LOTUS最新CIを導入した新ショールーム、ロータス東京 原宿ショールームがオープンした。将来、世界中でロータス車を販売する方法を変革するという取り組みは、ロータスの「Vision80戦略」に掲げられ、それに則ったものだ。オープンにあたり、PR・Sales Promotion の中村康宏氏によるプレゼンテーションが行われた。今までと何が違うのか、詳細に見ていこう。
当日は、EMIRA V6 First Editionが置かれていたが、その周囲に無駄な装飾は一切ない。物が少なく、ミニマリストの部屋のような、クリーンなショールームだ。特徴的なのは、ドライバー同士が直接対話できる場所として作られていること。これまでのショールームは、当然ながら「クルマを(一台でも多く)売る場所」だったので、ものが多く、ごちゃごちゃしたところも多かったように思う。対話は主に、セールスマンと顧客に限られる。だが、このショールームでは、ドライバー同士、あるいはロータスに興味がある人たちが、情報交換をするといったように、売り手と買い手のみのコミュニケーションにとどまらない。
今ロータスは、まだニッチなスポーツカーブランドであるけれども、世界を舞台に活躍する、真のパフォーマンスカー会社へと変貌を遂げようとしているロータスのブランドのエネルギーを表現している。彫刻的なデザインの什器から、それが感じられるだろう。
奥にあるアルミのスクリーンがある。動きのあるデザインで、移動感を演出し、その先にある景色を眺めることもできる。また、クルマの背景として、新型をアピールしたり、特定の場所に注目させたり、強調することができる。とにかく、これまでやってきたことを、一旦リセットするというロータスの意気込みの現れが、このスクリーンではないだろうか。
それから、イルミネーションイーゼル。全てキャンバスの地で作られ、ときにスローガンを掲げるなど、随時更新ができる。そして、驚くのは、商談テーブルが一切ないこと。代わりにあるのが、フォーラムテーブルだ。ロータスのスタッフが顧客と、顧客同士と、あるいはスタッフが仕事場として、このフレキシブルでカジュアルなテーブルがフォーラムスペースの中心となる。テーブルの形状は、大型のカーブドデジタルスクリーンを最適に見ることができるように設計されていまる。最大で5名までがゆったりと座ってロータスの製品やサブスクリプションについて話し合うことができる。それから、紙のカタログはない。コンフィギュレーションしたクルマの情報や見積もりなどがQRコードで出され、後でゆっくり検討できるのだ。それから、マーチャンダイズコーナーでは、ロータスの製品からインスピレーションを受け、カーボンを用いるなど、独特な形状の「ハロープロダクト」と呼ば
れるユニットが見られ、商品を引き立てている。
什器はすべてロータスの車をイメージし、よく見るとエアインテークの形をしている。照明にも工夫が凝らされ、空間を際立たせるシグネチャー照明と、製品に光を当てるアンビエント照明を活用している。それから、床や壁などのサーフェス。「より多くのものを得るために、より多くのものを取り除く」というデザイン哲学は、店舗に採用された様々な仕上げに現れている。コンクリート壁や白漆喰の壁仕上げ 、織物調のビニール製の床仕上げ、ハニカム複合材を使用したパーティションなど、ニュートラルでありながら、コンテンポラリーな都会的要素を提供するために選択されたこれらの仕上げは、ロータスブランドをより分かりやすく表現するものである。
お店のシンボルでもある「ロータス・パイロン」は、ブランドのメインサインとして、販売店やサービスセンターの外側に設置される。だが、外部に設置不可能な店舗は、原宿のように小さいタイプを内部に設置している。外置きのものだと、高さ5.5メートル、支柱なし、そのフォルムは、逆Y字型だ。ロータスの革新性と軽さを追求するブランド精神に基づき、縦方向に切り取られた「ウィーブ」パターンを採用している。縦型エレメントには、可能な限り少ない量の素材を使用した。電動ハイパーカー、エヴァイヤに見られるような形状を反映し、ロータスが今後発表する他の車のデザインを示唆するものでもある。
小松 誠店長は、次のようにコメントを寄せてくれた。
「ロータスの新しいCIを完璧に取り入れられました。正直、今までのロータスは各市場でバラバラの売り方をしてきました。でも、これからは、ここ原宿ショールームのように、みんなが統一の認識を持って、メーカー本社とイコールになって販売していこう、という熱があります。ロータスの既存のお客様は、エリーゼやエキシージですと、ライトウェイトスポーツカー好き、という方々がメインでした。ただし、エミーラが出る前のエヴォーラ以降は1,000万円台後半の乗り出し価格のものも出てきまして、お客様層も変化してきています。とくに、ここ原宿や表参道周辺ですと、すでにポルシェに乗られている方が多いです。でも、ちょっと飽和状態だというのも感じます。お客様の中には、人と違うもの、何か特別なものが絶対欲しいっていう思われる方が必ず出てくると思うんです。そういった方に、希少性の高いロータスをおすすめできたらと思っています。プレゼンでも申し上げましたが、伝統的なものは、残すものは残して、取っ払うものは取っ払ってっていう、言い方は少し乱暴ですが、まさにその通りなのです。もちろん、これまでロータスにお乗りになられてきたお客様は、本当に大事にしながら、新しいモデルをお届けし続けないとなりません。今までロータスはあまり興味がなかったという方も、この新CIの原宿ショールームを見ていただければ、気に入っている方が増えるはずです。我々がくどくど説明するより、表から見たビジュアルのほうが、瞬時に訴求できるからです。散歩には、どこよりも適したシチュエーションですし、気軽に立ち寄っていただければと思います」
中村氏に、お話を伺った。
「ここは、ロータスの新しいCIをすべて取り入れた店舗となります。もちろん日本では初ですし、アジアでも初です」
―次に新CIにする予定の店舗っていうのは決まってるんですか?
