スイスの高級時計ブランドH.モーザーが、アルピーヌ・モータースポーツとの提携で新作を発表。驚くべきは、その内容だ。F1ドライバーのための機械式クロノグラフと、ピットクルーのためのコネクテッドウォッチという、コンセプトの全く異なる2本を同時に開発した。これは単なるロゴ提携ではなく、F1の現場のリアルな声から生まれた「本物」のツールである。
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時計ブランドと自動車メーカーの提携は往々にして、互いのロゴを交換し、既存製品にカラーリングを施すといった表層的なコラボレーションに終始しがちである。しかし、2024年に締結されたH. モーザーとアルピーヌのパートナーシップは、その常識を打ち破り、真に厳密で本格的、かつ情熱的な協力関係を築き上げた。両者が目指したのは、単なるマーケティング戦略に留まらない、技術的考察に基づいた綿密な共創であった。
スイスの高級時計ブランド、H. モーザー & Cie.(H. モーザー)は、F1や世界耐久選手権で活躍するアルピーヌ モータースポーツとのパートナーシップから生まれた2つの新作ウォッチを発表した。単なるロゴやカラーリングの共有にとどまらない「真のコラボレーション」を掲げ、ドライバーのための機械式クロノグラフと、メカニックやエンジニアのためのコネクテッドウォッチという、まったく異なるコンセプトのモデルを同時に開発。モータースポーツの最前線におけるリアルなニーズに応えるタイムピースが誕生した。それが、ストリームライナー・アルピーヌ ドライバーズエディション & ストリームライナー・アルピーヌ メカニックエディション(2本セット)だ。予定価格は10,978,000円で、2025年7月 日本入荷予定となっている。なお、2024年の限定シリーズ「ストリームライナー・シリンドリカル トゥールビヨン スケルトン アルピーヌ」のブルーまたはピンクをすでに購入済みの顧客は、コネクテッドモデルを単品で購入することも可能であるが、スイス本社まで問い合わせが必要だ。予定価格はCHF 4500.- (excl VAT)。
F1の現場から生まれた「本物」のパートナーシップ
2024年に締結されたH. モーザーとアルピーヌのパートナーシップは、「200年の歴史を持つ時計メーカーが、F1チームのパフォーマンス向上にいかに貢献できるか」という問いから始まった。その答えとして、先に行われたF1スペイングランプリの開催に合わせ、2つのモデルが発表された。一つは伝統的な機械式時計の粋を集めた「ストリームライナー・アルピーヌ ドライバーズエディション」、もう一つは最先端技術を駆使し、チームの作業効率を高めるために設計された「ストリームライナー・アルピーヌ メカニックエディション」である。
ドライバーのための機械式クロノグラフ「ドライバーズエディション」
アルピーヌのF1ドライバーたちからの「自分たちのマシンに負けないくらいスタイリッシュな時計が欲しい」という願いから生まれたのが、この機械式クロノグラフである。
最大の特徴は、H. モーザーのパートナーであるアジェノー社が開発した高性能ムーブメント「キャリバー HMC 700」を、初めてフルスケルトン仕様で搭載した点だ。マシンのメカニズムを覗き込むように、複雑な歯車の動きをダイアル側から堪能できる。
そのデザインには、サーキットからのインスピレーションが色濃く反映されている。ダイアル越しに見えるV字型のブリッジはF1マシンの三角形のサスペンションを、センターブリッジはドライバーのヘルメットを想起させる形状だ。さらに、ダイアル側に配置されたスケルトンローターは、アルピーヌA110のホイールリムを彷彿とさせ、回転するたびにエンジンとムーブメントの有機的な結びつきを強調する。
機能面では、1秒が勝敗を分けるレースの世界に対応すべく、瞬時に計測をリスタートできるフライバック機能を搭載。サブダイアルを排してセンターに分・秒表示を集約することで、高い視認性も確保した。まさにサーキットで戦うドライバーのための、アクションを体現する1本である。
ピットクルーのための作業ツール「メカニックエディション」
レースの勝敗は、ドライバーの腕前だけで決まるものではない。ピットでのコンマ1秒を削る作業、エンジニアとの緻密なコミュニケーション、そのすべてが結果に直結する。この「メカニックエディション」は、そんな舞台裏を支えるチームのために設計された、究極の作業ツールだ。
H. モーザーのCEO、エドゥアルド メイランが「時間との戦い、貴重な1秒を削る努力をより実りあるものにつなげる計測器を作りたかった」と語るように、このモデルはアルピーヌチームと緊密に連携して開発された。
スタンバイ時は静かなブラックの画面だが、ひとたび起動すれば、GMT、スプリットセコンドクロノグラフ、パーペチュアルカレンダーといった多彩な情報を瞬時に表示。特に「F1モード」では、レース開始までのカウントダウンやチームからの重要情報を通知するなど、ピット作業の効率化とコミュニケーションの円滑化に貢献する。
デジタルウォッチでありながら、12時位置にはH. モーザーのアイコンである「ファンキーブルー フュメダイアル」が配され、アナログの時刻表示も行う。デジタルの魂とアナログの心臓を併せ持つ、ハイブリッドなモデルだ。パワーリザーブは、時計機能のみで約1年、コネクテッドモードではF1グランプリ6戦分という実用性も備えている。
耐久レースのような長期的プロジェクトの幕開け
この2つの時計は200セット限定のペアで販売され、H. モーザーとアルピーヌのパートナーシップが、一過性のスプリントレースではなく、長期的な耐久レースであることを示唆している。これはプロジェクトの第一弾であり、今後のさらなる展開にも期待が寄せられる。まさに機能と情熱、そして先見性に満ちた時計製造の成果といえるだろう。
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