2025年10月5日、雨の飛騨高山で開催されたシトロエニスト ランデブー 2025(Citroënist Rendez-vous OWNERS’ FESTIVAL– 2025)の中で、新型シトロエンC3が衝撃デビュー。伝説の2CVの精神と革新的デザイン、そしてBセグメント初のPHCを搭載。その全貌を現地から詳細にレポートする。
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2025年10月5日、岐阜県高山市の空は気まぐれだった。朝から厚い雲が垂れ込め、時折冷たい雨が地面を濡らす。しかし、そんな空模様を吹き飛ばすかのように、紅葉が始まった飛騨の美しい山々に抱かれた「高山市位山交流広場」は、シトロエンオーナーたちの熱気と笑顔で満ち溢れていた。2年ぶりの開催となるオーナーの祭典、「Citroënist Rendez-vous OWNERS’ FESTIVAL– 2025」である。
雨粒に濡れ、鮮やかな色彩を一層際立たせる個性豊かなシトロエン車が続々と集結する。歴史的な2CV(ドゥシボ)から、DS、CX、最新のベルランゴやC5 Xまで。早朝のパレードランを終えた55台が帰着すると、オーナーたちは傘を片手に愛車を眺め、談笑にふける。フリーマーケットやオフィシャルグッズの販売ブースも賑わい、会場はシトロエンへの愛にあふれた温かい空気に包まれていた。
この日、集まった多くの「シトロエニスト」たちはまだ知らない。この穏やかで、しかし情熱的なイベントが、日本のシトロエン史において、新たな時代の幕開けを告げる劇的な一日になることを。ステージの傍らには、固くベールに覆われた一台の車。その正体こそ、この日の主役であり、最大のサプライズとなる新型「シトロエン C3」であった。
第1部:ベールを脱いだ「新世代のC3」
イベントのオープニングセッションが始まると、ステージにはステランティス ジャパンでフレンチブランドを統括する小川隼平氏が登壇した。同氏は、シトロエンブランドが追求する哲学を力強く語った。
「シトロエンは、ポップでユニークな存在であり続けることを目指しています。そのために私たちが磨き上げる要素は、『シンプルさ』『サステナブル』『快適性』そして『大胆さ』。これらの哲学が、私たちのすべてのプロダクトに込められています」
続いて、同社のブランドマーケティングコミュニケーションマネージャーである中山 領氏が、シトロエンの新しいデザイン言語について解説。原点回帰ともいえる初代ロゴに近い新ロゴの採用と、今後のモデルに共通する直線と水平基調を組み合わせたフロントデザインが、ブランドの統一性を強化していくと説明された。
そして、運命の瞬間が訪れる。ステージの脇に控えていたベールが取り払われると、そこに現れたのは、誰もが予想しなかった全く新しいフォルムのコンパクトカー。日本初公開となる、新型「シトロエン C3 HYBRID」である。会場からは、雨音をかき消すほどの驚きと感嘆の声が上がった。
第2部:デザイナーが語る。新型C3に込められた「Oli」と「2CV」の遺伝子
この歴史的な発表のために、フランス本国から一人のキーパーソンが駆けつけた。シトロエンのCMF(カラー、マテリアル&フィニッシュ)デザイナー、柳沢知恵氏だ。彼女は、ボディカラーからホイール、内装の素材や色に至るまで、人の手が触れるすべての部分のデザインを担当する専門家である。柳沢氏は、新型C3のデザインの源流について、こう語り始めた。
「この新しいC3のデザインは、2022年に発表されたコンセプトカー『Oli(オリ)』から多くの要素を引き継いでいます。Oliは、軽量化と低コスト化を徹底的に追求した電気自動車で、シトロエンの原点である2CV(ドゥシボ)の『ピープルムーバー』としての精神を受け継ぐ、私たちの未来を示す一台でした」
