【緊急分析】ホンダのEV「0シリーズ」開発中止は、自動車業界崩壊の予兆か?2.5兆円損失の衝撃と深まる謎

ホンダが突如として発表した新型EV「0シリーズ」およびアキュラ「RSX」の開発中止というニュースは、世界の自動車業界を震撼させている。2024年に未来を見据えた野心的なEV哲学を掲げたばかりのホンダが、わずか18か月でそのすべてをゴミ箱へと放り投げた。背景には米国の関税リスクや中国メーカーとの競争敗北、そしてEV需要の急激な冷え込みがあるという。2.5兆円もの損失を計上してまで撤退を選んだホンダの決断は、世界的なEV転換の終焉を意味するのか。英・BBCトップギアの執筆陣が、この「自動車業界の大御所による前代未聞の撤退劇」の深層を、海外の辛口コメントを交えながら徹底解説する。

2024年10月、私はホンダの誘いを受け、「未来」を見に行った。それはホンダの未来であり、電気自動車の未来……いや、自動車業界全体の未来そのものだった。舞台は当然日本。西洋人である私にとって、日本は常に我々の世界より30年先を行く世界への入り口のように感じられる。普段は秘密主義のホンダが、この時はエキサイティングな姿を見せた。そこで提示されたのは新型車ではなく、クルマ作りそのものの新しい哲学だった。そして18か月後の2026年初頭、ホンダはその哲学を盛大にゴミ箱へと放り投げたのである。

誤解のないように言っておくが、ポルシェが年間利益の92%減を記録し、フォルクスワーゲンが2030年までに5万人を解雇すると認めるような状況下にあっても、ホンダの「ヒーローからゼロへ」の転落劇は、驚愕するほど、痛々しいほどに深刻だ。ホンダはこれまで、EVに関しては非常にクールに振る舞ってきた。「テスラの追随に躍起になるよりも、利他的で、善循環を生むようなやり方でライバルを設計できるまで飛び込むべきではない」と主張していた。電動シティカー(可愛らしくも高価な「ホンダ e」)への挑戦は崇高だったが、利益を生まない失敗に終わった。我々は「多くの教訓を得た」と聞かされていた。

その結果生まれたはずだったのが「0シリーズ」だ。かつて世界に約30年の遅れをとっていた公共交通機関を劇的に変えた「0系新幹線」にちなんで名付けられた、全く異なる電気自動車群である。英国では、高速鉄道を誰かの庭の下に通すかどうかで今も議論している間に、新幹線は1964年以来65億人を運び、一度も死亡事故を起こしていないのだ。

日本人が大胆なエンジニアリングの挑戦に心を決めた時、彼らは侮れない力となる。強大でありながら細心。革新的であると同時に思慮深い。だからこそ、0シリーズは過激だった。単に巨大なバッテリーを積んだり、滑らかなボディを作ったりするのではなく、一つのマントラを貫くよう(繰り返し)言い聞かされていた。それは「薄く、軽く、賢く(thin, light, wise)」だ。

「薄く」とは、バッテリーをスリムに設計し、フロアを食い荒らすことなく屋根の高さを低く(空気抵抗を減らす)保つこと。バッテリーケースの装甲も同じアプローチがとられた。ホンダは、競合他社より6%薄く、それでいて強度に優れたバッテリーケースを作る巨大なロボットプレス機を披露した。これら巨大なプレス部品は、ライバルが60以上の金属パーツで作るところを、わずか5つで作られていた。

必要な機械は巨大で高価だった。新しい工場に設置され、新たな訓練を受けたスタッフが配置された。経費は惜しまなかった。私は迷宮のような工場を歩き回り、その設備に圧倒され、投資額に口を開けた。まるで宇宙計画のようだった。推進力に関しても同じだ。ホンダは業界標準より40%小さいインバーターを開発した。新しいモーターは、以前のものより内部摩擦が17%少ない。ホンダによれば、これにより12マイル(約19km)の航続距離が追加され、その分バッテリーを小さくできたという。「賢い」。

つまり、善循環が回り続けたのだ。スリムなパワートレインのおかげでキャビンは広く、軽量化により効率が上がり、充電も速くなった。コストも抑えられ、価格も下がった。低く、軽く、速い車は、運転していて楽しい車だ。ホンダは全新型のステア・バイ・ワイヤや、先進的な自動運転支援も約束した。ホンダの新しい考え方だ。これらすべてを安く実現できるわけがないことは、言うまでもない。

しかもこれは、単なる限定フラッグシップモデルの話ではなかった。ホンダは0シリーズを、どんどん増えていく家族のようなファミリーだと強調していた。まずはスタイリッシュなサルーンと角張ったSUV。その後ろにクロスオーバーが数台、さらには大きな3列シートのXXLモデルまで控えていた。0シリーズはBMWの「ノイエ クラッセ」に対するホンダの回答だったのだ。BMWはすでに印象的なiX3でそれを実行に移し、第一波の終わりまでに40台もの新モデルを送り出そうとしている。