「次は石川台のロータス東京の計画を進めています。完成は来年の5月ぐらいでしょうか。ご存知の通り、あまり広くはないので、工夫します。1階には車両とスタッフのバックヤードしかありません。今、お客様の商談テーブルがあるところに、このスクリーンが置かれ、裏に1つだけオープンなテーブルを設置する予定です。2階には、スクリーンやアパレルコーナーを作ります。でも、1階と2階では分かれてしまうので、全部のもののが写真撮れるのはここだけです。そのまま日本国内のディーラーに対しても、同じCIを導入したものに変えていくことになるでしょう」
―共通CIにするためにUKとのやり取りはかなり煩雑だったのでは?
「それが、本社がかなり積極的だったので、当方はあまり面倒ではなかったんです。実際に、今のロータスってレスポンスが、ものすごく早いんですよ。CIに関しては特に、ブランディングをしていきたいという気持ちが強いものですから、相当早いレスポンスでしたから、逆に我々がお尻を叩かれながらやっているような感じでした」
―なぜ日本に対して、そんなに力を入れて変えていこうという意思が、UKにあるんでしょうか?
「今まで展開してきた、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラに関しては、世界一日本が売ってきました。ロータスデイのイベントに対しても一番収穫がありましたし、それだけ我々がやってきたことが認められていて、日本への価値が上がっているのだと感じています。ただし、やはりうかうかしていると、韓国などはすごい勢いで今成長してきていますから、追い越されてしまいます。この前も韓国の偉い人が言ってましたけど、日本に絶対来年は負けないと意気込んでいました」
―そういう競争の中で各国が切磋琢磨してやっているのは、良いことですね。アジアも、これから共通CI化が進むんでしょうか?
「はい。いずれは全部の店舗で共通CI化を行います。でも、アジアは、まず原宿ショールームからスタートします。売り方、ロータスブランドの見せ方を全部変えていきます。例えばSNSなど、ビジュアルの配信に対しても、本国から配信されるものを50%、ローカルのものを50%など、全てもう決まりができています」
―これまでのロータスのディーラーの店舗作りと全く違いますよね。ディーラーの方は戸惑ってませんか?
「もう紙のカタログがないですからね。そういったものを全部あえて取り除くんです。そして、端末の中に全てが詰まっていますから、これを見ながらオーダーができます。売り方は変わっていますが、前の店舗よりたくさん売っていこうっていう気概や勢いが、ディーラーのみなさんから感じます」
―お客様にとっては、入りやすい雰囲気になってますよね。
「おっしゃる通りだと思います。ちょっとミュージアムっぽいというか。わかりやすく言えば、アップルストアみたいな感じになってませんか?」
―ああ、たしかに。ガラス張りで外から見えて、明るくて、クリーンなイメージがありますね。
「そこは狙いなんです。これまでだと、店に入ったら商談されて、買うか買わないかを迫られるみたいな売り方は、もうこれからはやめましょう、ということです」
―ロータスの店舗にまだ行ったことないんだけど、見てみたいっていう人は歓迎でしょうか?
「どんどん遊びに来てください。もう博物館感覚で、見に来ていただけるだけでいいです。SNSで写真映えすると思いますので、アップしちゃってください。そんな気軽な利用の仕方こそ、大歓迎なのです。既存のロータスオーナーの方はもちろん、新しい方が、一人でも多く、原宿ショールームに訪れてほしいので、お待ちしております」