ケータハム プロジェクト Vのパールホワイトカラーは、トップギアと深い関係があった

東京オートサロンで、ケータハム プロジェクト Vのプロトタイプが展示された。今回のボディカラーはクリスタルラインホワイトというパールホワイト。このカラー、トップギアと深い関わりがあったという。協業しているXing Mobilityとヤマハの担当にお話を伺った。

【KINTO】

ケータハムカーズ・ジャパンが1月の東京オートサロン 2025でプロジェクト Vを展示し、多くの人の注目を集めた。今回のボディカラーは、クリスタルラインホワイトという名前。じつはこの色は、2008年にR500でトップギアのカーオブザイヤーを受賞した際のクリスタルラインホワイトというカラーだったのだ。このカラーは、当時テレビ番組の影響もあり、白いボディに赤い線やオレンジの線が入ったデザインが流行していた。プロジェクトVのパールホワイトのボディカラーは、色々な意見があったものの、最終的に採用されたという。「赤線を入れることで、ヤマハのイメージを強調することも検討されましたが、実現しなかったんです」と、ケータハムのジャスティン氏は語ってくれた。ボディラインが綺麗に見えるため、このパールホワイトのカラーが選ばれた。トップギアのカーオブザイヤーが、2025年の新型プロトタイプのボディカラーになるなんて、とても光栄に感じたのである。
1年前のTASでは、デザイナーも来日し、とても評判が良かったプロジェクト V。1年経ったが、今回は、協力会社による展示やインタビューも行われた。一つがパワートレイン主要部に当たるe-アクスルをプロトタイプ車両に供給するヤマハ発動機株式会社、そしてもう一つがプロジェクトVの試作車に採用する最先端の車載バッテリー冷却技術である液浸冷却バッテリーパックの開発会社であるXing Mobility社だ。ヤマハ発動機からは e アクスルのイメージ動画を、Xing Mobility からは IMMERSIO™Cell-to-Pack Battery System のプロモーション動画が、ブース内に設置したモニターで再生され、多くの人が仕組みについて興味を抱いていたようだ。

Xing MobilityのChairman & CEOの洪裕鈞(Royce yc Hong)氏にお話を伺った。XING Mobility(行競科技)は、電気自動車(EV)向けのパワートレインとバッテリー技術を提供する台湾の企業だ。2015年に台北で設立され、特に液浸冷却バッテリーシステムの開発と製造に特化している。XING Mobilityの最大の強みは、世界初となる液浸冷却技術の商用化だ。この技術では、バッテリーセルを絶縁性の冷却液に直接浸すことで、従来の空冷や間接水冷と比べて高い冷却効率を実現している。

―Xing Mobilityの設立
Xing Mobilityは2015年に設立され、当初は電動レーシングカーの開発を目標としていました。しかし、電動ブレーキシステムの開発中に、冷却機能を備えた特殊なバッテリーシステムを開発することになりました。中国での事業展開ではなく、ヨーロッパとアメリカを中心に展開を進めています。特にヨーロッパでは、環境意識の高い国々を中心に以前から事業を展開しています。
―バッテリー技術の特徴
弊社のバッテリー技術の最も重要な特徴は、不導電性の液体に電池全体を浸すイマージョンクーリング技術です。これにより、バッテリーの温度を効果的に制御し、急速な熱除去が可能になります。特に電気自動車のバッテリーにおいて、温度管理は非常に重要であり、この技術によってバッテリーの性能と安全性を高めることができるのです。そして、C2P(セル・トゥ・パック)というバッテリーパックの形状を開発しています。これにより、バッテリーパックの軽量化を実現しています。軽量化は、特にスポーツカーのような車両においては重要な要素であり、運転性能に大きく影響します。これらのバッテリー技術は特許を取得しており、Xing Mobilityの独自技術です。特に、バッテリーの温度制御が電動車用バッテリーの最も困難な点であるため、Xing Mobilityのイマージョンクーリング技術は、他社にはない優位性を持っているのです。弊社のバッテリーは、コンパクトでありながらエネルギー密度が高いと評価されています。このため、限られたスペースでも高いパフォーマンスを発揮することができ、今回のケータハムとのコラボレーションにおいても、その点が評価されました。また、バッテリーの安全性についても自信があります。
―ケータハムとのコラボレーションの経緯
ケータハムは、軽量でコンパクトな電気自動車システムを求めていました。東京R&DとHKSを通じて、Xing Mobilityのバッテリーシステムが彼らのニーズを満たすことがわかりました。Xing Mobilityのバッテリーは、コンパクトでありながらエネルギー密度が高く、安全性が高い点が評価され、今回のコラボレーションに至りました。Xing Mobilityは、以前から日本の企業と協力関係にあり、1年以上前からバッテリーシステムの開発で協力しています。久保田製作所とも提携しており、C2Pバッテリーパックの開発を2年間続けています。また、バッテリーは、商用トラック(3.5トンクラス)、海洋用途、ノルウェーの鉱山現場、台湾の風力発電システムなど、さまざまな分野で採用されています。
―プロジェクトVへの期待
今回のプロジェクトVが、運転の楽しさを真に追求した最初の電気自動車になることを期待しています。私自身がモータースポーツを愛好しており、軽量で運転の楽しさを重視するケータハムの車に共感しています。プロジェクトVのデザインを担当したジャナレリ氏も、セブンを所有し、自身で運転を楽しむ人物であり、関係者全員がこのプロジェクトに対して同じ情熱を共有しています。ケータハムの親会社であるVTホールディングスの高橋社長は非常にリスペクトしております。今回のプロジェクトには、日本の企業が中心に参加しており、皆が同じ気持ちでより良いものを作ろうとしていると感じています。これは、高橋社長が日本の企業文化やものづくりへの情熱を理解し、プロジェクトに反映させているように思われます。言葉を超えた深いレベルでの理解があると感じており、そのことは、プロジェクトの進行において非常に重要な要素であるはずです。