しかし、警鐘は鳴らされていた。良心的な日本人エンジニアが提示したスライドの一つに、0シリーズの最初のモデルのバッテリー容量は80〜90kWhで、EPA航続距離予測は約300マイル(約480km)になるとあった。アメリカのEPA試験は欧州のラボ試験よりも厳しいとはいえ、300マイルでは大したことはない。テスラ モデル3がより小さなバッテリーで予測する航続距離より100マイルも少ない。ホンダはBMWがi5で提供するものと同等だった。だが、i5は古い技術だ。それはバッテリーを積んだエンジン車であり、最先端の衝撃波や青天井の思考ではない。

しかし、ホンダがこの壊滅的な停止命令を下した理由はそこではない。ホンダは地政学的な緊張、トランプ政権の関税、EV需要の冷え込み、そしてEVへの完全移行という期限をぐらつかせる各国政府を非難した。どれも納得できる話だ。ニュースで「前代未聞の危機」という言葉を聞かずに1週間過ごせたことがいつあったか思い出せるだろうか? コロナ以降、我々は絶え間ない混乱の中にいる。

0シリーズの本格生産まであと数か月というところで、工場には既に設備が入り、ディーラーは訓練を受け、カタログも印刷され、何年分もの研究開発費の回収を待つばかりだった。その状況でホンダは、2.5兆円、つまり約115億ポンドを帳消しにすることの方が、実際にEVを売ろうとするよりもリスクが低いと判断したのだ。

2024年にこのプロジェクトの規模をこの目で見た私にとって、それはかなり恐ろしい考えだ。特に、フランス、ドイツ、イタリア、日本の自動車会社——中国を除けば、どこでも同じような会話が交わされているはずだからだ。

破滅を唱えるつもりはないが、自動車業界がいずれ大魚を逃すだろうという不気味な予感がずっと漂っていた。誰もが知るメーカーが生き残れないかもしれない。問題は、この容赦のない荒野で、大きすぎて倒せない(too big to fail)企業など存在するのか、ということだ。

