ルノー・スポールの名を冠する最後のモデルとなる限定車 メガーヌ R.S. ウルティム(Ultime)が、ついに東京オートサロン2023で世界で初公開された。メガーヌ R.S. ウルティムは、ルノー・スポールが設立された 1976 年にちなみ、全世界で 1976 台が販売される。日本仕様は、EDC と MT の導入を、そして販売価格は、600 万円台中盤を予定している 。詳細は、今春の発表時に公表される。
オートサロンのルノーブースでは、ルノー・ジャポンの小川 隼平代表取締役社長によるプレスカンファレンスが行われ、ルノー・スポールの開発ドライバーで、ニュルブルクリンク北コースで FF 車最速タイムを記録したロラン ウルゴン氏も登場し、開発秘話を披露した。
メガーヌ R.S. ウルティムの欧州での発売に伴い、メガーヌ R.S.及びメガーヌ R.S. トロフィーは生産を終了し、これらモデルの日本在庫がなくなり次第、日本での販売も終了する、というから、R.S.のファンからの注目度もとても高いようである。
さて、ここで、一旦2022年を振り返ってみよう。ルノー・ジャポンは、2022 年の販売台数が、過去最高となる 8,615 台を記録した。また、ルノー・ジャポン設立以来初めて、販売台数で日本におけるフランスブランド No.1となった。
2022 年は、ルノー・ジャポンの重要な柱のひとつであるルノー カングーが、モデルチェンジの端境期のためほとんど販売が無かったにもかかわらず、ルノーが独自に開発したハイブリッドシステムを搭載したルノー アルカナ R.S. LINE E-TECH FULL HYBRID、ルノー ルーテシア E-TECH FULL HYBRID、そしてルノー キャプチャー E-TECH FULL HYBRID の販売が好調で、既存モデルの販売も増加したことから、ルノーブランドモデルの販売台数が大きく伸びた。また、アルピーヌも新型(マイナーチェンジ)や限定車の受注、販売が好調で、販売台数が前年を上回り、ルノー・ジャポンの最高販売台数更新に貢献した。
新車販売のうち、約6分の1がE-TECHフルハイブリッドとなっており、電動化への歩みも着々と進んでいる。
隣にはアルピーヌのブースが設けられ、A110Rが展示されいた。アルピーヌは、4店舗の販売ネットワークの拡大も果たしている。この結果、昨年比140%となる230台の新車販売になった。特筆すべきは、注文をいただいた数。日本市場の2022年の年間受注は、前年の倍以上となる350台を超えた。これは過去最高の年間受注となり、フランス、ドイツに次ぐ第3位の台数であるという。2023年はルノーでは新型カングーの投入を果たし、アルピーヌでは、限定車の展開を図っていく。
グループ ルノーは、2021年、ルノー スポール カーズをアルピーヌ カーズへ組織変更を行い、グループ ルノーにおけるスポーツモデルの開発やモータースポーツは、アルピーヌ カーズの担当となった。アルピーヌは今後、電動化時代のスポーツモデルの在り方を体現していく。
さて、メガーヌR.S. ウルティムに戻ろう。1月9日にフランスでグローバル・デジタルアップデートされたが、この東京オートサロンが実車の世界で初公開となった。R.S.の最終モデルは、世界限定1976台。1976年は、ルノー・スポールが設立された年である。コーナリングスピードの向上を目的にロールを抑えたシャシー、トルセン®LSD、前輪アルミ製ハブ/鋳鉄製スリット入りブレーキディスクなど、クローズドコースでのスポーツ性能を高めたメガーヌ R.S. トロフィーの性能と装備を受継ぎながら、ルーフとボンネットに配されたロザンジュをモチーフとしたブラックマットストライブ、ブラックアウトされたロゴ、ブラックの「フジライト」ホイールの採用によって、スポーティさが強調されたエクステリアデザインとなった。 センターコンソールには、ルノー・スポールモデルのテスト/開発ドライバーで、ニュルブルクリンク市販FF 車の最速記録を持つロラン ウルゴンのサイン入りシリアルプレートが装着される。