Oliの最も革新的な特徴は、空気抵抗を減らすために極限まで寝かせるのが常識だったフロントガラスを、あえて垂直に近づけたことだ。これによりガラスの面積を減らして重量とコストを削減。その代わり、ボンネットに設けられたダクトからルーフへと空気を流すことで、空力性能を確保するという大胆な発想が用いられた。新型C3は、そのOliの哲学とデザイン言語を量産車として初めて、そして最も色濃く反映したモデルなのである。
エクステリア:機能美と遊び心の融合
柳沢氏は、実車を前に新型C3のデザインを紐解いていく。
ロゴとフロントフェイス:
「新しいロゴは、かつてのものを復刻させたデザインです。これを垂直に立てることで、どの角度から見てもシェブロンがきちんと認識できるように設計しました。フロント全体は水平基調と垂直基調を組み合わせ、Oliと同じようにロゴの下には空気が通る穴を設けています」
シェブロンのロゴは、アルミナの成形品にライン印刷を施すという、このクラスの車としては非常にリッチな仕様だという。
カラーと素材:
「ボディカラーの『ブルーモンテカルロ』は、かつての2CVに採用されていたカラーの現代的なリバイバルです。皆さんに2CVのように末永く可愛がっていただける存在になってほしい、という想いを込めました。また、バンパーやサイドプロテクターに使われている樹脂は、塗装ではなく素材そのものに色を練り込んだ『原着樹脂』です。ですから、もし擦ってしまっても色が剥げるということがありません。これもシトロエンらしいこだわりの一つです」
カスタマイズ性と伝統:
シトロエンの伝統であるツートンルーフは、デザインの初期段階から織り込み済みだ。さらに、サイドにあしらわれた「カラークリップ」はオーナーが自由に取り外して交換でき、手軽にカスタマイズを楽しめる。
リアデザインと隠された遊び心:
リアのシグニチャーランプも、フロントと共通の3つの長方形で構成され、一目で新世代のシトロエンだとわかるデザインになっている。そして、リアクオーターガラスには、パリの街並みやエッフェル塔、鶏などをモチーフにした「イースターエッグ」と呼ばれる隠しデザインが。発見すると思わず笑みがこぼれる、シトロエンらしい遊び心だ。
インテリア:自宅のリビングのような「ソファー」空間
新型C3の革新性は、インテリアにおいて一層際立つ。
「インテリアのテーマも、エクステリア同様に水平基調を大切にしています。私たちが『ソファー』と呼んでいるインストルメントパネルには、大きなシェブロン柄を大胆にあしらったニット素材を採用しました。これは、車内をまるで自宅のリビングのように感じてほしいという考えからです」
その思想は、シトロエンの真骨頂であるシートにも貫かれている。「アドバンスドコンフォートシート」は、さらに進化を遂げた。
「通常のシートは、表皮の下に2mmほどのウレタンフォームを入れるのが一般的です。しかし、このC3ではメインの素材に10mmという分厚い高密度フォームを採用しました。これにより、まるでソファのような、ふかふかで包み込まれるような座り心地を実現しています。表皮には3Dニット素材を使い、快適性とデザイン性を両立させました」
さらに、ドアポケットの内部をあえて明るい白色にするなど、実用性への細やかな配慮も忘れない。中に入れた物が見やすく、取り出しやすいようにという工夫だ。
第3部:Bセグメントの常識を覆す走り。PHCと新開発ハイブリッド
新型C3の進化は、デザインだけにとどまらない。そのメカニズムもまた、クラスの常識を打ち破るものだった。中山氏が、日本仕様のスペックを解説した。
ボディサイズとプラットフォーム:
全長4.01m、全幅1.76m、全高1.57mというボディサイズは、日本の道路環境にも最適な大きさだ。プラットフォームには、BEV、ハイブリッド、内燃機関に柔軟に対応する新開発の「スマートカープラットフォーム」が採用された。
パワートレイン:
日本に初めて導入されるパワートレインは、1.2Lターボエンジンをベースにしたマイルドハイブリッドだ。このエンジンは、従来のピュアテックエンジンで課題とされたタイミングベルトをタイミングチェーンに変更し、信頼性と耐久性を大幅に向上させている。マイルドハイブリッドでありながら、高速走行時のコースティング(惰性走行)中にはモーターのみで駆動することも可能だという。
