史上最高のボンドカーを探せ PART1:アストンマーティン DB5


「ジェームズ ボンドは、政府機関が使う鈍器のようなものだ」と、ボンドの生みの親であるイアン フレミング氏は述べている。「寡黙で、硬くて、冷酷で、皮肉屋で、宿命的である。ギャンブル、ゴルフ、速いクルマが好き」

このフレミング氏の人物像は、過去58年間に世界で最も注目されている架空のスパイが出演した24本の映画の中で、よく観察され、自由に解釈されてきた。

そして今、ボンドの25作目の公開が間近に迫っている。今週、映画館で公開される「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」では、ダニエル クレイグが007役を降りる際に俳優としての筋肉を鍛えることができ、彼の感情を揺さぶり、本作のスタントクルーとプロダクションデザイナーはカーチェイスの本質を再び再構築しているのだ。どうやら「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」には、ボンド映画史上最も残酷なカーチェイスが描かれているようである。そこで私たちは考えた。これまでに6人の俳優が007を演じてきたが、いずれもボンドカーという共演者を丁寧に配してきた。

実際、私たちの多くは、幼少期にテレビでボンド映画を見たことが、そもそも自動車に夢中になるきっかけの一つになっている。世界中の巨大なシェアを占める007ファンは、誰が最高のボンドなのかを延々と議論しているが、では、どのボンドカーが最もクールだったのだろうか?トップギアは、俳優ごとに1台ずつ選んで、主要なクルマを時空連続体の同じ場所に集め、その歴史を探り、準科学的だがほとんど主観的なテストを行った。まずは、コネリーのDB5…。

1962年に公開された初のボンド映画「007/ドクター・ノオ」のキャスティングを開始したとき、この作品のプロデューサーは、ゲイリー グラントやジェームズ メイソンからアプローチを受けた。だが、どちらも熱意がありすぎるうえに、役柄として適切ではなかった。「私は、ボンド候補としてたくさんのイギリス人俳優と面接した。彼らにはみな、あふれんばかりの才能があったが、ボンドに要求されるような男らしさが足りなかった」と、プロデューサーのカビー
ブロッコリは語っている。「我々の言葉でいうと、ショーンは役柄を演じるのに充分なぐらい肝っ玉がでかくて、蛮勇さがあったんだ」

2作品共にヒットしたはしたのだが、1964年に作られた『ゴールドフィンガー』は前2作を超える大ヒットとなり、ショーン コネリーは、この作品でスーパースターとなった。ボンドはいかにもイギリス人といった感じの男であり、次第に市場で受けるようなキャラクターになっていった。『ゴールドフィンガー』には、ボンド映画のいいところがすべてそろっている。魅力的な悪役にロケ地、美しいボンドガール、そしてもちろん、すばらしいボンドカーである。

中でもアストンマーティン DB5は、最初の真のボンドカーといえる一台だろう。なぜなら、一連の有名なガジェットを装備しているからだ。マシンガン、タイヤスラッシャー、オイル散布装置、そしてもちろん、射出シートである。フレミングの作品では、ボンドは主にベントレーに乗っている。だが、小説版「ゴールドフィンガー」で、ボンドがアストンマーティンに乗り換えたということが、この映画のプロダクションデザイナーでクルマ好きの天才、ケン アダムズにインスピレーションを与えて、特殊装備付きのDB5が生まれた。

「僕がボンドカーのスケッチを描き、SFXスーパーヴァイザーのジョン ステアーズと検討した」と、彼は語っている。「僕は当時ジャガーに乗っていたんだが、他のクルマが駐車するときにひどくぶつけられてしまい、傷が絶えなかった。アストンマーティンのリアに付けられているマシンガンや、ボクシンググローブみたいな攻撃用バンパーガードといった装備は、僕のうっぷん晴らしでもあったんだ…。僕はご存じの通り、スポーツカーフリークだ。だから、いろいろな仕掛けやガジェットのアイディアは、いくらでもわいてきた。あれは僕の夢がつまった一台なんだ!それに、アストンマーティンのデザインをするときは、なんでもありだったし」

カロッツェリアのフェデリコ フォルメンティがツーリング用に新しくデザインしたボディに、282hpを発揮する4リッター直列6気筒エンジンを搭載したアストンマーティン DB5。このクルマを発売したばかりだったが、アストンマーティン側は最初、消極的だった。アストンマーティンのゼネラルマネージャー、スティーブ ヘギーは、「良かれと思って」DB5を2台、プロダクションに貸し出した。うち1台は、オリジナルのDB5プロトタイプだった。少人数のチーム
が独創的なアイディアを出し合い、根気よく作業し、6週間かけてDB5をガジェットカーに変えていった。どの仕掛けも気圧や液圧で作動するので、アセチレンや酸素のタンクをクルマに積み込んでいたのだ。実は、車内に煙幕を操作する装置のスペースがなかったため、スタッフがトランクに潜り込んで作動させたのだという。「僕が自分の計画をスタッフに話した時、彼らはイエスというしかなかった。でも本心では、僕のことを気が狂ってると思っていたんだろ
うね」と、ステアーズは語った。

このクルマのおかげで、この作品は冒険心あふれるものとなった。DB5を登場させたのは正しい判断である。56年を経た今、運転してみても、このクルマはGTカーであり、スポーツカーではない。もっと切り札らしいクルマであったなら、せっかくのツインカムエンジンの咆哮も、印象の薄いものとなっていただろう。もちろん、このクルマは今やヴィンテージである。数億円を投じてフルレストアされたDB5には、誰もが価値を感じることだろう。とはいえ、膨らん
だ革製のシートに腰を下ろすと、フロントウィングの真ん中に取り付けられたミラーがあまりにも小さく見え、エルゴノミクスに基づいているかどうかは、疑わしく思えてくるのだけれど。

有名な夜のカーチェイスのシーンは、1964年3月9日、パインウッド撮影所の隣にある、ブラックパークという名の500エーカー(2平方キロメートル)ほどの森で撮影された。この森は、オーリック・ゴールドフィンガーのスイス本社としても使われている。この映画で、ショーン コネリーが最後に撮影したシーンは、ティリー マスターソンの死のシーンである。この撮影が行われたのは8月12日であったが、この日に、イアン フレミングが亡くなっている。彼が創造したキャラクターはその日、成層圏に向かって飛び立とうとしていた。

ガジェット:10/10
スピード:6/10
牽引力:9/10
スキッド:8/10
スタント:6/10
スター性:10/10
合計:49

今週のトップギアのWebサイトでは、レーゼンビー、ムーア、ダルトン、ブロスナン、そしてクレイグについて記事を出していく予定なので、お楽しみに。

=海外の反応=
「これは、今週、映画館でボンド映画が上映されるということ?」
「自分的なランキングはコレ
1) 黄金銃を持つ男
2) カジノ・ロワイヤル(2006)
3) ゴールドフィンガー
4) 私を愛したスパイ」
「厳密には7人の俳優がスクリーン上でジェームズ・ボンドを演じてきましたが、60年代のスパイコメディ映画『カジノ ロワイヤル』で演じたデビッド ニーヴンは通常カウントされないんだ」
「最近まで、DB5はあまり注目されていなかった。私はDB4 GTやGTZの方が好きだったけど、最近になってその良さが分かってきた」
「ネタバレ》 DB5の勝利。なぜなら、DB5はいつも勝つからだ。惜しかったのは「Wet Nellie」と「2000GT コンバーチブル」だけ。しかし、このフォーマットではトヨタが除外されているので、さらなる快挙になっている。DB10がこのリストで躍進することはあるのだろうか」

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