【試乗】100万円で買える傑作ホットハッチ! ホンダ シビック タイプR(EP3)、VTECの魅力を再評価

ホンダの誇るVTECエンジンと極上のマニュアルトランスミッションを「箱」の中に詰め込んだ、2代目シビック タイプR(EP3型)。イギリスで生産され「ブレッドバン(パンの配達車)」の愛称で親しまれたこの名車は、なぜ今でも多くの車好きを虜にするのか? 英国Top Gearのジャーナリストが、高回転で吠えるNAエンジンの魅力と、現代の車が失ってしまった「真のホットハッチ」の熱狂を振り返りながら、ユーモアたっぷりに試乗レビューをお届けする。

以前、こいつには何度かお目にかかったことがある。実際、20年前の私は「最高のホットハッチ」を決めるという終わりのない戦いの中で、毎日のようにタイプRを運転していたような気がする。ああ、ホットハッチ。彼らのことを覚えているだろうか? このEP3(※1)を運転する前、私は当時のことを思い出そうとした。私の記憶では、シビックの強みはエンジン――いや、パワートレイン全体であり、弱点はシャシーだったはずだ。

だが、どうやら私は記憶違いをしていたようだ。なぜなら、シャシーは最高だからだ。むしろ、足を引っ張っているのはステアリングの方だったのである。ともかく、みんながこのシビックのことを口を揃えて絶賛するのには理由がある。そう、先代にあたる1997年のFK9(※2)はVTEC(可変バルブタイミング機構)を備えていたが、ヨーロッパのホットハッチの型には完全には収まっていなかった。我々はそれをどの箱(カテゴリー)に分類すべきか分からなかったのだ。

我々を助けるためか、ホンダはその次世代モデルを「箱」の形にした。EP3はすぐに「ブレッドバン(パンの配達車 ※3)」というあだ名を付けられた。1つの角度で傾斜したフロントエンドと垂直に切り立ったテールが、粋に縮んだMPV(ミニバン)のような雰囲気を醸し出しており、なんとも奇妙な見た目である。当時はピープルキャリア(ミニバンのこと)が大流行していたし、おまけにホンダは、まともな後部座席と315リットルのトランクを備え、EP3の室内を実用的なものに仕上げていた。しかし、我々が汗ばんだ手のひらをズボンにこすりつけるほど興奮した理由は、そこではない。

彼らはギアレバーをダッシュボードから生やしたのだ。程よく高い位置にあり、同じく素晴らしいステアリングホイールから手のひら一つ分しか離れていない。そして、極上のレカロシートと、クリアな白い文字盤のメーターを押し込んだ。見た目がしっくりくるのと同じくらい、操作感もしっくりきたのだ。

ドライビングポジションが高く感じられたのを覚えている。しかし、我々全員がクロスオーバーSUVに洗脳されてしまった今となっては、そうでもない。また、これがちょうど過渡期(境界線)に位置していたことも覚えている。フォルクスワーゲン ゴルフやルノー メガーヌと同じサイズと実用性を持ちながら、ルノー クリオ(日本名:ルーテシア)やミニのような姿勢と熱意を備えていた。今となっては大きく感じないが、それでも相変わらず力強くアスリートのようで、機敏である。

ただ、今は一旦、こいつの目を覚ましてやらなければならない。まるでオランジーナ(※4)のようだ。ダラダラと走っていると、一体何がそんなに騒がれているのかと不思議に思うだろう。乗り心地は少し木のように硬く(ウッディで)、エンジンはトルクがゼロだ。これほど正確なコントロール系を操作する喜びはあるものの、自分が偉大なマシンを操縦しているという感覚は得られない。自分からそれ(偉大さ)を掘り起こしに行かなければならないのだ。

どうすのかって?振ってやるのだ。回転数を呼び覚ませ。すると、こいつは6,000rpmでハッと目を覚まし、トリプルショットのエスプレッソを静脈注射されたかのように猛然とダッシュし、吸気音が狂ったように吠え立てる。「ホンダはVTECシステムの機械的な故障を一度も起こしたことがない」という主張に真実味があるかどうかは知る由もないが、絶対に壊れない(破裂しない)ように感じられる。