Bセグメント初のPHC搭載:
そして最大の注目点は、サスペンションに「PHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)」が搭載されたことだ。これまで上級モデルにのみ採用されてきたこの魔法の足回りが、Bセグメントに搭載されるのはこれが初めて。これにより、路面からの衝撃を巧みに吸収し、まるで“空飛ぶ絨毯”と評されるシトロエンならではの快適な乗り心地を提供する。
価格と発売日:
注目の日本での価格は、ベースグレードの「Plus」が339万円、上級グレードの「Max Hybrid」が364万円。オプションなどを考慮すると、Max Hybridが俄然お得に感じた。イベント当日に発表され、11月6日より発売されることがアナウンスされた。
第4部:【デザイナーズ・ラウンドテーブル】開発の舞台裏とシトロエン哲学の神髄
プレゼンテーションの興奮冷めやらぬ中、会場内の別室ではメディア向けに、CMFデザイナーの柳沢知恵氏とステランティスジャパンの中山 領氏を囲むラウンドテーブルが開催された。ここでは、新型C3のデザインやプロダクトに関する、より踏み込んだ質疑応答が繰り広げられた。その詳細なやり取りから、シトロエンの哲学と開発の舞台裏がより鮮明に浮かび上がる。
Q1:従来のC3は丸みを帯びたデザインでしたが、新型が四角いデザインに変わった背景は?
柳沢氏:「このデザインの直接の源流は、2022年に発表したコンセプトカー『Oli(オリ)』です。Oliは、シトロエンの次世代のデザイン言語をすべて盛り込んだ、いわば『参照元』のような存在です。幸いにもOliの評判が非常に良かったため、その要素を抽出して量産車に落とし込んだのが、この新型C3になります。デザイン全体としては水平基調と垂直基調のキャラクターラインが特徴で、このC3は新しいロゴとデザインコードを最初からフルで組み込んだ最初の車種となります」
Q2:新しいデザイン言語を、CMFデザイナーとしてどのように解釈し、落とし込んだのですか?
柳沢氏:「私の解釈は、『プロダクト製品のような機能部品』と『ライフスタイルのソファー』という、インテリアにおける二つの要素のコントラストを追求することにありました。機能部品は家電のような佇まい、一方でインストルメントパネルの『ソファー』部分は、ライフスタイルのような柔らかいイメージです。デザインのインスピレーションは、他社の車ではなく、ライフスタイル雑誌や家具など、人の生活に溶け込む素材がどんなものか、という視点から得ています。ソファーの素材も、最終的にこのスポーティで軽快なファブリックに決まるまで、北欧調の家具のようなものなど、非常に多くの試作を作りました」
Q3:フラッグシップのC5 XとベースモデルのC3、両方を担当されていますが、CMFの共通点と差異は?
柳沢氏:「共通点は、シトロエンというブランドが持つ『シェブロン柄』という非常に強い象徴を、素材にどう組み込むかという点を常に考えていたことです。違いは、主に『スケール感』と『カラー』です。高価格帯のC5 Xでは、高級感を出すためにシェブロンのスケールを非常に小さく(マイクログレイン)し、よく見ないと気づかないほどにしています。対照的にC3では、シェブロンのスケールを大胆に大きく(マクログレイン)しました。インストルメントパネルには、ストライプのような巨大なスケールで入っています。カラーも、C3はポップで視認性の高い色を、C5 Xはもう少し落ち着いたトーンの色を採用しています」
Q4:コンパクトカーですが、ターゲットとなるユーザー層のペルソナは設定されていますか?
柳沢氏:「最近のシトロエンでは、年齢で厳密に区切ったペルソナ設定はあまりしていません。それよりも、シトロエンブランドがどういう世界観を提供し、お客様にどういう気持ちになってほしいか、というブランドベースのアプローチを取っています」
Q5:PHCサスペンションのフィーリングは、C5エアクロスなどと比べてどう違いますか?