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=海外の反応=
「『0シリーズの最初のモデルは、80〜90kWhのバッテリー容量で、EPA航続距離予測は約300マイル(約480km)になる』……だって?
彼らはどんな理由を並べようが自由だが、結局のところ、登場した瞬間に終わっている(DOA:Dead on Arrival)車(ファミリー)の開発に何十億も費やした、という事実に変わりはないんだよ。実際には『2つ』のファミリーだ。彼らはソニーと共同開発した車も持っていて、それも8万〜9万ドルくらいするくせに、航続距離は極めて平凡で印象に残らないものだ。だから、彼らはソニーとの件からも、ホンダ eからも、CR-Zからも何も学んでいないんだ。新しいプレリュードでもまた同じことをやろうとしているしな。
この期に及んで、中国勢が業界を混乱させているだの、COVID以降ひどい状況だだのと言い訳してもいい。だが、ホンダ……悪いことは言わない、問題はお前自身だぞ」
「多くの老舗ブランドが電気自動車というコンセプトに苦戦しているのを見るのは、実に興味深いことだね。ヨーロッパ勢はなんとか態勢を立て直しているようだが、日本勢は完全に遅れをとっている。悪名高いほど硬直的な企業構造が関係しているんじゃないか?」
「私はとある日本の大手サプライヤーと間接的に仕事をしているが(間接的に、というのは、彼らのテスト結果を常に待たされているという意味だ)、彼らの様子から言わせてもらうと、彼らは極めて柔軟性に欠けているだけでなく、納期や品質基準を満たすという点において非常に信頼性に欠ける。そのくせ、日本語で書かれた、実に包括的で膨大なドキュメントやレポートだけは提出してくるんだ。ただし、我々が見たい『属性(データ)』が含まれていないようなやつをね。
日本が、遊び心のために不謹慎なほど巨額の金を無駄遣いしてきた歴史があるのは否定しないよ。レクサス LFAを見てみな。だが、それは持続可能なビジネスじゃない。規模を縮小して国内市場に特化するなんて戦略も、もう通用しない。今の日本は20年前とは違うんだから。
ホンダは適応し、変革し、より良くなる必要がある。さもなくば、規模を縮小して二度と拡大できないリスクを負うだけだ。ホンダは日本そのものを象徴しているよ。70年代に70年代を迎え、そのまま永遠にそこに留まることを決めたんだ」
「それこそが日本の核心だよ。柔軟性がないどころか、何かをやり始めると、他のみんなが先に進んでいるのに、完璧を目指して永遠に時間を費やしている。うまくいく時は偉大なものを生み出すが、それ以外は完全にイライラさせられる。
トヨタはLFAで完璧を目指すあまり、ようやく登場した時にはすでに時代遅れになっていた(エンジンや構造は別として)。フェラーリのようなライバルは458のようにデュアルクラッチへ移行していたのに、LFAは時代遅れのシングルクラッチだったからな。
先代の日産GT-Rが良い例だ。登場した時は革命的だったが、更新されずに生産され続けた。ようやく打ち切られた時には古代遺物になっていたんだ。かつてはGT-Rに恥をかかされたポルシェの製品とは、別次元のリーグになってしまっていた」
「中国も問題だ。
以前にも見たことがあるビジネスモデルだよ。安い商品を市場に溢れさせて競合を殺し、その後で価格を吊り上げるんだ。
今や目抜き通りは荒れ果てたゴミ溜めみたいになり、Amazonは100個の粗悪なコピー品は売るが、実際に欲しい商品は売ってくれない。
消費者に責任ある決断をしろと求めるのは酷なことだよね?」
「責任ある決断をするっていうのは、中国の安いブランドじゃなくて、車に20%多く金を払えと消費者に求めることなのか? 消費者にさらに借金を積み重ねろと求めることが責任あることなのか? あんたは知らないだろうが、消費者としてはコストパフォーマンスが重要なんだ。払った金に対して何が得られるかが重要なんだよ。愛国者や排外主義者になろうとするのは、中古車に1500ポンド使うのが精一杯の人間がやる遊びだ。自分の主張のために経済的に自滅するなんて、誰も健全な財務計画とは呼ばないぞ」
「ホンダは十分な情報を得た上で決定を下している。なぜそれが悪いことなんだ?」
「記事を読んだのか?
彼らは何十億ドルもの投資を帳消しにしているんだぞ。機会費用(※他に投資していれば得られたであろう利益)は膨大なんだ」
「どうしてこれが『十分な情報を得た上での決断』なんだ?彼らはEVプログラムを殺すためだけに何十億ドルも燃やしたんだぞ。まあ、EV市場が今はスローかもしれないが。
しかし、将来的に車が進む道は一つしかない。特に排出ガス規制を考えれば、EVだ。中国もヨーロッパも、スピードは違えどそちらに向かっているし、アメリカにも膨大なEVがある。賢明な決断というなら、これらのEVを世に出して、ホンダが少なくともEVの経験を積むことだったはずだ。彼らはいずれEVに戻らざるを得なくなるんだから」
「今の流れを見る限り、ヨーロッパの自動車会社のほとんど、そして今のホンダは運命が決まったも同然だ。中国メーカーは、効率的で、走らせるにも買うにも安い車を作る技術で、彼らを遥か彼方に置き去りにするだろう。彼らにとってゲームオーバーだ」
「ああ、恐ろしいニュースだ。誠実で真っ当なクルマ作りを愛する者にとっては、心底打ちのめされるよ。いい時代じゃないね」
「ホンダがスウィンドン工場を閉鎖した際、労働者より先に報道機関に知らせて以来(私の親族も何人か影響を受けた)、この邪悪な会社に因果応報が訪れるのを待ちわびていたんだ。
これでようやくリラックスして、彼らの混乱を楽しめるよ」
↑「なぜ彼らを邪悪な会社と呼ぶんだ? 採算が取れず、非効率な工場を閉鎖するのはビジネスとして当然の判断だ。もしあんたが経営者で、採算が取れない工場があったらどうする? 閉鎖するだろ。ボクスホールがルートンの工場を閉鎖した時もそうだったが、あれも邪悪だったのか? あんたがホンダを邪悪だと呼ぶ唯一の理由は、それが身内に直接影響したからだろ」
↑「『邪悪』というのは、労働者より先にプレスに知らされたことだよ。残念なことだが、これが法律というものだ。株主に重要なビジネス情報を先に開示しないとインサイダー取引とみなされるから、大手は先にプレス発表しなければならないんだよ」
「正直、0シリーズの車が生産に入るなんて今知ったよ。コンセプトカー止まりだと思ってた。数年後、ホンダがこれらの開発で得た知識を生かして、eやe:Ny1のような失敗を繰り返さないような、競争力のある航続距離の車を出すことを願う。要するに、技術開発は続けるべきだが、今の段階で無理に市販化する必要はないってことだ」
「なんで彼らは未来を売ろうとするんだ? ただの電気自動車じゃないか。新しくもないし、革新的でもない。ただの電気自動車だ。ホンダは素晴らしい車とエンジンを作れるんだから、電動化はその一部でしかない。全固体電池が確立されてからが本番だろう」

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