ジープ初のハイブリッド、レネゲード e-Hybridを市街地と高速で試乗。個性的なデザインは健在だが、走りの実力は?気になる燃費や乗り心地、パワートレインの評価から見えてきたリアルな長所と短所を本音でレポートする。
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ジープ レネゲード Altitude e-Hybrid5,440,000円
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ゴツかわいいルックスに一目惚れする人も多いだろう。シートを筆頭に、快適性を重視
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未熟な乗り心地と洗練性。スポーティな走りではない
2015年の登場以来、ジープブランドのコンパクトSUVとして確固たる地位を築いてきた「レネゲード」。ブランドを象徴する丸型ヘッドライトとボクシーなデザインは、多くのファンを魅了し、日本国内での累計販売台数は2025年3月末までに27,000台を超える。そのレネゲードに、ブランド初となるマイルドハイブリッドモデル「e-Hybrid」が2025年7月5日、ラインナップに加わった。
今回、その注目のニューモデルを借り出し、東京都港区三田のオフィス街から、東京湾アクアラインを経由して千葉県袖ケ浦市に至るルートで、市街地と高速道路を含めた総合的なインプレッションを試みた。果たして、電動化という新たな心臓を得た「やんちゃ坊主(レネゲード)」は、どのような走りを見せてくれるのだろうか。
試乗車のボディカラーは、「スレートブルー」。光によって見え方が違う濃い青は、レネゲードの持つ遊び心あふれるキャラクターを落ち着かせ、都会の雰囲気にもよく似合う。エクステリアは、グロスブラックのフロントグリルアクセントや、ブラックアウトされたドアミラー、ドアハンドルが追加され、全体的に引き締まった印象を与える。しかし、ひと目でレネゲードとわかるアイコニックなデザインは健在だ。軍用ジェリ缶をモチーフにしたと言われるテールランプの「X」マークなど、随所に散りばめられた遊び心は、単なる移動手段ではない、所有する喜びを感じさせてくれる。
運転席に乗り込むと、まず目に飛び込んでくるのは、刷新されたステアリングホイールと、ダッシュボード中央に鎮座する10.1インチの大型タッチパネルモニターだ。第5世代Uconnect 5を採用したこのモニターは、視認性も高く、現代的なSUVにふさわしい装備と言えるだろう。一方で、ダッシュボード全体は垂直に切り立ったデザインであり、使用されている素材の多くは耐久性を重視した硬質なプラスチックが中心で、やや安っぽさを感じる部分も残る。エアコンの操作パネルは視線から少し低い位置にあるが、物理的なダイヤルとボタンは大きく頑丈で、手探りでの操作は容易である。ただし、シートヒーターの操作がタッチスクリーン内に集約されている点は、煩わしさを感じるかもしれない。
シートの出来は秀逸だ。非常に柔らかく、それでいて十分なサポート性を提供してくれる。これならば長距離の移動でも疲れは少ないだろう。視界に関しては、アップライトなドライビングポジションとスクエアなボディ形状のおかげで、車両感覚は掴みやすい。しかし、デザイン上の特徴でもある極太のAピラーは、交差点などでの左右確認時に少なからず死角を生む。これもまた、レネゲードの個性と付き合う上での一側面と言えるだろう。
イグニッションをオンにしても、エンジンは始動せず、システムが静かに起動する。これがe-Hybridの流儀だ。セレクターをDレンジに入れ、アクセルをゆっくりと踏み込むと、車両はモーターの力だけで滑らかに、そして静かに前進を開始する。ジープが「e-Creeping」と呼ぶこの低速走行モードは、駐車場での取り回しや渋滞時のノロノロ運転で真価を発揮するだろう。
新開発のハイブリッドシステムは、1.5L直列4気筒ターボエンジン(最高出力131PS、最大トルク240Nm)に、48Vモーター(最高出力20PS、最大トルク55Nm)を内蔵した7速デュアルクラッチトランスミッション(7速DCT)を組み合わせる。理論上は、時速15-20km/h前後までモーターのみで走行し、負荷が高まるとエンジンが始動する仕組みだ。実際に三田の街中を走らせてみると、モーターからエンジンへの切り替わりは、比較的シームレスに行われる場面もあれば、時折「今、エンジンがかかったな」と明確にわかる瞬間もある。