中山氏:「C5エアクロスが『過剰なぐらい柔らかい』と表現されるのに対し、このC3では常用域で揺れのお釣りが来ないように、もう少し芯があるようなセッティングに変わった印象です。単なる『ふわふわ感』というよりは、誰もが快適に乗れるためのセッティングになっていると感じます」
Q6:エンジンと、従来課題だったタイミングベルトについて教えてください。
中山氏:「プラットフォームはCMPを低コスト化に向けて改良した『スマートカープラットフォーム』で、ハイブリッド、BEV、内燃機関に対応します。エンジンは1.2Lターボガソリン(ピュアテックエンジンベース)です。ご指摘の通り、ピュアテックエンジンで課題となっていたタイミングベルトは、この新型ではタイミングチェーンに変更され、耐久性が格段に増しています。また、このマイルドハイブリッドは、高速域でコースティングする際にモーターだけで駆動する電動走行も可能です」
Q7:ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が搭載されていない理由は?
中山氏:「これはコスト削減のためです。本国のリサーチで、このクラスのユーザーの95%がACCを使うシチュエーションがない、というデータが出ています。『使わないものであれば、なくして価格を抑える』という、ある意味シトロエンらしい合理的な考え方も導入されています」
Q8:柳沢さんは筑波大学出身ですが、大学での学びが現在の仕事にどう活かされていますか?
柳沢氏:「筑波大学は学生の自主性を重んじる校風だったので、『待っていてはだめだ』と、常に自分から動く姿勢が身につきました。海外のメーカーに入社しましたが、仕事の進め方は『日本的だ』とよく言われます。例えば、細かい仕事が得意で、シートのエンボス加工の試作をものすごい数作ったりします。コストをかけずに本物っぽく見せる試作方法を工夫したりするのも、日本人特有の『飽くなき追求』の姿勢かもしれません」
Q9:数ある自動車メーカーの中から、シトロエンに入社を決めた魅力は何でしたか?
柳沢氏:「2014年に発表された『C4カクタス』のコンセプトカーに衝撃を受けたのがきっかけです。パリモーターショーで見たのですが、市販を考えたらまず使わないだろうと思われる紫や黄色といった個性的な色が大胆に使われていました。こんなに自由な色使いができる会社なら、カラーデザイナーとしてきっと楽しい仕事ができるだろうと感じたのです」
Q10:今後の電動化と、CMFデザインの方向性はどのよう関わっていきますか?
柳沢氏:「電動化とカラーマテリアルは直接的には遠いかもしれませんが、『サステナブル(持続可能性)』というメッセージをより強く取り入れていく必要があると考えています。具体的には、このC3でも採用しているように、樹脂に塗装を施さず、傷がついても色が剥げないようにしたり、リサイクルしやすい素材を選定したりといった配慮をしています」
Q11:現在のフランスの人々にとって、シトロエンはどのようなメーカーとして捉えられていますか?
柳沢氏:「国産車なので身近な存在ではありますが、コミュニケーションキーワードとして『B Unique(ユニークであれ)』という言葉が使われています。『自分は他の人と違う』『ちょっと個性的でありたい』という意識を持った人々に訴求しています。また、いい意味で年相応ではない、メンタルが若いと感じている年配のオーナーも多い印象がありますね」
Q12:シトロエンに入社して、CMFの観点で驚いたことや、他社と違うと感じたことは何ですか?
