新型BYD アット 3が450万円で発売された。BYDは、将来PHEV日本導入の可能性はあるのか?
BYDのアット 3(ATTO 3)がアップデートされ、450万円から発売開始された。発表会では、BYD アジア太平洋地域 自動車販売事業部 総経理、ビーワイディージャパン 代表取締役社長の劉 学亮(りゅう がくりょう)氏、BYD Auto Japan 代表取締役社長の東福寺 厚樹氏、マーケティング部 部長の遠藤 友昭氏によるプレゼンテーションが行われた。
アット 3の発売として納車の開始から約1年が経過したタイミングで、実際にユーザーから寄せられた声を踏まえつつ、行われたアップデートだ。まず、ディスプレイサイズの拡大化で、12.8インチから15.6インチ拡大している。ディスプレイ内にはBYDストアが追加され、Amazon Music、検索ブラウザ、そしてカラオケの3つのアプリの取得がこちらのBYDストアから可能になっている。検索ブラウザではインターネット検索が可能。またカラオケアプリでは車内でカラオケ音源を流せるだけでなく、別売りで販売予定のマイクを使用することで、より本格的なカラオケを楽しむことができる。
続いて、カラーバリエーションが増えた。顧客からの要望が多かったコスモスブラックを新色で追加した。インテリアのカラーもダークカラーのブラック、そしてグレーに合わせてシックな印象を与えるブラック、ダークブルーのインテリアカラーを追加。スポーティな印象をより際立たせることができる配色だ。
その他にも、ハードウェアとソフトウェアそれぞれでアップデートが行われている。ハードウェアでは、テールゲートのロゴ変更、ウインドウトリムとDピラープレートをブラックに変更、サンシェードの厚み変更だ。音声認識内容追加などソフトウェアについては、既存車両についてもインターネットを通じたOTAでのアップデートを予定している。
車自体の性能も、今までの努力が実り、各国でBYDの車両が評価されている。アット 3は、安全性能を評価する欧州の安全性能評価プログラムであるユーロNキャップで5つ星を獲得している。またドルフィンは、ベストバイカーオブユーロ2024も獲得している。
BYDは、1995年、中国の深圳で二次電池の研究開発を始めて以来、29年間、ITエレクトロニクス、電池を中心としたエネルギービジネス、そして自動車そして公共交通に関わっていくモビリティといった領域で、事業を展開してきた。
日本進出は、2015年、京都を皮切りに、北海道から沖縄まで合計200台以上の電気バスが日本の50%以上の都道府県を走っている。日本の電気バスでは、70%以上の電気バスがBYDの電気バスである。
自動車の領域では、2023年、グローバルで302万台の新エネルギー自動車(BEV+PHEV)の販売をした。2022年に引き続き、世界の新エネルギー自動車の販売台数1位となっている。そして、そして、2024年2月までに、初めて合計650万台の新エネルギー自動車を販売している。日本ではBYDだけだが、以前報じているように、他にもYANGWANG、DENZA、FANGCHENGBAOというブランドを展開しており、PHEVの車種もある。
BYDといえば、自動車というイメージが強いのは当然だが、常に、社会に置かれている問題の解決に取り組んできたという。2008年から、新エネルギーの生産、蓄え、そして、いかに使っていくかといった新エネルギーのサプライヤーチェーンを持っている。2016年には、新たなミッションとして、地球の温度を一度下げることを宣言。暮らしに欠かせないモビリティの世界に対して、BYDの技術を、いかに活かしていくかと、考え続けている。
そして、7プラス4プラス2という数字が表す、グリーン トランスポーテーション システムで、社会に欠かせない交通ネットワークを構築してきた。7というのが、路線バスや観光バス、タクシー、そして、ゴミ収集車、建築用地の車両、そして、物流車両に一般乗車。そして、4が、空港、倉庫、鉱山、都、港という4つの特別領域においても、BYDは電気自動車を提供している。最後の2は、都市の渋滞解決をするのにふさわしい、BYDのモノレールとスカイバスの準備だ。
昨年の年末までで、BYDのグローバルな自動車のオーナーたちによる合計走行距離数が約1920億キロであった。この数字は、この地球から月まで20万往復に当たる数字だ。そして、地球に4,623万トンのCO2削減をも達成した。さらに、BYDの新エネルギー自動車のオーナーたちが、7.7億もの植樹換算となる。BYDは、社会における環境への問題解決に当たっている。
2022年の7月に日本での乗車事業への参入を発表した当時、BYDと聞いても誰も知らなかった。最初は、E-Mobilityパートナープログラムといった、毎月10名のプログラムを開催した。10名に1ヶ月間、アット 3を試乗してもらい、使い心地ですとか、生活の中でのEVの良さといったものを実感してもらうプログラムを10ヶ月間続けてきた。延べ100人近くに試乗してもらい、中には購入したオーナーも10名以上になる。
2025年末までに100店舗展開予定という、急ピッチのBYDだが、現在51拠点、うち正規ディーラーは22店舗となっている。最新の店舗はBYD AUTO 練馬だ。2023年は1月から累計での登録が1,446台だ。アット 3が1,198台、ドルフィンが248台。2月までの登録も1,700台弱まで伸びてきており、受注累計は2,000台まで届きそうだ。だが「登録累計が3,000台を超えないと、街中でBYDをちょくちょく見るようになったという実感が湧かない」と東福寺氏は述べた。そこで、3,000台を目標にしているという。