ウルゴン氏は、2004年にルノー・スポールに入社して以来、ルーテシア(クリオ)とメガーヌの2、3、4世代目までの開発に務めてきた。そして3年前からアルピーヌA110のテスト/開発ドライバーを担当している。A110 Rの開発にも携わった。
メガーヌR.S.の開発は、主に公道で行っているが、ニュルブルクリンクやスペインなどのサーキットも使っている。日本にもたびたび訪れることがあった。箱根のターンパイクのアップダウンは、3世代目の時に、開発に盛り込んだものを考えて、4代目のメガーヌに反映させた。開発は基本的にテストライバーだけでなく、エンジニアも一緒に乗って開発をしているのがルノー・スポールと現在のアルピーヌの特徴だ。テストライバーとエンジニアが一緒に乗っていれば、どんな部分を調整していけばいいのか、もっと具体的に体で感じることができるわけだ。ハイドロリックダンパーや、フォーコントロールシステムもそのように開発をしている。シャシー、ステアリングも全部だ。エンジニアとテストライバーのコミュニケーションがあってこそ可能なのだ。
ニュルブルクリンクでは、市販化する直前に、メガーヌの3世代目からラップタイムを計測している。これは、開発完了の証明のようなものとなっている。2011年にメガーヌ 3、2014年にメガーヌ 3、2019年にメガーヌ 4で記録を出した。
ロラン ウルゴン氏のサイン入りかつ、0001から1976まであり、これまでのほぼ20年間のパッションとノウハウが完全にそこに盛り込まれているわけだ。ウルゴン氏は「自分のサイン入りというのは、もちろん嬉しいけれど、それだけではなく、皆様のおかげでこういったクルマを開発し、世の中に出せるようになったことを、とても誇りに思っています。日本の皆さんにもぜひ乗っていただきたいですね」と語った。
ルノー・スポールはアルピーヌにバトンタッチするのだが、R.S.の今まで開発していたチームがそのまま、アルピーヌを開発している。今後のアルピーヌの将来の車も、彼と彼のチームと一緒にですね、新しいブランドのアルピーヌで新しいクルマを開発していくのだ。だから、そのストーリーは引き継がれていくのだという。
ロラン ウルゴン氏にお話を伺った。
―メガーヌR.S. ウルティムのアピールポイントは何になりますか?
「2つあります。このウルティムは、R.S.最後のクルマになりますから、1976年からのR.S.の歴史を集大成するものだということです。そして、ここ20年にわたって蓄積され、チューニングを重ねてきた技術、フォーコントロールですとか、ハイドロリックコンプレッションストップ、トルセンLSDなどが搭載されていることが挙げられます。R.S.のベスト・オブ・ベストだと考えています」
―今後、R.S.のスピリッツは、アルピーヌに受け継がれていくのでしょうか?
「まさに、仰る通りです。A110の時点で、ルノー・スポールのチームが開発に関わってきていますから、今後アルピーヌはルノー・スポールのチームが引き継ぐことになります。ですから、これまでルノー・スポールで培ってきた技術やノウハウをすべてアルピーヌに投入し、ファン トゥ ドライブを具現化して参ります。R.S.の血統は、アルピーヌに受け継がれていくのです。ルノー・スポールのファンコミュニティの方々には、ご安心ください、とお伝えしたいです。これが最後だからもうなくなる、というのではなく、別のカタチでR.S.のスピリッツを内包したクルマが登場してくるのです。一番重要な、運転の楽しさは失われません」
―今回、日本で世界初発表となりましたが、どのようにお感じになられてましたか?
「私の気持ちとしましては、ここ20年間でR.S.がこれほど日本で好評を得てきたのに、日本での初発表が一度もなかったのは、フェアではないという思いがありました。開発にあたっては、富士スピードウェイや鈴鹿、公道では箱根ターンパイクなど、日本の道路でもテストを行い、日本のファン向けに満足してもらえるクルマを作ってきたという側面もあります。ですから、このメガーヌR.S. ウルティムが、日本で初お披露目を迎えられたことは、ようやく仁義を通せたようで嬉しく思います」