ドライビング
ドライビングの感触は?
運転席へようこそ。コンチネンタル GTとよく似ている、包み込まれるようなシート、堂々としたドライビングポジション、予想以上に良好な前方視界。ノーズが下がっているため、フライングBのモチーフが上がっているのか下がっているのかが分かりにくい。この新機能は、ドライビングエクスペリエンスに影響するとは言い難い。
まずは引退する偉大なエンジンについて。これまで私たちは、フライングスパーで最高のドライビングを味わうならと、小型のV8を推奨してきた。しかし、12気筒エンジンが間もなく姿を消すということで、その愛情を後押ししてくれるものになりそうだ。W12エンジンは、最高速度333km/hを誇るフライングスパー スピードを経由して、その後ラインナップから消えていく。もちろん、すべてのベントレーは、ほぼ無限に自分好みに(あるいはそうでなくても)コンフィギュレーションできるということに変わりはない。
これは外向的なパフォーマンスカー向けのエンジンではない。なぜなら、その最も印象的なトリックは、ほとんどのドライビングシーンでのスムーズでほぼ無音に近いという性質から来ているからだ。しかし、ちょっと勢いよくジャンクションを離れると、実に酔わせるような唸り声を上げる。自己主張の強い音だが、ライバル車(あるいは、スポーツエグゾーストを装着したV8ベントレー)のような騒々しいポップ音やバーン音はない。
とはいえ、V8はこのシリーズで最もスポーティなエンジンであることに変わりはなく、フライングスパーに最高のフィーリングを求めるのであれば、おそらく最高の中間地点となるだろう。V6ハイブリッドは同じパワーと力強さを持つが、性能面の扱い方が異なる。V8が唸り声を上げながら走るのに対し、V6は一旦エンジンが始動すると、本当に頑張らなきゃ!と言っているかのような音がする。そしてベントレーでは、そういった必死感は決して明らさまであってはならない。ベントレーの完全電動化への興味深い一歩であり、このシリーズに加える価値のある、必要なものではあるが、決してクラスをリードするシステムではない。
街なかの走りは?
すべてのバージョンが、とても礼儀正しく答えてくれる。ツインクラッチ式ギアボックスは静かにギアを選択し、ドライブトレイン全体はスロットルペダルだけで簡単に操作できる。ペースを上げたいなら、スポーツモードにするか、触感のよい金属製パドルを使って操作したほうがいい。コンフォートやベントレーモードでは、コーナー進入時に1段階ギアを上げすぎてしまうなど、ちょっと眠いところがあるんだ。
レバーをマニュアルモードにして、自分でパドルを操作するのもひとつの手だ。3速か4速はほぼすべてのコーナーに適しており、圧倒的なトルクの広がりと低いレッドラインによって、2速は本当にタイトなヘアピンにしか適していない。しかし実際のところ、ギアボックスをSに設定し、ごくたまに(そして一時的に)パドルを操作したほうが、クルマはよりスムーズでスマートに感じられる。ドライバーズベントレーといえども、いくつかの領域では後席に座るべきかもしれないな…。
気合を入れて運転しても同じ?
そうなんだよね。スロットルレスポンスは、より刺激的なライバルには及ばない。デッドトラベルが数ミリあることを知るようになったとき、これはおそらく、あなたが車内の平穏を乱すような激しい加速(どのバージョンにもパワーは余りあるほどある)を望んでいることを、クルマが慎重に確認しているのだろう。
フライングスパーのその他のドライビングエクスペリエンスは実に印象的で、48ボルトの電気系統がそれを支えている。アクティブアンチロールテクノロジーは、これまで試したどのクルマよりも自然に機能し、過度なボディロールのペナルティなしにソフトなスプリングを可能にする。4輪ステアリングと相まって、2,500kgを超える車重のクルマにはない軽さ、俊敏さ、扱いやすさを感じさせるものだ。
スポーツカーとして扱える?
コーナーでアクセルを踏み込めば、末期的なアンダーステアは発生せず、4輪がハードに働く。スポーツモードは特にリア偏重のパワーデリバリーで、フロントは利用可能なトルクの31%しか得られない。また、システムがスリップを検知しない限り、完全にリア駆動となる。
決定的なのは、走行モード間の違いが顕著なことだ。もちろん、室内はささやくように静かだし、その雰囲気はどのドイツ車よりも優れている。ベントレーの大型サルーンにそのすべてを期待するのは当然だ。だが、このフライングスパーを他と区別する要素は、その多様性なのである。ノブをひねるだけで、リムジンにもスポーツサルーンにもなるのだ。