F1のセーフティカーがアストンマーティン&メルセデスAMGに

今月末、ついにアストンマーティンがFIAフォーミュラ1世界選手権®の舞台に復帰するというのはすでにお知らせしたところ。開幕戦のガルフエア・バーレーン・グランプリのスターティング・グリッドに並ぶのは2台のレースカーだけではない。フォーミュラ1®の歴史において初めて、ウイングマークで有名なこの英国のラグジュアリーブランドが製造する車両が、オフィシャル・セーフティーカーおよびメディカルカーに選定された。

そして、メルセデスAMGと、F1のセーフティーカーとメディカルカーを分担する。アストンのセーフティーカー「ヴァンテージ」とメディカルカー「DBX」はバーレーンでの開幕戦でデビューするが、数週間後にイモラで開催されるエミリア・ロマーニャGPでは古き良きAMG GT-RとC63エステート(現在は真っ赤に塗装されている)が復帰する。

残りのシーズンは2つのメーカーによって活動が行われることになる。これは1996年ぶりのことだ。メルセデスAMGから迎えたトビアス ムアース新CEOや、アストンマーティンへの出資比率を20%まで上げるというメルセデスとの緊密な関係性が伺い知れる。

このセーフティーカーは、世界最速のレーシングカーが走るF1レースにおいて、必要に応じて介入を行い、ペースをコントロールするというきわめて重要な役割を担う。そのため、製品ラインナップ中でもっともパワフルなアストンマーティン ヴァンテージをベースとして特別仕様車が開発された。英国ゲイドンのアストンマーティン本社に在籍する、経験豊かなチームが開発したこの車両は、シャシーと空力性能に大きな改良が加えられている。FIAが定めた規格に準拠させるため、さらに数カ所の変更が加えられたこのセーフティーカーは、ヴァンテージのパフォーマンスを限界まで引き上げている。

アストンマーティン初のSUVとしてきわめて高い評価を受けているDBXは、フォーミュラ1®のオフィシャル・メディカルカーに選ばれた。これにより、緊急事態が発生した場合、そのパワーとハンドリング性能をフルに発揮して医療チームを現場に急行させることができる。

アストンマーティンヴァンテージ - フォーミュラ1®オフィシャル・セーフティーカーフォーミュラ1のセーフティーカーを担当して20年以上の経験を持つFIA指定ドライバー、ベルント・マイレンダー(独)がステアリングを握るこのアストンマーティンは、レース中つねにピットレーンで待機している。

悪天候や事故発生時、セーフティーカーはレースコントロール担当者の判断によってサーキットに導入される。かつてレースに参戦していた経歴を持つドライバーのベルント・マイレンダーとコ・ドライバーのリチャード・ダーカー(英)がセーフティーカーを運転してレースカーの先頭に立つと、各車のペースをコントロールして事態の解決を待ち、またサーキット・オフィシャルの安全な事故対応を可能にする。

F1®マシンは、理想的ではない低速走行が続くとタイヤの温度が下がってしまうため、オフィシャル・セーフティーカーもまた速いラップでサーキットを走行できなくてはならない。アストンマーティン・ラゴンダ最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアースは、その要件をもとにエンジニアリングチームに指示を出し、スポーティなヴァンテージのサーキット・パフォーマンス向上とラップタイム短縮に取り組んだ。

その結果、出力は25PS向上して535PSを達成。搭載されているのは排気量4.0リッターのツインターボ V8エンジンで、0-96km/hの加速はわずか3.5秒と圧倒的な性能を発揮している。685Nmの最大トルクに変化はないが発生域はさらに広くなり、トランスミッションを改良したことで、アップシフト時、ダウンシフト時の両方でダイレクト感、精度およびコントロール性能が向上した。ベーングリルと新しいフロント・スプリッターを組み合わせることで、200km/h 走行時に155.6kgのダウンフォースを発生させる。これは、量産バージョンのヴァンテージが同じ速度で発生する値を60kg以上も上回っている。サスペンション、ステアリング、ダンパーなどにも改良が施され、さらにアンダーボディのブレーシングも細部にわたって手直しが行われ、構造剛性も向上している。車両全周にエアロキットを装着し、ロープロファイル・タイヤを装着するアストンマーティンヴァンテージオフィシャル・セーフティーカーは、F1®マシンが走るサーキットで活躍する資格を完璧に備えている。