柳沢氏:「『最新にこだわっていない』ことに驚きました。例えばボディカラーでは、業界のトレンドである高輝度・高金属感といった技術を必ずしも追いかけていません。自分たちの世界観があり、最先端の技術であってもシトロエンの美学に合わないと判断すれば採用しない。この『いい意味で最新じゃない』という部分に、非常に強い魅力を感じています」
この詳細な質疑応答からは、新型C3が単なるモデルチェンジではなく、ブランドの揺るぎない哲学と、デザイナーの強い意志と情熱に裏打ちされた、まさに「作品」であることが深く伝わってきた。
第5部:クルマは家族であり、相棒。シトロエニストたちの声
このイベントのもう一つの主役は、全国から集まったオーナーたちだ。彼らはなぜシトロエンを選ぶのか。その魅力について、二組のオーナーに話を聞いた。
日野原大輔さん(47歳)/ベルランゴ XL
パン屋を経営する日野原さんの愛車は、ロングボディが特徴のベルランゴXL。しかも希少な左ハンドル仕様だ。
「仕事でパンの配達やイベントへの搬入に使うので、とにかく荷物がたくさん積めることが第一条件でした。3列目シートを外せば広大な荷室が生まれるし、いざとなれば人も乗せられる。ハイエースという選択肢もありましたが、もっと個性的な車が良かったんです。実は、親が30年間2CVに乗っていた影響で、昔からフランス車が好きで。このベルランゴは見た目もユニークだし、何より乗っている人が少ないのがいいですね。10年以上は乗り続けるつもりです」
松永浩司さん(55歳)/C3 セントジェームス
奥様と共に参加した松永さんの愛車は、ボーダー柄が特徴的な限定車「C3 セントジェームス」だ。
「妻が乗る車として、『ちょっと変わったのが欲しい』ということでこれを選びました。ヘッドライト周りのデザインや、全体の可愛らしい雰囲気が気に入っています。フランス車の魅力は、他の人とは違う個性を表現できることと、シートの良さですね。それと、古いモデルでも新しいモデルでもオーナー同士が対等で、ヒエラルキーを感じないところ。みんな仲間、という雰囲気がとても好きです。正直、今日発表された新型C3にはあまり興味がなくて(笑)。やっぱり今のC3が一番可愛いと思っています」
実用性、個性、そしてコミュニティの温かさ。オーナーたちの言葉から、シトロエンが単なる工業製品ではなく、ライフスタイルに寄り添う唯一無二のパートナーであることがうかがえる。
第6部:飛騨のワインディングを駆け抜ける。新型C3試乗インプレッション

イベントでは、抽選で選ばれたオーナーが新型C3に試乗する機会も設けられた。幸運にもその権利を得た、C5ツアラーとDS3を所有する最年少オーナーに、その印象を聞いた。
「まず、ステアリングが軽くて驚きました。でも、ただ軽いだけでなく、フロントがスッと入っていく感じで回頭性がとても高いです。飛騨の山道を走ったのですが、登り坂でも全くパワー不足を感じさせず、ぐんぐん登っていくのが気持ち良かったですね。そして何より乗り心地。17インチタイヤを履いているのに、PHCのおかげで路面の凹凸を全く感じさせません。まるで、路面の上に絨毯をもう1枚敷いて走っているような感覚です。後部座席にも乗せてもらいましたが、足元も広くて快適でした。あと、ウィンカーの音がすごく可愛くてユニークでしたね」
一方で、気になった点も指摘してくれた。
「少し車幅が広く感じたのと、一番気になったのは、雨の日にドアを開けるとサイドシル(ステップ部分)がかなり汚れてしまいそうな構造になっている点です。これは改善してほしいかもしれません」
総じて、その走りの実力と快適性は、期待を大きく上回るものだったようだ。
伝統と革新の先に。シトロエンが見せる新たな未来
「シトロエニスト ランデヴー 2025」は、新型C3のサプライズ発表という歴史的な出来事と共に、大成功のうちに幕を閉じた。
この日、飛騨高山でベールを脱いだ新型C3は、単なるコンパクトカーの新型ではなかった。それは、伝説の名車「2CV」の精神と、未来を示すコンセプトカー「Oli」のデザイン哲学を現代に受け継ぎ、シトロエンの新時代を高らかに宣言する一台であった。
