【試乗】BMW アルピナ B3 GT:ボーフェンジーペン家最後の傑作 529馬力の官能とBMW譲渡後の未来を考察

アルピナ創業家が手がけた最後のモデル「B3 GT」に試乗。529馬力を誇るその実力は圧倒的。M3とは一線を画す走りとは? そして、BMW傘下となるアルピナの未来はどうなるのか?

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「アルピナ」ブランドは2026年からBMWに譲渡

「アルピナ(ALPINA)という、スゴいBMWがある」ということを知ったのは、免許を取ってクルマに乗りまくるのが楽しかった学生時代のことだった。以来、アルピナは筆者にとって憧れのブランドとなり、それがモータージャーナリズムの世界へ入るキッカケになったといったら言い過ぎだろうか。

実際、自動車雑誌の編集に携わってきて、歴代のアルピナ車の多くを実際に見て、触れて、試乗することができ、あらためてその素晴らしさに感動したものだった。

ちょっとおさらいしておくと、アルピナ社(正式にはアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社)はボーフェンジーペン家が1965年に設立してBMW車のチューニングとモータースポーツを舞台に活躍し、1978年からBMWをベースにした乗用車の製造に着手。いまも数々のモデルをベースとしたラグジュアリースポーツモデルをラインナップする。

ボディや足まわりに独自のチューニングを施すだけでなく、インテリアを構成する本革製品やエンジンを熟練工による手組みで仕立てるクラフトマンシップ、ボディサイドを前後に貫くストライプ「アルピナ デコセット」や、20本もの細いスポークで構成されるホイールといったアイコンなど、アルピナには他のブランドにはない魅力があった。

だが、2025年末をもって、「アルピナ」ブランドの商標権はBMWグループに譲渡されることになった。2026年以降、アルピナはBMW直轄のサブブランドとなる。したがって、今回試乗の機会を得たB3GT(およびB4GT)が、アルピナ社の創業家であるボーフェンジーペン家が手がけた最後のアルピナ車となる。

そうなると、やはりこれは味わい尽くしておかなければならないと、アルピナブルーのボディカラーが美しいB3GTのセダンに乗り込んだ。

専用デザインカラーの「オロ テクニコ」がアクセント

B3GTは、従来モデルのB3をさらにスープアップした、いわば究極の3シリーズだ。ちなみにボディタイプはリムジン(セダン)とツーリング(ワゴン)が設定されるが、ほぼ同スペックのB4GTは4シリーズ グランクーペのみで、2ドア クーペやカブリオレは設定されていない。

一見したところでは、B3と変わらない。だがよく見ると、フロントスポイラーには小さなカナードとスプリッターが装着され、リアディフューザーも新デザインとされて、空力特性が高められているようだ。ボディサイドのストライプは他モデルでは「ALPINA」とロゴが入る部分に「B3GT」と入れられている。そして何よりも「オロ テクニコ」というB3/B4GT専用のデザインカラーであるゴールド仕上げの20インチ鍛造ホイールが足元を引き締めている。

インテリアもアルピナらしい、スポーティにラグジュアリーな雰囲気を加味したものだ。しかも、最高級ラヴァリナレザーに手作業で仕上げられたステアリングホイールのステッチ、アルマイト処理されたアルミニウム製のアルピナ スウィッチトロニックのシフトパドル、そしてフロアマットとラゲッジコンパートメントマットのブラックレザーの縁取りのステッチにも、オロ テクニコが用いられている。

また、ノーマルの3シリーズはATセレクターがスイッチ式となってしまったが、B3GTは従来からのレバー式を踏襲している。個人的には、やはりこちらのほうがクルマを操っているという気分に浸れるし、このあたりにもアルピナのこだわりを感じさせてくれる。

では、スタートボタンを押して529psと730Nmを発生する3.0Lの直6ツインターボ(アルピナではビターボと呼ぶ)エンジンに火を入れて、走り出すことにしよう。

アルピナらしい「おとなの走り」を楽しみたい

タイヤは前後異サイズの30偏平20インチ、しかも空気圧は3.4kg/cm2という数値からは想像できないほど、乗り心地はいい。ドライブモードをコンフォート(コンフォートプラスもある)からスポーツに変えても、不整路面からの突き上げはほとんどなく、しかも上手にいなしてくれる。

一般道では、アクセルペダルに軽く足を乗せているだけでクルマの流れをリードしてしまう。2〜3割ほど踏み込めば十分以上に加速する。前の空いた直線路で一瞬だけ全開加速を試みると、鍛え上げたBMWエンジンらしい独特の快音を響かせながら、頭から血の気がひいて視界がブラックアウトするような恐ろしい加速を見せた。

高速走行のエンジン回転数は、8速80km/hが1100rpmくらい、100km/hが1400rpmくらい(デジタルメーターは細かく表示しないので)。どのギアでも1,000rpmくらいまではシフトダウンせずに粘り、そのまま加速してくれる。

ハンドリングは、コンフォートではニュートラルが少しダル、スポーツではややクイックになるものの直進安定性は過敏ではない。アウトバーン エクスプレス的に使われることを考えれば、これくらいが適当なのだろう。それでも、ちょっとしたコーナーを曲がればステアフィールはスムーズ。BMW伝統のハンドリングの良さをアルピナがさらに磨きをかけた印象だ。

このハイパワーユニットを御するにはFRでは無理と、駆動方式は4WDを採用している(このあたりはM3も同じだが)から、今回の試乗のように好天の舗装路、それも日本の制限速度においては、このクルマのパフォーマンスは一端も味わっていないかもしれない。だが、そんなハイパワーを秘めながらもジェントルに「おとなの走り」を楽しめる、それがアルピナの矜持なのだろう。

BMW社が手がけるアルピナ車が、どんなクルマになるのかは分からない。だが、Mモデルとの棲み分けを考えれば、M3とB3GTが似て非なるものとして両立するように、ボーフェンジーペン家と同様に魅力的なモデルを創り出してくれるに違いない。そんな想いを抱きながら、B3GTのハンドルを握って帰路についた。(文と写真:篠原 政明)

■ BMWアルピナ B3GTセダン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4725×1825×1440mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1840kg
●エンジン:直6 DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:389kW(529ps)/6250-6500rpm
●最大トルク:730Nm(74.4kgm)/2500−4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTPモード燃費:9.52km/L(ヨーロッパ参考値)
●0→100km/h加速:3.4秒
●巡航最高速度:308km/h
●タイヤサイズ:前255/30ZR20、後265/30ZR20
●車両価格(税込):1650万円(右ハンドルは1680万円)

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