【トップギア試乗】ポルシェ タイカン クロスツーリスモ

ドライビング

道路ではどんな感触??

クロスツーリスモは、その目的に沿ってデキるクルマだ。標準モデルのタイカンは、ポルシェが抱いた「本物のスポーツカーの走り」という望み通り、コーナーをキレッキレに駆け抜けるよう設計されてて、従来のスポーツカーではノイズと鞭打つような激しい機構を味わえていなかったことに気づかせてくれる一台。一方のクロスツーリスモは、よりファミリー仕様になってて、アウトドア志向で、より穏やかで、より幅の広い汎用性を持ってるから、もっともっといい仕事をこなしてみせる。

ではまず快適さから見ていこう。一言で言って、乗り心地は「バツグン」、いや、正直それ以上だね。お前はロールス・ロイスかベントレーか?って感じで、クロスツーリスモも自身の重量を気にもかけやしない。スプリングが道路の凹凸に合わせて吐息をつくと、ボディが浮かび上がり、衝撃を和らげながらガンガンと突き進む。どうだい、この落ち着き払ったサスペンションの動き。ここがこのクルマの最大の特徴で、終始気が抜けない通常のタイカンとは大きく違う点。コイツはリラックスの仕方を心得てるんだよ。静寂がモーターからはもちろん、あらゆるところからやって来る。ノイズ、振動、ハーシュネス(NVH)は皆無だ。タイヤのノイズだけは例外だけどさ、コイツの乗り心地の良さは異常なレベル。

道路状況がヤバくなりはじめると、昔の911と似たような要領でアクスルが互いに対抗し合い出すことがあるが、サスペンションを硬めに設定すれば万事OK(乗り心地もそんなに損ねないから)。万が一サスペンション設定ができなかったとしても、車体が安定を保ちコントロールを取り戻すさまは超スムーズなので、信頼喪失する心配はないぞ。

大して頑張らなくてもスイスイ行ってしまう、これはそう言った類の車。スピードだってお手のものだし、身軽で器用だし、乗ってる人の感覚を麻痺させるくらいに速く走る。踏ん張らないといけないくらい大変なコーナーなんてないし、それどころか恐ろしいことに何のストレスも感じてないんだ。ここまでスピードと快適さの両方を兼ね揃えてるクルマって、ちょっと他に思いつかないな。4人が乗れて、鬼速いのに穏やか。どっしりメルセデスAMG E63とは思いっきりかけ離れた世界だし、アウディ RS6、あるいはパナメーラよりもだんぜんイケてる。

騒がしいV8エンジンがついてないってのは、何か問題でも?ああ、言いたいことはわかるよ、ポルシェのガンガンいけそうなサウンドは替えが利かないってんだろ?けど、敏速で正確で完璧なほどに均衡のとれたスロットルレスポンスが生み出されんなら、その動力は必ずしもガソリンである必要はないのでは?本当に欠けてるのは「ドラマ」だろうね。しかしだ、クロスツーリスモの穏やかさに「ドラマ」なんて期待するかな?

ドラマに欠いてるからって、多くを期待できないなんて思ってくれるなよ。コイツの運転や道路をかっ飛ばしていく姿は笑っちゃうくらい魅力的なんだから。サスペンションを硬めに締めたら、あの「浮遊感や重量感」は目の前からスッと消えちまう。コントロール性はバツグンに増すのに、張りつめた感じともキツさとも無縁だ。その結構な重さを逆に活かして消えたんだろうな。コントロールが素早く効くようになるけど、ガンガンに飛ばしてブレーキを踏んだら、キレのあるグリップで車体が激しく揺れる。改めてかかる重さと、このクルマが全力で頑張ってるのを実感する瞬間。この境界のラインを曖昧にできたみたいだ。とにかくだ、まとめると、どんな道でのどんなドライビングだろうと、コイツはすばらしく「流れるように滑らかなクルマ」だってこと。

クロスツーリスモが展開する4つのモデル(4、4S、ターボ、ターボ S)は、その特性からザックリと2つのタイプに分けられる。従順タイプor曲者タイプだ。ターボ Sの加速は結構こわくて、急な制御なしのハンドルさばきが、同乗者に生ツバをごくりと呑み込ませ、顔を苦悩の形相に変える。だったら、そのパワーバンドに馴染むようにした方がいい。だとしたら、最高出力751bhpとか0-100km/hが2.9秒のクロスツーリスモはやめた方がいいかも。4Sのスイートスポットは低めの483bhpで(ローンチオーバーブースト時は563bhp)で、0-100km/hは4.1秒。このくらいがちょうどいい。

ターボ Sにも必要以上に精巧なブレーキがつけられてる。420mmの巨大なセラミックコンポジットディスクが、10のピストンキャリパーに挟み込まれている。石油タンカーをも余裕で止められそうなブレーキをもってる昨今のEVトレンドに逆行しているのは確かだ。でも、超瞬時&超強力に地面にくらいつくさまは、他のモデルのドライビングエクスペリエンスとは少し違う気がする。…と、あれこれ言ってるけど、その威力を確かめるには実際に使ってみないと。だが、0.39までの制動は電気モーターからのもので、運転の90%でそんな強力なブレーキの出番はない。それから、止めるときにはブレーキペダルを踏まないといけないってことは、ポルシェは回生ブレーキをそこまで信用してないかのようだ。このシステムをオンにしても、発進時にクルマが大きく減速するようなことはない。

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