フェルナンド アロンソの要望で生まれたアストンマーティン ヴァリアントが6MTになった理由

アストンマーティンが新たに発表したヴァリアントは、フェルナンド・アロンソの要望から生まれた、トラック走行を重視した限定モデルだ。ちょうど、雑誌のトップギア・ジャパン 062でも特集していたので、良いタイミングとなった。最高出力745PSのV12ツインターボエンジンを搭載し、全世界でわずか38台のみ生産されるこのスペシャルエディションは、アストンマーティンのドライビング哲学を具現化している。サム ベネッツ氏が東京で解説したヴァリアントの特徴を紹介しよう。

自動車業界は常に新たな挑戦と革新が求められる場である。そんな中で、公道仕様でありながらトラック走行を強く意識したスペシャルエディション、アストンマーティン ヴァリアント(Valiant)が話題を呼んでいる。アストンマーティン 東京に、Head of Q Special Project Sales - APAC & Tokyo Brand Centreサム ベネッツ氏が訪れ、ヴァリアントの車両とともに解説を行ってくれた。彼こそ、本社で110周年モデル、ヴァラー(Valour)の開発にも携わり、そのヴァラーに着想を得て生まれたヴァリアントについて語るのに最適なパーソンなのだ。

最高出力745PSの5.2リッターV12ツインターボエンジンに6速マニュアルトランスミッションを組み合わせ、純粋なドライバーズカーにかけるアストンマーティンの献身を体現している。全世界わずか38台のみの限定生産で、グローバルの販売割り当ては既に決定している。

ヴァリアントは、アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1®チームのドライバーであるフェルナンド アロンソの「軽量で過激さを増した、レーシングカーの要素を取り入れたValourが欲しい」という個人的な依頼をきっかけに生まれた。この依頼と、フェルナンドの23年に及ぶF1®のキャリアと限界走行への情熱に触発され、Q by Aston Martinのエキスパートたちの入念な設計と製作による厳格に台数を限定してValiantが誕生した。究極のビスポーク・パーソナライゼーションを目指すQ by Aston Martinは、きめ細かいキュレーションのValiantやValourなどのスペシャルエディションを手掛けるほか、Victorのように完全に1台のみのワンオフモデルのスポーツカーの製作にも対応している。

ヴァリアントとヴァラーは、いずれもアストンマーティンが誇るハイパフォーマンスカーだが、その設計には顕著な違いがある。ヴァラーの設計目標は、90%道路使用、10%トラック使用で、ヴァリアントは90%トラック使用、10%道路使用と逆なのだ。ヴァリアントは道路走行が可能でありながら、トラック使用に特化している。例えば、重量面ではヴァリアントはボディ全体がカーボンファイバー製であり、95kg軽量である点が挙げられる。フロントスプリッター、マグネシウムホイールのカーボンファイバーカバー、サイドシル、リアディフューザーなどが特徴で、ヴァリアントはV12バンテージの2倍以上のダウンフォースを生成する。

カーボンファイバーは軽いだけではなく、利点として、デザインとエンジニアリングの柔軟性を提供する。フロントグリルが構造部品として設計され、後部のトランクがなく、カーボンファイバーの構造を強化している。後部スクリーンパネルがテールゲートとして開き、レーシングヘルメットとブーツを収納可能だ。

また、3Dプリントのリアサブフレームを使用し、トルクチューブはマグネシウム製で軽量化するなど、車両のシャシーが強化されている。そして、マルチマティック社製アダプティブ・スプール・バルブ(ASV)ダンパーを装着。それぞれのダンパーを32の個別のダンパーカーブのいずれかに6ミリ秒以内に同時に調整するASVシステムは、アストンマーティンのエンジニアが乗り心地とハンドリング特性をほぼ無限に調整できる最新のサスペンション技術で、これまでモータースポーツの最上位レベルでしか見ることが叶わなかった、モータースポーツ級のダンピング制御およびオペレーション制御の幅が可能になっている。マルチマティック社製ASVダンパーは、最上級クラスのダイナミックで、極めて限られたモデルでの装備例しかなく、アフターマーケットでは入手できない。

軽量リチウムイオンバッテリー、軽量スプリングを使用した。ギアリンクに重きを置き、機械的な感覚とドライバーとの感情的なつながりを強調している。アストンマーティンの過去の技術と最新技術を融合させたデザインとなっているヴァリアントだが、ヴァラーと大きく異なるのが、ステアリングの形状。ヴァラーでは下側がまっすぐになっていたが、ヴァリアントでは完全な円だ。独自のステアリングホイールを装備し、運転に集中できる設計であるという。

