アウディブランドとして日本初導入となる電気自動車、アウディ e-tron スポーツバックが発売された。1st editionというモデルで、とバーチャルエクステリアミラー仕様があり、1,327万円と1,346万円になる…解散。いやいや、解散するのはちょっと早い。このクルマの背景には、長期的なアウディの電動化計画があるのだから。エココンシャスな自動車メーカーのアウディの考え方を知っておくことは、今後の自動車業界の方向性を占うのに好材料となるだろう。
地球温暖化防止のため、CO2フットプリントを減らし、環境保全に務めるべきだという考え方を持った、アウディ。アウディ ジャパンのフィリップ ノアック代表取締役社長は、「現段階で、電動化が最終解とは言い切れないが、正しい方向性であることは確信している」と、アウディの企業理念を説明した。2020年前半だけで17,700台のe-tronが世界で納車され、ノルウェーでは乗用車カテゴリーで販売トップを記録した。アメリカでは前年比+50%の販売増だ。アウディは、国連のSDGsを意識し、CO2フットプリント、エネルギーや水の消費、廃棄物の量などに真剣に向き合っている。プレミアムブランドの工場としては始めて、ブリュッセルの工場がカーボンニュートラル認証を取得した。世界中のアウディの工場が2019年に削減したエネルギーは、71,000MWh以上の電力で、CO2排出量だと18,000t以上になるということだ。アルミもスクラップし、サプライヤーに戻して再利用を図ると、新たにアルミニウムを作るのに比べ、95%のエネルギー削減となる。
2018年9月に電気自動車のSUVモデルアウディ e-tronを世界初公開して、電動化攻勢を開始した。2025年までに、全世界の主要な市場において20モデル以上の電気自動車(バッテリー エレクトリック ビークル=BEV)を発売して、プラグインハイブリッドを含む電動化モデルの販売台数を全体の約40%にすることを目指している。日本市場ではこのアウディ e-tron スポーツバックに始まり、アウディ e-tron SUVがそれに続いていく。
パワートレインは前輪、後輪をそれぞれ駆動する、あわせて2基の電気モーターを搭載。システム最大出力は300kWで、0-100km/h加速は5.7秒を実現(Sモードのブースト時。Dレンジでは6.6秒)。95kWhのエネルギー容量を誇る駆動用バッテリーにより、一充電あたりの航続可能距離は最大405km(WLTCモード)だ。
駆動方式は2基の電気モーターによって実現する新時代のクワトロ、電動4WDです。通常は主にリヤのモーターを使用することで走行抵抗を低減し、エネルギー消費を抑える。一方で、滑りやすい路面や急加速やコーナリング時など4WD 走行が望ましいとシステムが検知した場合、フロントモーターも駆動する。電気モーターのトルクが立ち上がるまでに要する時間は、わずか0.03秒。これは従来のいかなるクワトロテクノロジーよりも遥かに鋭い反応時間であり、これによって瞬時に余すところなくモーターのパワーを路面に伝えることが可能となっている。
アルミとスチールを適材適所に配置することで軽量・高剛性を実現する複合ボディコンセプトを採用。駆動用バッテリーはボディ下部のホイールベース間に配置することで、低重心化を実現している。またサスペンションは前後とも5リンク式を採用、アダプティブエアサスペンションを標準装備し、快適な乗り心地とダイナミックな走行性能を高いレベルで両立させている。
アウディ初の装備としてバーチャルエクステリアミラーを設定。これは標準のドアミラーに代えて、小型カメラにより車両側方の視界を確保します。カメラが捉えた映像は、ダッシュパネルとドアとの間に設置されたOLEDディスプレイに表示され、明るさや最適な視角へと調整が可能です。標準のドアミラーに比べてミラーハウジングがスリム化することで空気抵抗を低減しCDは0.25、高速走行時の風切り音も低減されている。
エクステリアにはアウディ Q ファミリーをイメージさせる8角形のシングルフレームグリルを採用した。プラチナグレーのフレームや下部に配したe-tronのロゴによって他のQファミリーとの差別化を図っている。サイドビューは低く弧を描くルーフラインによりSUVクーペのスタイリッシュさを表現しています。また前後のブリスターフェンダーがクワトロの力強い走行性能を視覚的に表している。
インテリアは水平基調のダッシュボードの中央に、2つのMMIタッチレスポンスのディスプレイが上下に配置されている。アウディバーチャルコックピットをはじめとするデジタルオペレーション機能がアウディの先進性を象徴。ディスプレイをオフにすると、上部ディスプレイは周囲のブラックパネルに溶け込んでほとんど見えなくなる。また高電圧をイメージさせるオレンジカラーをインテリアにも採用することで、e-tron の個性を際立たせている。
アウディ e-tron スポーツバック 1st edition は、サイレンスパッケージ(アコースティックサイドガラス、プライバシーガラス、Bang & Olufsen 3Dサウンドシステム、パワークロージングドア)をはじめ、5Vスポークスターデザインの21インチアルミホイール、カラードブレーキキャリパーオレンジを特別装備したアウディ e-tron日本導入記念限定モデルだ。また、これにバーチャルエクステリアミラーを追加したモデルを設定している。
日本仕様のアウディ e-tron スポーツバックの充電には、標準装備する家庭用の普通AC(交流200V標準3kW、オプションで8kW対応)充電器と、主として公共の急速DC(直流)充電器とが対応している。公共の充電設備としては全国に7,800カ所に設置されているCHAdeMO規格の急速充電器(出力50kWまで)を利用可能だ。e-tron の95kWh(正味容量86.5kWh)のバッテリーを0から80%まで充電するための所要時間は、50kWの出力で1時間半である。
アウディ ジャパンではe-tronの導入にあわせて、e-tron Charging Serviceを提供し(一年目のみ月会費の5,000円と一分15円の従量料金が無料)、このサービスで提供される充電カードは全国約7,800カ所の急速充電器のうち約86%をカバーする「合同会社 日本充電サービス(NCS)」加入の充電器で利用可能だ。普通充電を含めると、21,700カ所(2020年4月現在)の充電ステーションを利用できる。
購入に際してはアウディ e-tron スポーツバックは約40万円の減税メリットを受けられ、これに加えて一般社団法人次世代自動車振興センターが交付する「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」の該当車両のため、40万円の補助金を受け取ることができる。またアウディ ジャパンでは家庭での普通充電器の設置費用をサポートするほか、自然電力株式会社との提携により、購入者には、自然エネルギー実質100%による電力を提供するプランを用意している(1年間、月額1,000円の割引を提供)。
ノアック社長は、日本で「mottainai」という言葉を覚え、無駄を出さない精神が、アウディの工場で行っている改善とつながっていると感じたそうだ。アウディ e-tron スポーツバックは、このクルマを購入することは、アウディの理念に共感するということなのだと思う。