燃費といえば、ルノー。そんな概念が一的な価値観になってきそうだ。SUVのアルカナに続いて、ルーテシアにもE-TECH HYBRID搭載モデルが日本に導入された。E-TECH HYBRIDは、F1で培ったノウハウを活用した、ルノー独自開発のハイブリッドシステム。現在の日本における輸入車では、燃費No.1がこのルーテシア E-TECH HYBRID(25.2km/L)、No.2がアルカナR.S. LINE E-TECH HYBRID(22.8km/L)と1-2フィニッシュを獲得している。
1990年に初代が我々の道を走ってから約30年、2019年に発売された5代目ルノー ルーテシアである。日産と共通のCMF-B(Common Module Family-B)プラットフォームを採用し、スペース、安全性、軽量化、技術力の向上が図られたという。
外見は、先代のMk4よりも短くなり(全長の12mm短縮はそれほど目立たないが)、幅と高さが少し増えたが、室内のスペース、積載量、容積は増えている。特にフロントのスペースが大幅に拡大されている。ただし、ウィンドウラインが高くなったため、後部座席の風通しは少し悪くなった。
LEDヘッドライトが全車種に採用され、「C」字型のデイライトランニングライトが搭載されている。よりシャープな折り目、ボンネットの特徴的なライン、Cピラーに隠されたリアのドアハンドル、フロントグリルの大きなルノーのバッジ、車を視覚的に広げて見せるい美しい水平線を有している。このデザインは、人を恐れさせることもなく、とりたてて画期的というわけでもないが、とてもクリーンで鮮明だ。
ローレンス・ヴァン・デン・アッカー(当時ルノーのコーポレートデザイン担当上級副社長、現在はデザイン部長)の意図が、4代目のルーテシアをクリーンアップすることだったとすれば、その目的は達成されたことになる。ルーテシアは2013年以来、ヨーロッパで最も売れているBセグメントのスーパーミニであるため、外観のオーバーホールは考えられなかった。これは依然として見慣れたルーテシアを整理し、現代的にしたものである。
走り出すとCセグメントのアルカナとは違った感じだ。端的に言うと、とても軽い。アルカナに比べて160kg軽量化されているので、誰もが乗り比べた際にはそう感じられるはずだ。走り出しはモーターのみで、だいたい40km/hくらいが目安だ。40-80km/hくらいまではモーターとエンジンが併用され、レスポンスのよい加速感が味わえる。そして、このルーテシアが最も優れているところは80km/h以上の高速域。他社のハイブリッドだと、高速域ではエンジン一辺倒という感じで、ガソリン車となんら変わらないものが多いように感じている。だが、このルーテシアは、エンジンがメインなものの、追い越しなどパワーが必要な場合には瞬時にモーターが介入し、これぞハイブリッドならではという高速走行が楽しめるのだ。ドライバーが「パワーーーーー!」(なかやまきんに君というよりは、ジェレミー クラークソンの感じで叫びたい)と心の声を発すると同時にモーターがアシストしてくれるのだ。
減速時には、減速エネルギーの回収を、そしてブレーキペダルを踏むと回生ブレーキが作動する。パネルに現れるエネルギーフローの表示が楽しいので工夫してみたくなり、テクニック次第では最大40%の燃料削減が可能になる。そして、以前より乗り心地がずっと良くなっている。サスペンションは、このクラスのクルマで期待されていたよりも、荒れた路面から身体を隔離してくれ、段差やくぼみのショックから素早く回復させてくれるので、移動する間、揺らされることなく過ごすことができる。高速道路でのエンジン音や風切り音もほとんどなく、路面の滑らかさにもよるが、通常はタイヤの唸り声が主なサウンドになる。ルーテシアが持つコンプライアンスと相まって、クルージングを楽しむことができるのだ。
価格は、329万円と、同じクラスではかなりお買い得に思う。競合者はフォルクスワーゲンポロ、プジョー 208、ミニ ハッチ、マツダ 2、アウディ A1、トヨタ ヤリスやホンダ フィットあたりが挙げられるだろうが、十分に競争力を感じた。じつは今回試乗させてもらったのは15万円高いレザーパックのオプションがついた方だ。ラグジュアリー感を味わえるのだが、価格が優先事項の人にはちょっときついかもしれない。
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