく使ったインテリア。これらは工業製品というより、工芸品に近い。

WLTC燃費20.1km/Lという優秀な数字も持っているが、そんなことは二の次だ。
「他人と同じ車は死んでも乗りたくない」という偏屈で美意識の高いあなたにとって、このDS 4は唯一無二の選択肢となるだろう。

200年の底力を見せつける時が来た
なぜ今、フランス車なのか?

新興のEVメーカーが雨後の筍のように乱立し、「0-100km/hが何秒だ」「航続距離が何キロだ」と数字遊びに興じている今だからこそ、彼らの存在が光る。
シトロエン、プジョー、DS。彼らには200年以上の歴史がある。「車とはどうあるべきか」という問いに対する、彼らなりの哲学的な答えが、それぞれのモデルに詰まっている。

それは、魔法のような乗り心地であり、猫足と呼ばれるハンドリングであり、美術館に置いても違和感のないデザインだ。
オートサロンという「車好きの聖地」に彼らが乗り込んできたのは、単なるプロモーションではない。「iPhoneのような車」ばかりになりつつある世界に対する、アンチテーゼなのだ。
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インタビュー
「我々は『オールドブランド』の底力を見せたい」——ステランティスの挑戦
この大胆な出展戦略と今後の展望について、ステランティス・ジャパン フレンチブランド事業部 事業部長の小川隼平氏に、お話を伺った。
— オートサロン初出展、驚きました。なぜこの「油とゴムの匂い」がする場所に、優雅なフランス車を持ち込んだのですか?
小川氏: 理由は2つあります。一つは、この会場にいる「車の温度感が高い人たち」に触れてほしかったからです。私たちの車は、カタログのスペックよりも、実際に座って、触れて、乗ってみて初めてわかる「良さ」があります。オートサロンに来るような感度の高い方々なら、この作りの良さや高級感を本能的に理解してくれるという確信がありました。
— もう一つの理由は?
小川氏: 社内の士気を高めるためです。正月明けのこの「祭り」に参加して、ビジネスを垂直に立ち上げる。「今年もやるぞ!」という狼煙(のろし)を上げるには、ここが最高の場所なんです。
— 展示されている3台は、どれも個性的ですが、どう住み分けていますか?
小川氏: お客さんは被らないと考えています。
「シトロエン」は、独自の世界観で快適に移動したい人。趣味やファミリー層向けです。
「プジョー」は、とにかく運転が好きな人。ハンドリングを楽しみたい人向け。
そして「DS」は、「指名買い」のブランドです。理屈抜きで「これだ!」と直感する、究極のこだわりを持つ方へ向けた車です。
— 今回の展示車、左ハンドルのものもありますね?
小川氏: よく気づかれましたね(笑)。実はこれ、春に導入予定の新型車を、本国から無理やり借りてきた広報車なんです。「どうしてもこの3ブランドの新型を揃えたい」と頼み込みました。展示が終わったらすぐに返さなきゃいけない、本当に貴重な車ですよ。
— 最後に、新興EVメーカーなどが台頭する中で、フレンチブランドはどう戦っていきますか?
小川氏: 私は、200年以上の歴史を持つ「オールドブランド(伝統的ブランド)の底力」を見せてやりたいと思っています。伝統があるということは、それだけ車作りの基礎がしっかりしているということです。空想やレンダリング画像ではなく、実車に乗って、五感で感じてほしい。メルセデス・ベンツと同じくらい長い歴史を持つ我々の「伝統の味」を、ぜひ味わってください。
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