車両内部にはロールケージを装備し、ボディシェルを強化し、四点式レースハーネスとカスタマイズされたRecaroポディウムシートの提供がある。標準の三点式シートベルトも選択可能だ。排気システムと音響に関しては、チタニウム製のフル排気システムを装備し、軽量化と感情的な音を実現している。車両の後部には4本の目立つ排気管が設置されている。

また、試験走行は主にイギリスのシルバーストーンのストウサーキットで行われている。ストウサーキットはアストンマーティン専用のテストコースであり、ここでの走行データがモデルの性能向上に大いに役立っているのだ。

ヴァリアントでは世界で38台のみ生産される特別な製品だ。展示車のカラーは「オーリックゴールド」で、ボディスタイルに合わせて特別に設計されている。Q部門による製作で、すべての車両は完全にカスタマイズされ、顧客の要望に応じた仕様が可能である。

フェルナンド アロンソは、アストンマーティンのヴァリアントに対して強い影響を与えた。ちなみに、アロンソの一台も限定38台のうちに含まれており、贈与ではなく購入したという。ヴァリアントは、アロンソ自身が試乗し、パフォーマンスの評価を行っている。特に、彼はステアリングホイールに対して高く評価している。アロンソの要望により、ステアリングホイールはシンプルで、常に一定の感触を提供するよう設計された。アルミニウム製のステアリングホイールは、ドライバーに優れた操作感を提供し、ドライビングの楽しさを高めている。

また、アロンソはヴァリアントのパフォーマンスに非常に満足しており、その高い操作性と楽しいドライビング体験を評価している。タイヤからのスモーク量からもその楽しさを表現していた。

アストンマーティンは、性能数値やラップタイムよりも、ドライビングの楽しさに重点を置く設計哲学を持っている。これは、ヴァリアントやヴァラーにも引き継がれており、特にヴァリアントは「運転する楽しさ」を最優先に設計されている。アロンソの要望も、こうした哲学に合致する形で反映されており、ドライバーとの一体感を重要視している。

今後、アストンマーティンはさらに進化を遂げる可能性があります。特に、ドライビングの感覚やフィーリングを大切にするという哲学は、今後のモデルにも引き継がれていくだろう。テクノロジーの進化とともに、どのように「楽しさ」を追求し続けるのかが、今後の注目ポイントとなる。

サム バーネッツ氏に伺った。
この時代にマニュアル車を出す意義は何ですか?
自動車とドライバーの究極のつながりを実現するためです。マニュアル車は、運転を学ばなければ最適に運転できないもので、ゲームのように簡単に操作できるものではありません。運転の技術を磨く必要があります。

アストンマーティンのオーナーはマニュアル車を好む傾向がありますか?
製品によると思います。DB12やVanquish、DBXのような車両では、オートマチックが未来的であり、簡単に運転できて高級感があるため、オートマが好まれることが多いです。しかし、情熱的なアストンマーティンのファンにはマニュアルギアボックスを好む人も多いのも事実です。

将来、アストンマーティンはマニュアル車を続けて出すのでしょうか?
将来の製品計画については具体的にはコメントできませんが、お客様がマニュアル車を望む限り、提供し続けたいと考えています。

ヴァリアントとマンチャーの関係について
ヴァリアントは1970年代から1980年代のマンチャーからインスパイアされていますが、ロードカーとして必要な要素を重視して設計されています。マンチャーはその時代の影響を受けつつ、より過激な特徴を持っています。また、マンチャーは少数の人に運転される特別な存在であり、レースでは目立った成功はありませんが、多くの人々の心に特別な位置を占めています。

ヴァリアントの「フィーリング」とは具体的にどういうことですか?
ヴァリアントは運転する際の「生の感覚」、つまり素材感や原材料的な感触を大切にしており、ドライバーが学ぶことでより深い運転体験を提供します。DB-12は安全性と安心感を重視し、どんな状況でも安心して運転できる設計ですが、ヴァリアントはより過激な運転感覚を提供し、ドライバーが挑戦を楽しむことができます。

アストンマーティン ヴァラー/マクラーレン 750S vs フェラーリ 296 GTB/教習車はランボルギーニ レヴエルト/パガーニ ウトピア:トップギア・ジャパン 062





トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2024/08/72155/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

トップギア・ジャパン 064

アーカイブ