アストンマーティンはスポーツカー・レースの世界において輝かしい業績を残している。昨年はル・マン24時間レースの複数クラスでタイトルを手中に収め、FIA世界耐久選手権でマニュファクチャラー・チャンピオンを獲得した。これらの成功からフィードバックされた技術的な進化は、フォーミュラ1®で使われるセーフティーカーに搭載されるシステムにも貢献している。セーフティーカーが持つ独自の要件では、トップスピードからクールダウン・ラップなしにピットレーンでのアイドリング状態に戻ることができなければならない。そのため、信頼性が高く堅牢な熱管理システムが非常に重要な要素となる。数多くの栄冠を手にしてきたヴァンテージ GT4レースカーに使われ、極限状況および過酷な温度環境下での性能が証明された冷却システムを備えたアストンマーティンは、そのテクノロジーをセーフティーカーにも採用している。ボンネットには、冷却効率をさらに高めるためにエアベントが追加された。

ヴァンテージ市販車が装着するピレリ製ロードタイヤと組み合わせて、高性能なカーボンセラミック・ブレーキがセーフティーカーにも搭載され、フロントグリルには外から見えない位置にブレーキダクトが追加され、冷却性能を高めてある。

セーフティーカーの外装は、2021アストンマーティン・レーシンググリーンを纏ったアストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1®チームのマシンからヒントを得たもので、60年にわたるブランクを経てフォーミュラ1®の世界へと戻ってきたことを記念して特別に開発された。セーフティーカーのフロント・スプリッターは「ライム・エッセンス」のピンストライプがハイライトとなる。このカラーはレースの血統を物語るもので、最近では FIA世界耐久選手権(WEC)に参戦して、素晴らしい結果を残したヴァンテージが採用していたもの。フォーミュラ1®のオフィシャル・セーフティーカーが採用する他の特徴とは、FIAセーフティーカー専用のグラフィック、ボディサイドにマウントした無線アンテナ、LEDリア・ナンバープレート、そしてアストンマーティンが手がけたルーフマウント式のカスタムLEDライトバーなどがある。

このライトバーは、ルーフラインよりも高い位置にあるカーボンファイバー台座に据えられている。プロフィールはエアロダイナミクスを念頭においたもので空気抵抗は最小に抑えられ、エアフローを整えて大型リアウイングへと導くように設計されている。このオフィシャル・セーフティーカーがサーキットに導入される際には、鮮やかなオレンジがライトバーの外周部に点灯する。レースリーダーのマシンの前に到達したら、中央部にある黄色いライトが点滅して全面的な追い越し禁止を示す。安全が確保されてレースが再開となった場合は、中央部に2つ設置されたグリーンのライトが点灯。また、ヘッドライトとテールライトも点滅して、セーフティーカーの安全なコース進入をサポートする。リアのナンバープレートはLED照明によってSAFETY CARの文字が浮かび上がり、あらゆる天候条件で後方から明確に視認することができる。ライトバーには後方用カメラも設置されていて、ライブ画像を室内に設置された2番目のバックミラーに送り、コ・ドライバーが後方のマシンの動きを監視できるようになっている。

車内を見ると、市販車用のシートは、FIA認証のレーシングシートに交換され、F1®マシンと同じ6点式ハーネスを装備している。ダッシュボードには2つの画面が取り付けられており、ドライバーとコ・ドライバーに対してライブのテレビ映像と、最新のラップタイムや走行する車両の位置などのカスタマイズ可能な情報が提供される。センターコンソールもまた、大幅に変更されている。ロータリー・ダイヤルはカップホルダーの位置まで移動され、空いた場所にはサイレンの起動、無線通信、ライトバーのLED制御といったさまざまな作動を制御するスイッチ・コントロール・システムが設置される。インストルメント・クラスターとダッシュボードには「マーシャリング・システム」が統合され、ドライバーとコ・ドライバーはサーキット上で何色のフラッグが出されているかLEDの色で判断することが可能となっています。これは、F1®マシンに搭載が義務づけられているシステムと同じものです。車両の最上部と車内にはTVカメラが設置され、テレビのライブ放送を受信することができる。

セーフティーカーのドライバーであるベルント・マイレンダーは、次のようにコメントしている。「世界中のフォーミュラ1®ファンは私と同様、アストンマーティンがサーキットに戻ってくることを喜んでいます。このオフィシャル・セーフティーカーは美しく、高いパフォーマンスを備えたクルマであり、アストンマーティンのエキサイティングな新時代を示すものです」