そして、そのすべての段階において、素晴らしいギアシフトの1つがそれに寄り添う。手のひらにぴったりと収まる冷たくて小さな金属のトローチ(シフトノブ)が、ゲートの中でカチッと音を立てて、機械的なバレエを披露する。優れたホンダのパワートレインを体験することは、すべての車好き(カーエンスージアスト)にとっての義務(マスト)だ。これでなくてもいい、S2000でも初代NSXでもアコード タイプRでもいい。しかし、絶対にマニュアルで、絶対に自然吸気(NA)でなければならない。

エンジンが全力を尽くすにつれて、サスペンションも新たな作動レベルを見出す。ここにはアダプティブダンパー(電子制御サスペンション)などないが、まるであるかのように感じられる。のんびり走っている時は少し硬くて木のようにギクシャクしているが、より多くの仕事を与えられると、私が完全に忘れていたレベルの流暢さ(しなやかさ)を見せるのだ。

少しのロールを伴いながらコーナーに飛び込み、後輪の片方を空中に持ち上げ(インリフトさせ)、キビキビと綺麗に回り込む。デフ(LSD)はないが、少なくとも乾いた路面ではそれがなくて寂しいと思うことはないだろう。あなたの手にあるのは完全なパッケージであり、熱意に満ちたビーグル犬のような車なのだ。

EP3は小さな傑作(ミニ マスターピース)だ。もしあなたが馬鹿げた過走行距離を恐れないなら(恐れる必要はない)、5,000ポンド(100万円)以下で手に入れることができる。しかし、これだけの才能にあふれているのに対し、ステアリングが無口(インフォメーションが乏しい)なことには驚かされる。

まあいい。どうにかなるさ。後継のFN2型(※5)に乗るよりはずっとマシだ。あれは本当に木でできたシャシーを持っていた。少なくとも、私の記憶ではそうだった。

ヒーローポイント: 運転するのが最高に楽しい。おまけに驚くほど実用的。
ゼロポイント: ステアリングのフィールがどうやって(開発陣の)網の目をすり抜けてしまったのか分からない。でも私なら我慢できる。

【補足・注釈】
※1 EP3:2代目シビック タイプRの型式。イギリスのスウィンドン工場で生産され、日本に逆輸入された。
※2 FK9:原文ママ。正しくはEK9(初代シビック タイプR)のこと。イギリスのジャーナリストのちょっとした勘違い。
※3 ブレッドバン(Breadvan):食パンの配達バン。イギリスで箱型の車を愛着を込めて(あるいは揶揄して)呼ぶ表現。
※4 オランジーナ:果肉が下に沈殿するため「振ってから飲む」必要があるフランス発祥の炭酸飲料。高回転まで回さないと真価を発揮しないVTECの比喩。
※5 FN2:欧州市場向けに開発された3代目シビック タイプR。リアサスペンションがトーションビームに変更されたことなどで、一部のファンやメディアから辛口の評価を受けた。

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新車にリースで乗る 【KINTO】
=海外の反応=
「こういう2000年代初頭のVTEC搭載のホンダ車を運転すると、5000rpm以下のトルクがまったくないから、現代の車がいかにターボの恩恵を受けているかを実感するよな。でも、それ以上の回転域でのVTECは中毒性があるし、極上のマニュアルと組み合わさって、この時代のホンダ車を愛さずにはいられない」
「EP3型シビック タイプRの問題は、あまりにもありふれていて安いから、寿命のギリギリまで乗り潰されていない、あるいは酷い改造を施されていない、あるいはその両方じゃないまともな個体を見つけるのが難しいってことだ」
「数日前にEP3のタイプRを見たけど、約1.6キロ(1マイル)離れたところからでも音が聞こえたよ。だってオーナー(年齢確認されずにモンスターエナジーを買えなさそうなガキ ※6)が、バカみたいに不快な排気音のマフラーをつけてたからな」
「↑ Top Gearが過去の車を振り返るようになってから、しばらく経つな。安っぽい中国製の金属(あるいはプラスチック)の車で市場が息詰まっているのはわかるけどさ……」
「↑ Top Gearはほとんどの新車がつっっっまらないってことに気づいたんだよ…」
「↑ どちらかというと、ホンダがかつては『みんなが気にかけるような車』を作っていたということを思い出させてくれる記事だと思う。今や彼らは、そもそも車を作らないようにしようとするビジネスに専念してるからな」
「↑ ホンダはビジネスとして自爆するためにできることは何でもやってるだけさ」
※6 イギリスでは、エナジードリンクの購入に16歳以上という年齢制限を設けているスーパーや小売店が多い。

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