試乗:フォルクスワーゲン ゴルフ/ゴルフ ヴァリアント 「こういうのでいいんだよ」

8代目となる新型ゴルフは、ハッチ界の共通語といった存在である。磨き抜かれたマシンは、一般的に強力なオールラウンダーであり、仕様が適切であれば素晴らしいドライブが楽しめるのだ。

らく診
&RESORT HOUSE(アンドリゾートハウス)

フォルクスワーゲンの新型ゴルフとゴルフ Variantに試乗をしてきた。8代目ゴルフのフェイスリフトである。パワートレインは1.5Lの直4DOHCインタークーラー付きターボの48VマイルドハイブリッドのeTSI、2.0Lの直4DOHCインタークーラー付きターボのディーゼルのTDI、そして、2.0Lの直4DOHCインタークーラー付きターボのGTIの3種類で、今回試乗したのは、eTSIとTDIだ。

ゴルフは、1974年に初代が誕生し、世界で3,700万台以上、日本では100万台以上を販売している、常にベンチマークとされてきた存在だ。歴史を振り返ると、フォルクスワーゲンは1937年、国民全員に自動車を普及させる政策を掲げたことがきっかけで創業した。当時レーシングカーの開発者として知られていたフェルディナンド ポルシェに大衆向けの設計を依頼し、家族全員が安全に乗れ、荷物も積めて乗り心地が良く、100km/h以上で走行でき、国民の手の届く価格であることが求められた。そしてタイプ1(ビートル)が開発され、累計1,000万台以上を生産する大ヒットとなった。1960年代には空冷式エンジンの技術が古くなり、後継車種の生産が求められるようになり、水冷式直列4気筒エンジンを横置きにしたFFハッチバック車、ゴルフが開発された。ジョルジェット ジウジアーロがデザインを担当し、シンプルで合理的なボディで十分なスペースを確保。走行安定性、乗り心地、ハンドリングの良さで世界中のユーザーから支持され、ビートルから続くサクセスストーリーを継承したのである。ゴルフ1(1974)は、コンパクトなボディながら、走行安定性や室内空間の効率化など、自動車としての基本的な価値が詰め込まれた。ゴルフ2(1983)はボディサイズを拡大し、ABSをいち早く導入。ゴルフ3(1991)は衝突安全性の向上やエアバッグの採用。ゴルフ4(1997)は内外装のデザインや品質にこだわり、横滑り防止装置を導入。ゴルフ5(2003)はドライバーにフォーカスした車、走りの良い車を追求し、DSGを搭載。ダウンサイジングターボエンジンを採用。ゴルフ6(2008)は安全対策や先進運転機構を充実。そして、ゴルフ7(2012)は、MQBプラットフォームを採用し、先進安全運転支援が進化。現在のゴルフ8(2019)では、エクステリアデザインが刷新され、電動化やデジタル化を強化。48Vマイルドハイブリッドシステムを導入。ゴルフはフォルクスワーゲンの歴史の中で、大衆車としての役割を果たしながら、常に最新の技術を取り入れ、進化を続けてきたことがわかる。

今回は、この8代目ゴルフのフェイスリフト版である、Golf eTSI R-Line(4,553,000円)とGolf Variant TDI R-Line(4,856,000円)に試乗した。まずは、48Vマイルドハイブリッド版のゴルフから。走り出して、そのスムーズさに驚かされた。低い回転数でも太いトルクが得られ、ドライバビリティが向上している。試乗会は豊洲で行われたため、信号が多い。度重なるストップアンドゴーでも、アイドリングストップからのエンジン再始動が非常に速いので、まったくストレスなく運転ができるのだ。路上に出た瞬間に良質なクルマだと感じさせるキャラクターだった。2012年の7代目ゴルフに試乗した際には、その圧倒的な乗り心地の良さとコストパフォーマンスに感銘を受け、他人から新車購入を相談された際には「ゴルフを買っておけば間違いない」と言っていた自分なのだが、今回の8代目では、それがさらに洗練されているように感じられた。燃費は20.8km/Lとかなり良い。ポイントは、アクティブシリンダーマネージメント (ACT) プラスだ。ACTは、エンジン指導値でパワーを必要とする時は4気筒モードで走行し、高速巡行中は2気筒を停止して2気筒で走行する気筒休止機能である。従来のACTは2番ピストンと3番ピストンのみを止めていたが、ACTプラスでは、実際に作動する1番ピストンと4番ピストンが2気筒用に最適化されたカムプロファイルに切り替わるというもの。だが、ゴルフの担当者にも説明された通り、今どのピストンが休止しているのかは、気づかない。ACTのおかげで燃費は約10%向上するとされている。セルモーターの廃止、ベルトスタータージェネレーターの採用、ターボラグを軽減するために、加速時にエンジンをアシストする機能を有しているeTSI、路上での使用感が良くてまた、おすすめしたくなった一台だった。0-100km/hの加速時間は8.6秒(DSG仕様では8.4秒)ということで、日常使いでは十分過ぎる性能である。今回のモデルでは少し硬めのR-Line専用サスペンションが採用されており、より正確でリニアな反応が得られる。だが、ガッチガチというわけではないので、長時間乗っていても疲れる種類のものではない。ステアリングフィールも良好だ。乗り心地は全般的にしなやかで、特に粗い路面での衝撃吸収性が高い。

次はGolf Variant TDI R-Line。2.0Lのディーゼルモデルだ。デュアルアドブルー噴射機構とツインドージングを採用しており、ノックス(NOx)の削減が可能で、エンジンマッピングを変更できるため、従来型TDIよりも最大トルクが大きく、ドライバビリティに優れている。走り出すと比較的静かで、7速DCTトランスミッションがスムーズな運転を提供してくれる。360Nmという太いトルクで、加速力に不満はない。燃費も20.1km/Lと優れているので、高速道路での運転性能を発揮するだとうということ。こちらにも、R-Line専用サスペンションが搭載されているので、スポーティな走りが楽しめる。だが、若干ソフトであるため、家族から嫌がれれることは決してないだろう。だが、とくに都心での日常使いなら、断然eTSIを選びたい。静粛性、燃費、しっかりとホールド感のあるシート、スムーズさにおいて、eTSIの方に軍配が上がった。この安心感は、長距離でも満足させてくれそうなのだ。昨今、クルマの巨大化が叫ばれているが、全長4,295mm、全幅1,790mm、全高1,475mmのゴルフの大きさくらいがちょうど良いと感じるのは、筆者が老害エリアに足を踏み入れているからなのだろうか。それと、「SUV、そろそろ飽きた」って人にも、このゴルフをおすすめしたい。「こういうのでいいんだよ」、それを感じられたことこそが、ベンチマークたるゴルフの真の魅力だと思う。
写真:上野和秀
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