マイルドハイブリッドパワートレインの統合はかなりぎこちなくなるのは、特にアクセルを少し深く踏み込んだ際に顔をのぞかせる。エンジンが始動し、トランスミッションが適切なギアを選ぶまでに、一瞬の戸惑いを見せることがあるのだ。7速DCTのギアボックスは、エンジン始動後にどのギアを選択すべきか混乱することが多い、という評価も、この挙動を指しているのだろう。
また、ブレーキペダルのフィーリングには若干の癖がある。減速エネルギーを回収してバッテリーに充電する回生ブレーキと、物理的なブレーキの協調制御が完璧とは言えず、停止直前に意図したよりも少し強く制動がかかる「ぎくしゃくした」感触が見受けられた。もっとも、これは慣れの範囲かもしれない。
乗り心地に関しては、装着されていた17インチのブリヂストンタイヤが良い仕事をしている。路面の細かな凹凸をしなやかにいなし、走行音も比較的静かで、市街地では非常に快適な乗り心地を提供してくれた。
芝公園ランプから首都高速に乗り、アクアラインを目指す。本線への合流でアクセルを深く踏み込むと、1.5Lターボエンジンとモーターが協調して車体を加速させる。ジープが公表する0-100km/h加速は11.2秒と、決して俊足ではない。その数値が示す通り、加速感は「非常に鈍重」とまでは言わないものの、力強いとは言いがたいのが正直なところだ。高速道路への合流や、追い越し加速といった場面では、もう少し余裕が欲しいと感じるかもしれない。
そして、高速巡航で最も顕著になるのが風切り音である。レネゲードのスクエアなボディ形状と、視認性確保のために大きくデザインされたドアミラーは、時速80kmを超えたあたりから、無視できないレベルの風切り音を発生させる。これはこの車のデザイン上の宿命であり、静粛性や洗練性を最優先するならば、他の選択肢があると言える。レネゲードと同じ金額で、より静かで快適な車は確かに存在するだろう。
一方で、直進安定性は高く、背の高いフォルムから想像するような不安定さは感じられない。ハンドリングは許容範囲で、グリップ力も十分。レーンチェンジで不必要に車体が傾くこともない。ステアリングにはパドルシフトは装備されていないが、日常的な用途でそれを求めるユーザーは少ないだろう。
高速道路で興味深かったのは、「e-Coasting」というシステムだ。アクセルペダルから足を離すと、エンジンが停止し、アイドリングストップ状態となって惰性で走行する。これにより燃費向上を図る仕組みだが、アクアラインの長い直線で試してみると、エンジンブレーキがほとんど効かない、文字通り「滑走」するような感覚に陥る。時には誤ってギアをニュートラルに入れてしまったのではないかと錯覚するほどで、この独特の感覚に慣れるまでは少し時間が必要かもしれない。
無事に袖ケ浦に到着し、今回の試乗を振り返る。WLTCモードで17.7km/Lという燃費性能は、この車重と空力性能を考えれば、十分に健闘していると言えるだろう。ジープ レネゲード e-Hybridは、完璧な優等生ではない。パワートレインの洗練性、高速走行時の静粛性、最新の運転支援機能といった点においては、同価格帯のライバルに譲る部分があるのも事実だ。ギアボックスの挙動や、やや時代遅れ感のあるインフォテインメントシステムなど、手放しで賞賛できない点も散見される。
しかし、それでもなお、この車には強烈な魅力がある。それは、他のどのクロスオーバーにも似ていない、唯一無二の「個性」だ。銅製のバスタブと同じくらいのオフロード能力しかない模倣の偽SUVが多いクラスにおいて、レネゲードは見た目も挙動も少し異なり、それだけで好感の持てる個性を与えている。
このe-Hybridモデルは、前輪駆動のみであり、伝統的なジープのDNAである悪路走破性を最優先したモデルではない。だが、その成り立ちは、現代の市場が求める環境性能と、レネゲードが本来持つキャラクターとの間で、ジープがいかにバランスを取ろうとしたかの証左でもある。
544万円という価格は、決して安価ではない。合理的な判断を下すならば、Hyundai コナをはじめ、より洗練され、運転が楽しい選択肢が視野に入るだろう。だが、車選びは常に合理性だけで決まるわけではない。レネゲードは、おそらくこのクラスで唯一「感情で買う」ことを許される車なのではないだろうか。そのデザインに一目惚れし、ジープというブランドが持つ物語に共感するならば、多少の欠点には目をつぶれる。e-Hybridの追加は、そのユニークな個性を維持したまま、現代的な効率性を手に入れたいと願う、新たなファン層への魅力的な提案なのである。
写真:上野和秀
アルファ ロメオ 33 ストラダーレ/ランド ノリス✕R32 東京ナイトドライブ/R35日本取材:トップギア・ジャパン 068
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