Bセグメントの常識を覆すPHCによる快適性、使い勝手と遊び心を両立させたデザイン、そして「B Unique(ユニークであれ)」というブランドの姿勢。すべてが、この小さなボディに見事に凝縮されている。
デザイナーの情熱、開発者のこだわり、そしてオーナーたちの深い愛情。そのすべてに触れることができたこのイベントは、時折雨が降るあいにくの天気であったにもかかわらず、終始笑顔と温かい空気に満ちていた。それこそが、シトロエンがこれからも、ただの移動手段ではなく、人々の生活を豊かに彩る最高のパートナーであり続けることを確信させてくれる一日となった。日本の路上で、この新しいフレンチアイコンが走り出す日が、今から待ち遠しい。
今回の「シトロエニスト ランデヴー」取材のパートナーとして選んだのは、DSオートモビルのプラグインハイブリッドモデル「DS4 RIVORI E-TENSE」である。彫刻的でアバンギャルドなエクステリアは、ただ駐車場に佇んでいるだけで強烈なオーラを放つ。このクルマと共に、東京から飛騨高山までの往復約700kmを走破した。結論から言えば、DS4は単なる移動手段ではなく、長距離移動そのものを豊かで特別な体験へと昇華させる一台であった。
キーを携え車両に近づくと、まるでクルマが目覚め、ドライバーを歓迎するかのようなライティングディスプレイが始まる。これは移動前からオーナーの感性を刺激する、DSならではの粋な演出だ。走り始めはデフォルトの「ELECTRIC」モード。バッテリーに残量がある限り、DS4は完全なEVとして、驚くほど静粛かつ滑らかに街を駆け抜ける。
高速道路に乗り、ドライブモードを「COMFORT」に切り替える。ここからがDS4の真骨頂だ。フロントカメラが前方の路面状況をスキャンし、4輪のダンピングを最適に制御する「DSアクティブスキャンサスペンション」が作動。その乗り心地は、海外メディアが「たゆたう(waft)」と表現した通り、まるで魔法の絨毯のように路面の凹凸をいなし、フラットで快適な空間を保ち続ける。システム合計225ps、360Nmを発揮するパワートレインは余裕綽々で、追い越し加速も実にスムーズだ。静粛性の高い室内と、サポート性に優れたシートのおかげで、長時間の巡航でも疲労は最小限に抑えられた。
燃費も特筆すべき点で、カタログ値16.4km/Lに対し、高速巡航では18.8km/Lという優れた数値を記録した。一方で、唯一気になったのは40Lというガソリンタンク容量だ。航続距離を考えると、長距離移動ではややこまめな給油計画が必要になるだろう。
飛騨高山周辺のワインディングロードでは、ドライブモードを「SPORT」に切り替えた。すると、DS4はそれまでの優雅な佇まいから一転、俊敏なアスリートへと変貌する。アクセルレスポンスは鋭くなり、サスペンションは引き締まってロールを抑制。ステアリングも手応えを増し、コーナーを意のままに駆け抜ける楽しさがある。さらに、シフトセレクターを「B」モードにすれば、強力な回生ブレーキが作動する。下り坂ではこれを積極的に使うことで、アクセル、ブレーキの踏み替えを減らしつつ、バッテリーを効率的に充電することができた。山道を越える頃には、空に近かったバッテリーがかなりのレベルまで回復していたのは嬉しい驚きだった。
ELECTRIC、HYBRID、COMFORT、SPORT。4つのドライブモードはそれぞれキャラクターが明確で、路面状況や気分に応じて瞬時にクルマの性格を変化させることができる。この多面性こそ、DS4 E-TENSEが持つ大きな魅力だ。
総じて、DS4 RIVORI E-TENSEは、フランスの高級ブランドDSが掲げる「サヴォア・フェール(匠の技)」を見事に体現した一台である。最先端のテクノロジーがもたらす極上の快適性と、心昂るダイナミックな走り。そして、五感を刺激する美しいデザイン。価格は6,976,000円で約700万円という価格は決して安くはないが、日常の移動から非日常の旅まで、すべての時間を特別なものに変えてくれる価値が、このクルマには確かに存在している。
400号記念:UK400マイルロードトリップ/フェラーリ F80/フェラーリハイパーカー:トップギア・ジャパン 069
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