【トップギア試乗】シトロエン SM

ドライビング

道路ではどんな感触??

超いい感じ、さいこー!初めの50-60kmは「慣れ」の時間だけどね。最初、クルマのノーズは薬物探知犬か?ってくらいに左右にせわしなく動くし、自分の鼻はブレーキを踏むとステアリングに突っ込むし。SMの扱いはくれぐれもや・さ・し・く・ね。

それにはちゃんとした理由がある。運転に必要な労力を少しでも軽減させようってことで、シトロエンは超初期バージョンの速度感応式ステアリングを採用してるんだ。天才だよね、発明されたのが50年も前のことだなんて信じらんないぜ。それと、ステアリングのカムが感知したスピードによって油圧が調整されるようにもなってる。あとラックはすごく直感的で、ロック間はわずかに2回転。前輪にはキャスター角がつけられてないんで、コーナーで振れても車体が傾かないから、タイヤと地面の接地が常に一定なんだ。

自動車メーカーって、しばしば保険を掛けるよな。変わったものを作っといては、大衆に受け入れられなさそうだと気付くいた途端、大人し目にものに作り替える。確かにSMのステアリングには多少の慣れが必要だってことは否めないけど、その後の相性はビックリするほどグッドなんだぜ。クセは思うほどたくさんはないし、コーナーを含めたどの速度でもステアリングをそんなに大きく切る必要がない(10度くらいでいいかな)。低速ではスーパー軽く、高速ではスーパー安定し、コーナーではスーパーシャープ。それなのにキックバックがない。少々きつめのセルフセンタリング機構には苦労させられるけど、慣れてくるうちに「なんで他のメーカーもコレ採用しねーんだろ?」って不思議に思うくらい。

ブレーキは、これまでより一層チャレンジング。油圧式で感度が超良いブレーキはリアの重量によって圧が変化するようになってるから、クルマを減速するとすべてのタイヤに同じように圧が下がるんだ。不思議な感じだね。減速する感じは…、飛び込むぞ!とみせかけてスクワットする、みたいな感じかな?ピンとこない?えっとね、優しくハンドブレーキをかける感じ。なんか、特に理由はないんだけど、湖面にバシャバシャバシャっと着水しようとしてる白鳥の画が頭ん中に浮かんだ。それよりなにより気がかりなのは、ブレーキのすべてを担ってるのが丸いボタン型の小さなペダルだってことなんですけど…。軽くペダルを踏みながら数キロ走ってブレーキを目覚めさせてから、それからもうちょっと強めに踏み込むとスムーズに停止できる。これが普通のブレーキ。はじめに無駄な走りが必要だってことと、同乗者と一緒に、コメディ映画『ウェインズ ワールド』ばりに激しくヘッドバンギングするって事だけ知っといて。

いつもよりずっとジェントルな運転スタイルを習得したところがスタート地点。これでようやくSMの本当のすばらしさを体験する準備が整った。2.7リッターの小さなV6エンジンにピーキーな感じはなく、なめらかさとか、洗練され具合とか、トルクパワーなんかは直列6気筒を彷彿とさせるほど。ギアボックスは5速マニュアルなんだけど、オープンゲートを見てみなよ、ドラムメカニズムを回転させる鉄製レバーの動きがなんて滑らかなこと!心静かにレバーを動かしてエンジンの回転数を2,500から4,500rpmに上げて、心静かにギアを高速に入れ替える。当時計測された0-100km/hは8.5秒。9.5秒だったメルセデスのSLC450よりも速かったし、7.9秒のBMW 3.0CSにも大きく劣ってないんで、SMは十分すばしっこいクルマだって言える。けど、そんなに「速く走ってやるぞ!」って感じは皆無。幸せそうな様子でスピードを一定まで上げていき、そこからは特に何の努力もすることなく、道路の表面を滑るようにただ進んでく。

外から見た感じ、超ホバークラフト。ま、中にいてもだいたいそんな感じなんだけどさ。絶妙な加減で力の抜けた乗り心地で、宙に浮いてる感をうまく演出してる。「気だるさ」、もしSMの乗り心地を表すキーワードを一つ選ぶとしたら、これだね。これに決まりだな。

魔法のじゅうたんというよりは、ウォーターベッドに近い。でも「さざ波」はうまく消されてる。運転するのは至福極まりないね。その優雅な動きに中にいられること自体が幸せ。すごくリラックスできるクルマなんだ。急ぐ感じはみじんも見せず、ワザを駆使してコーナーを回っていく様子は超おもろい。でも笑ったりなんかしないぜ、だってそれがこのクルマの本気の見せ所だとは思ってないから。クルーナーを連れてきて低い声でささやくように歌わせといて、1スポークステアリング上に指を休ませて、シートに深く身を任せて、高速道路にのって、クルマを滑らせる。ああ、最高のGTだ。しかも極上の。

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【トップギア試乗】シトロエン SM」へのコメント

  1. (NO HANDLE NAME)2021年6月26日 5:47 AM

    ドライビングの最後の段落、「てる。」ってなんやろか?
    シトロエン SM、乗ってみたいが日本じゃ希少だし本文にもあるように複雑な構造ゆえ維持が大変そうだ。

    1. 『トップギア・ジャパン Top Gear JAPAN』編集部2021年6月26日 8:05 PM

      ご指摘ありがとうございます。編集ミスでした。
      早速修正いたしました、教えていただき、感謝申し上げます。

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