アストンマーティンDBX - フォーミュラ1®のオフィシャル・メディカルカー2021年のフォーミュラ1®オフィシャル・メディカルカーの一翼を担うのは、アラン・ヴァン・デル・メルヴェ(南アフリカ出身の41歳)が運転するアストンマーティンDBXだ。セーフティーカーと同様、メディカルカーもライム・グリーンのアクセントを配した2021アストンマーティン・レーシンググリーンを纏っている。他の特徴としては、FIAメディカルカー専用グラフィック、LEDリア・ナンバープレート、ルーフレールに装着したLEDライトバーなどが挙げられる。

DB11やヴァンテージにも搭載される排気量4.0リッターのツインターボV8エンジンは、550PSの最高出力と700Nmの最大トルクを発生し、0-100km/h加速は4.5秒、最高速度は291km/hに達する。これらの要素により、FIA医療チームは緊急事態に迅速に対応することができます。アストンマーティンならではのサウンドを奏でるアクティブ・エキゾースト・システムにより、DBXは外見ばかりでなくサウンド面でも存在感を発揮する。

フォーミュラ1®のオフィシャル・メディカルカーには大型の医療バッグ、AED(自動体外式除細動器)、消火器2台、火傷対応キットなどといった大量の装備類を搭載しなければならないが、632リットルのトランクスペースを備えたDBXは、十分な余裕がある。

インテリアのトリムは基本的に市販車両から変更はないが、リアシート中央席は除去されて4人乗りとなり、それぞれの位置に6ポイントのセーフティー・ハーネスを備えたスポーツ・バケットシートが装着される。運転席にはアラン・ヴァン・デル・メルヴェ、残りの席にはFIAフォーミュラ1®メディカル・レスポンス・コーディネーターであるDr. イアン・ロバーツと地元の医師が乗り込む。残りの1名分は、ドライバーを乗せてピットレーンまで移送しなければならない時のために空けてある。セーフティーカーと同様、ダッシュボードには2つのスクリーンが設置されており、レースのライブ映像を提供する。もう1つのスクリーンには、最先端テクノロジーを駆使したレーシング・グローブ(手袋)が計測するドライバーの生理学的データがリアルタイムで表示され、事故発生時には、ドライバーの状態について重要な情報を手に入れることができる。またこのメディカルカーにも「マーシャリング・システム」および後方の状況を伝えるカメラ・ディスプレイが搭載される。

フォーミュラ1®のオフィシャル・セーフティーカーおよびオフィシャル・メディカルカー開発は、アストンマーティン本社のエンジニアリングチームが担当した。いずれの車両も、シルバーストーンにあるアストンマーティンの施設において高速耐久性評価やアグレッシブなサーキット走行などを初めとするテストを繰り返し、合計走行距離は15,000kmにも上った。あらゆる天候条件で性能を発揮できるよう、ダイナモ気候チャンバーでのテストも実施された。

アストンマーティン・ラゴンダ最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアースは、次のように述べている。「全従業員と同様に、私も60年の時を経て、アストンマーティンがモータースポーツの頂点であるフォーミュラ1®に復帰したことを誇りに思っています。これはアストンマーティンの重要な新時代のスタートです。私たちが製造するもっともダイナミックなスポーツカーであり、高い評価を受けているヴァンテージがフォーミュラ1®オフィシャル・セーフティーカーに、アストンマーティン初のSUVであるDBXがフォーミュラ1®オフィシャル・メディカルカーに選定されました。世界中のサーキットで、これらの車両がその役割を果たすのを目にする体験は、私たちにとって誇り高い瞬間となるでしょう」

アストンマーティン・ファンの皆様がヴァンテージベースのオフィシャル・セーフティーカーを初めて目にすることができるのは、3月12日から14日までの3日間、バーレーンで行われるプレシーズン・テストとなる。もちろん、2週間後に同じ場所で行われる FIAフォーミュラ1®世界選手権の開幕戦にも登場する。

フォーミュラ1®ガルフエア・バーレーン・グランプリ 2021は、2021年3月28日(日)の午後4時(世界標準時、日本時間:3月29日午前1時)から生中継される。

F1開幕を前に、日本のアストンマーティン青山ハウスも、外観がF1仕様に変化中。開幕までに、またディスプレイが進化していくというので、246号を走った際には、注意して見てみよう。

https://www.astonmartin.com/ja

=海外の反応=

「このヴァンテージはとてもかっこいいね、カラーコンボもナイス」

「市販車バージョン出ないかなー」

「これでアストンの売り上げが上がってくれればいいんだけど」

「 C63エステートがDBXに取って代わられるのが一番悲しいな」

 

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