この先の新型車の投入は3番目のモデル、シールが今年の年央に登場する。今後は少なくとも毎年1つのモデルを継続的に投入していく予定だ。東京都 代官山T-SITEにおける開催を皮切りに、全国 約30箇所で、車両の展示・試乗を行う「Hello! BYD Caravan」を実施し、顧客とのタッチポイントを増やしていく。
質疑応答が行われた。
今までの販売実績の振り返りと今後の政策について
販売実績の評価につきましては、1店舗ずつ店舗を拡充していくにつれて、販売台数が少しずつ伸びていったという経緯からすると、1,446台という登録実績に関しては、ゼロスタートで見た場合に、そこそこの数字になったんじゃないのかと考えております。一方で、ドルフィンは9月に発表した当時は、全部で1,100台の目標だというふうに私の方から申し上げたんですけれども、ここはちょっと残念ながらなかなか届きそうもないなというのが正直なところです。その原因として、形式指定を取るのが遅れてしまって、まだPHP認証になっているということが挙げられます。それにつきましては、この6月にシールを発売するのと同時期に、ドルフィンの方も形式指定を取る予定としておりますので、6月以降は、そういった出荷に関わる部分での、いろいろな事前の手続きが簡素化される部分を最大限に利用して、より多くの車を全国のディーラーの皆様にお届けして、販売機会の損失が起こらないような形で供給していこうというふうに準備を進めているところです。
それから今後の導入車種に関しては、現時点である程度は決まってはいるのですが、この場でまだ発表できるような状態ではございませんので、もうしばらくは、はっきり発表できるタイミングまでお持ちいただきたいと思います。これまでの同じようなタイプの車ではない、様々なライフスタイルに合わせたお客様の要望にお答えできる車種を、中国本部の方とディスカッションしながら選んでいく予定です。
EVの開発中止など、世界的な流れが変わりつつある中で、懸念材料は
世界は日々に変わっておりまして、自動車というのがどの国にとっても、その国の大事な産業の一つであり、そしてBYD自身が、中国をはじめ、世界各国での展開においては、電気自動車は当然でありながらも、一つのツールでしかないという考え方もあるでしょう。けれども、私たちが考えてきたのが、国々に対して、電気自動車によって何がもたらしていけるかということです。その大きなスケールの中で、電気自動車の位置づけ、そして電気自動車を通じたインフラ、ライフスタイルなどですね、総合的に見ていきますと、この流れはおそらく変わらないであろうと思います。日本はEVが少ない、規模は小さいと、よくおっしゃいますけれども、この1年間を通じたことによって、ガソリン車が電気自動車を拒否するのではなく、むしろ自分が今まで選べるようなラインナップ、また車種が充分に揃っていないのが実に大きな一つの原因でありました。この1年間、日本全国の多くのユーザーたちから反応していただいたのが、ガソリン自動車と走行の間に感じたことの違いだけではなくて、これから電気自動車が、私たちが暮らしている街に提供できるものは何か考えなければならないという声もいただきました。ですから、BYDの豊富なラインナップの中から、電気自動車を選んでいけたらなという思いがむしろ強いです。そして、販売目標については、私たちがあえて新規ブランドとしてこの市場に来て、いきなり目標台数を掲げるよりは、むしろ皆さんと共に協力し合いながら、私たちが提供してくるものが、ただの移動ツールだけではないということをわかっていただくことが大事だと思っております。にかく皆さんと共に、日本でのEV社会、盛り上げていけたらいいなというのが、私たちの率直な考え方であります。
今後のBYDの日本導入モデルについて。PHEVは導入されるのか
BYDは4つのブランド構成があり、あらゆるお客様にふさわしい車種がBYDに揃っているという自負があります。ただ日本への導入になってきますと、どの車種をいつ出すかが今現時点でははっきり申し上げられないのが正直なところであります。しかしながら私たちは、販売台数の数字だけでなく、日本の消費者が自分の足になり、ライフスタイルの一部になる自動車として、どんなものが欲しいかが少しずつ分かってきました。そういったニーズに合わせながらプラス私たちが今開発していたラインナップの中でどの車種をいつ日本に投入していくかが、正直毎日模索している最中であって、今ここではこれが導入予定だとはっきり申し上げられないのが事実でもあります。そしてPHEVにつきましては、DMiというプラグインハイブリッドの車種が年々増えつつあります。昨年302万台の中でEVとの比率は半々くらいになります。その理由としては、中国の国土が広いものであって、充電インフラが隅々まではまだ行き渡っていないのも事実だからです。従いまして、BYDのDM-I PHEVが一回の充電で電気のみで走れるのは100キロぐらいなんです。このPHEVというのはガソリンを積んでいることで、安心感を持たせながら電気自動車を走っていただこうというのがむしろ今中国全土を含めてPHEVとBEV両輪で受けられていたのが現状です。日本について今現時点においては、私たちが電気自動車のみ皆さんに提供していけたらという考えであります。
PHEVは、現時点ですぐに日本導入というわけにはいかなそうだが、もし発売されれば、さらにBYDは日本での販売台数を伸ばせていけそうだと感じた。
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