ヤマハの技術・研究本部 AM開発統括部 第2技術部 電動設計グループ グループリーダーの菅原順也(すがはら じゅんや)氏にお話を伺った。
―協業のきっかけについて
ヤマハは、ケータハムから声がかかり、4輪のパワートレインを供給してきた経緯から、電動化分野にも進出したいと考えていました。ヤマハが電動開発を進めていたタイミングで、ケータハムから声がかかったことで実現したのです。ヤマハは、「楽しいスポーツカー」というコンセプトに共感し、ケータハムが軽量スポーツカー作りをしている点に魅力を感じました。自社のパワートレインがケータハムの車に搭載されることをチャンスと捉えました。ヤマハは、エンジンメーカーとしての歴史があるため、電動化への移行は魅力を減らすのではないかという懸念もあったのは事実です。しかし、車とパワートレインが一体となって、魅力的な車を作りたいと考えています。
―e-Axleの特徴
今回のプロジェクトで開発されたe-Axle(電動アクスル)は、出力に対して軽量かつ小型にできています。実機での評価はこれからですが、ハードウェアとしては良いものができたと考えています。このe-Axleは、他社の製品をベースにしたものではなく、ゼロから開発されたものです。
―開発で重視した点
車両側がライトウェイトスポーツをコンセプトに掲げているため、軽量化と小型化を最も重視して設計されました。苦労した点として、モーターは、どのメーカーの製品を使っても差が出にくいため、特徴を出すのが難しいと感じています。エンジンは音やフィーリングで個性を出しやすいですが、モーターではそうはいかないため、レスポンスや楽しさをどのように作り込んでいくかが課題となるのです。
―開発スケジュールについて
実機1号機が1月いっぱいに完成し、評価を開始する予定です。車両は、今期中旬に完成し、e-Axleを搭載して走行テストを行う予定になっており、着々と進行しています。
―プロジェクト Vの魅力について
「軽くて小さくて楽しそうなクーペ」である点、そして、電気自動車に見えないデザインである点が良いですね。他の電気自動車が大きく重い中で、この車は異彩を放っていると感じています。ケータハムのファンから注目されているという話を聞いているので、力を入れて頑張りたいです。
―ヤマハといえば、過去に2000GTを開発されたことでも有名ですが、プロジェクトVはどんなクルマを目指しているか
ケータハムのスーパーセブンに乗っていた人も楽しめるような電気自動車にしたいと考えています。軽くてキビキビ動く車を目指しており、それが実現すれば、電気自動車として革新的であると考えています。2000GTのワクワク感をこの車でも実現したいですね。弊社では、ケータハムに同じような思想を感じ、協業に至ったのです。このプロジェクトは、オールジャパン体制に近い形で進められており、関係者一同嬉しく感じています。電気自動車でもスポーツカーのワクワク感を生み出したいです。

トップギア カーオブザイヤーは何のクルマ?日本車の受賞はあるのか?:トップギア・ジャパン 065

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