イギリスの高速道路で317km/hを出して捕まったという事実をよくよく考えてみると、彼は社会に対する脅威なわけだが、とてもじゃないけどそんな風には見えなかった。しゃべる口調はソフトだし、心配性で落ち着かない感じで、ともすると、きゃしゃな体を包む内側の殻の中に引きこもろうとするようすも、ちょくちょく感じ取られたくらいだったから。でも、そのような態度だけから彼がどんな人物なのかを判断するのは、賢い策だとは言えない。きっと内面では、燃えるような外向性をもっているはずだ。「抑圧」だとか「権威」なんかに屈しない、フツフツと沸いてくる熱いものが出てくるのだ!…と思ったのだが、どうやら彼の場合、それはクルマの中とそのまわりでだけ見られる特性のようで、静かに語り始めた。「僕は北海道の農場で育ったんですよ」、タバコを大きく吸い込みながらスモーキーはそう言った。「日本のいちばん北にある県だから、あんまり楽しいことがなくてですね。クルマをとばすのが大好きだった父親に影響されて、僕もスピードにとりつかれちゃって。で、クルマいじりを始めたんですよ。15の時初めて買ったクルマは、ボロボロの三菱 ギャランGTO。修理にすごく苦戦してたら、地元のトヨタに勤めてる現場の偉い人がいろいろ手伝ってくれました。なんとか直せたんで学校に乗って行くようになったんだけど、16歳でクルマの運転はイリーガル。ついに先生に見つかって、即退学になっちゃっいまして」
お分かりだと思うが、これがスモーキー唯一の「権威にあらがった話」ではない。
イギリスで300km/hオーバーを出した伝説の’スモーキー’永田に会いに行く
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