都会を静かに走るエコカーの顔をして、兄貴分のラングラーを泥沼から引きずり出す。新宿歌舞伎町で平野歩夢とともに発表された「アベンジャー 4xe」は、1900Nmの狂気を隠し持つ最高にクールな異端児だ。
歌舞伎町に降り立った、小さな異端児
ネオンサインが瞬き、雑多な文化が入り乱れる東京・新宿、歌舞伎町。
泥と岩山を愛するジープというブランドが、なぜこの日本屈指のコンクリート・ジャングルを新型車の発表の場に選んだのか。ステランティス ジャパン代表取締役社長の成田 仁氏がマイクを握り、その答えを明かした。
「多彩な文化と活気が集まるこの街こそ、ジープの新たな一歩を象徴するのにふさわしい」
彼らがこの日発表したのは、「Jeep Avenger 4xe(ジープ・アベンジャー フォー・バイ・イー)ハイブリッド」。ジープ史上最もコンパクトなボディに、1.2Lの3気筒ガソリンターボエンジンと、前後2つの電気モーターをねじ込んだ、ブランド初の四輪駆動ハイブリッドモデルだ。
「都市に調和するサイズでありながら、林道や雪道にも対応できる。都市とアウトドアをシームレスにつなぐモデルです」と成田氏は語る。
なるほど。平日は表参道のカフェに横付けし、週末はそのまま長野の雪山へ直行する。そんな使い勝手の良さをアピールしたいのだろう。だが、我々トップギアが単なる「便利な街乗りSUV」の発表会でおとなしくしているはずがない。
プレゼンテーションが進むにつれ、この小さなイタリア生まれ(デザインはトリノで行われた)のジープが、とんでもない“牙”を隠し持っていることが明らかになってきた。
パワートレイン:賢いハイブリッドと、狂気の1,900Nm
アメリカンブランド事業部 プロダクトマネジメント担当の御館 康成氏が登壇し、この車の心臓部について語り始めた。
「この4xeは、都会での走行時間のほぼ半分を電気のみで走行可能です」
渋滞や信号待ちの多い都市部において、減速時のエネルギーを回収し、最も燃料を消費する発進時にモーター駆動だけで車を押し出す。高速道路でも、負荷が低ければエンジンを停止し、ガソリンを一滴も使わずに巡航できるという。
ここまでは、よく出来た現代のスマートなエコカーの話だ。
だが、御館氏の次の言葉で、会場の空気が少し変わった。
「リアアクスルに搭載された独立モーターは、22.7対1という極めて大きな減速比を持っています。これにより、ホイールレベルでなんと1,900Nmという強大なパワーを発揮します」
1,900Nm。桁を間違えているのではないかと耳を疑う。
これはコンパクトSUVの数値ではない。巨大な貨物列車か、あるいは土を掘り返す重機のトルクだ。御館氏は涼しい顔でこう続けた。
「このトルクがあれば、20%の急勾配を登り切るだけでなく、もし雪道で巨大なラングラーがスタックしていても、このアベンジャーで引き上げることが可能です。そのために、リアには頑丈な牽引フックを標準装備しています」
エコな顔をして街を静かに走り抜けながら、いざとなれば自分よりはるかに巨大な兄貴分(ラングラー)を泥沼から引きずり出す。狂気である。最高にクールな狂気だ。
シャシー:見掛け倒しを許さない「本物」の武装
1,900Nmという土木工事レベルのトルクを受け止めるため、下回りの作り込みも常軌を逸している。
通常、このクラスのクロスオーバーのアンダーガードは、コスト削減と軽量化のためにペラペラのプラスチックで作られる。しかし、アベンジャー 4xeは違う。フロント、リア、そして燃料タンク部分の3箇所に、ガチガチの「鋼鉄製」アンダーガードを装着しているのだ。
さらに、リアサスペンションには、高級スポーツカー顔負けの専用マルチリンク式を採用。ラバー塗装を施したロアリンクを備え、荒れた路面での強烈なトラクションと、オンロードでの快適な乗り心地を両立させている。
「渡河性能は400mmを誇ります。フロントバンパーには、地上400mmの高さを示すダック(アヒル)のアイコンが描かれています」
ジープ・ダッキング(オーナー同士がアヒルのおもちゃを置き合う文化)にちなんだこの可愛らしいアヒルは、「ここまでなら水に沈んでも生還できるぞ」という、サバイバルナイフの目盛りのような恐ろしい指標なのだ。
内装も抜かりない。4xe専用に用意されたウォッシャブルシートは、濡れたウェットスーツや泥だらけのスノーボードウェアのまま乗り込んでも、サッと拭き取れる撥水性能を持っている。
アンバサダー:平野歩夢が語る「自由」の形
発表会の後半、会場にはプロスノーボーダーでありスケートボーダーの平野歩夢選手が登場した。ジープ誕生85周年のブランドアンバサダーに就任した彼は、なんと人生で初めて買った車がジープであり、現在もラングラーを愛用しているという「筋金入りのジーパー」だ。
「ジープの見た目のデザインに直感的に惹かれました。スノーボードの遠征で長距離を走る時も、車内は僕にとってリラックスして考え事をするための大切な『個室』なんです」
そんな彼も、このコンパクトなアベンジャー 4xeには驚いた様子だった。
「ラングラーと比べて、エンジンがかかっているのにすごく静かですね。コンパクトでタフだから、都内の狭い道でも疲れずに運転できそうですし、雪山へのアクセスも良さそう」
ジープのタグラインである「4 Freedom(自由)」について問われた平野選手は、自身の哲学と重ね合わせてこう語った。
「何かを挑戦するのも、やめるのも、すべてにおいて自由がある。続ける先にある気づきが、自分を成長させてくれるんです」
限界に挑み続けるトップアスリートの言葉と、どんな悪路でも前に進むことを諦めないジープの精神が見事にリンクした瞬間だった。彼が出演する新CMは、地元の新潟で撮影され、Aiの新曲「Baseline」に乗せて全国で放映されるという。
都市に潜む、最強の“ステルス・オフローダー”
「Jeep Avenger 4xe Hybrid」の価格は495万円から。
導入を記念して、専用のバンパーデザインや特別なデカール、ブラックペイントルーフを纏った100台限定の「The First Edition」(509万円)も発売される。
この車を単なる「流行りのコンパクトSUV」だと思ってはいけない。
平日はバッテリーの力でスマートに、音もなく都会のネオンの下を滑るように走る。だが、その可愛らしい見た目と静寂の裏には、鋼鉄の鎧と、1,900Nmのトルクでラングラーを引きずり回す凶暴なリアアクスルが隠されているのだ。
「能ある鷹は爪を隠す」と言うが、これほど見事に爪を隠し、都会の風景に溶け込むオフローダーを私は他に知らない。
もし雪道であなたの巨大なSUVがスタックしてしまった時、オケナイト・ホワイトの小さなアベンジャーが静かに近づいてきても、決して見くびらないことだ。彼らは喜んで、あなたを泥沼から引きずり出してくれるだろう。
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