試乗:一部改良のメルセデス・ベンツ EQAとEQBを同時に乗って比較してみよう

初めての電気自動車でEQAとEQBを検討する人も多いと思う。2台の違いはどこにあるのだろうか?一部改良のメルセデス・ベンツ EQAとEQBを同時試乗で比較してみよう。


メルセデス・ベンツ車では、BEV(バッテリー電気自動車)の車名は最初に「EQ」が付けられる。じつはドイツ本国などでは「メルセデスAMG」や「メルセデス・マイバッハ」のように「メルセデスEQ」という「メルセデス・ベンツ」とは別のブランドになっているのだが、日本市場では諸般の理由で「メルセデス・ベンツ」を名のっている。

もっとも、メルセデスEQブランドは将来的にフェードアウトすると言われているし、今年4月にワールドプレミアした新型GクラスのBEV版は「EQG」ではなく「G580 with EQテクノロジー」となった。

いっぽう、2030年までには全新車をBEVにすると謳っていたメルセデス・ベンツだが、その方針は撤回されたようだ。まだまだ新規エンジンをはじめ、ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の開発も進めていくようだ。EVシフトへの波は広がっているものの、思うように進まないのは世界中どこでも同様ということだろうか。

さて、そんな中にメルセデス・ベンツ日本による試乗会で、一部改良されたEQAとEQBに乗る機会を得たので、その印象を報告しておこう。

まずEQA。日本ではEQCに続くメルセデス・ベンツ第2のBEVとして2021年4月にデビュー。今年4月に内外装の質感をアップするなどの一部改良が行われた。フロントグリルは最新のメルセデス・ベンツBEVと同様の立体的なスターパターンをあしらった。バンパーの形状も変更されている。

前輪を駆動するモーターのスペックは190ps(140kW)/385Nmで、従来型のEQA250より最大トルクは15Nmアップ。リチウムイオン電池の容量は70.5kWhにアップされ、WLTC一充電走行可能距離は591kmに伸びた。そのため、車名は「EQA250+」に変更されている。

前置きが長くなってしまったが、走り出そう。システムを立ち上げ、セレクターをDに入れ、スロットルを静かに踏み込めばスッと発進する。EV黎明期のモデルにありがちだった、初期ゲインの強いズバッと出るような発進はせず、ジェントルな走り出しはメルセデスらしく、むしろ扱いやすい。

街中から首都高速に入り、少しずつ速度を上げていって感じたのは、一部改良前より乗り心地が格段に良くなったこと。従来型では、AMGラインの235/40R20タイヤを履いていると足元のバタつきが気になったが、今回の試乗車は同サイズのタイヤにもかかわらずスムーズで、不快な感じはない。

バッテリーを床下に敷き詰めた低重心ゆえ、コーナリングなどでの安定性も高く、ステアリングホイールのパドルでブレーキ回生の強度を変えればエンジンブレーキ的に減速が得られる。ただし、ワンペダルにはならないのはメルセデスの矜持なのだろう。

BEVゆえ、走行音もきわめて静か。また、他の最新メルセデス車同様、ステアリングホイールのリムに静電容量式センサーを備えたパッドを採用したので、ステアリングホイールにかかるトルクがなくても、ドライバーがステアリングホイールを握っていることが認識されるので、アダプティブ クルーズコントロール(ACC)を使用して高速道路走行中に「ハンドルを操作してください」といったメッセージが出ることもない。これ、ACC使用中はけっこうありがたい装備なのだ。

MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)の音声認識やAR(拡張現実)を使用したカーナビゲーションなどもクルマが新しくなるごとに進化しており、扱いやすくなっている。

帰路はEQBで。こちらは2022年7月にメルセデス・ベンツBEVの第3弾として日本デビュー。今年6月に、EQAとほぼ同様の一部改良が施された。

今回の試乗車は、EQB350 4マティック。車名が示すように前後に2モーターを搭載する4WDだ。こちらは従来型からモーターのスペックは変わっていない。それでも、2.3トン近い車両重量でも292ps(215kW)と520Nmのパワースペックは十分以上。EQBにもEQAと同スペックのEQB250+もラインナップされるが、EQAよりは人や荷物を多く積む機会が多そうなEQBは、やはりこちらを選びたくなる。

今回は好天で舗装路ばかりの走行だったから、前後2モーター4WDの恩恵は分かりにくかった。それでも積雪地帯に住んでいたり、ウインターレジャーで出かける機会が多いなら、やはりこちらをオススメしたい。

静粛性や乗り心地は、EQAと大きくは変わらない。というよりは、EQAもEQBも、乗ってみるとやはりメルセデス・ベンツなのだ。つまり、インターフェースの視認性や操作性、ステアリングホイールやペダルなどの操作感とそれに対する反応、そして運転していてのボディのしっかり感など、エンジン車にも共通するメルセデス・ベンツらしさは、このEQAでもEQBでもまったく変わってはいない。

それはつまり、エンジン車のメルセデスから乗り換えても違和感はないということ。予算とインフラ(自宅の充電環境など)さえ問題なければ、EQAはファースト メルセデスとして勧められる1台だ。EQBは3列7人乗りで、しかも350なら4WDだし、ミニバン的にも使うことができる。また、両車とも外部給電が可能だから、いざというときにクルマに蓄えた電力を家庭で使うこともできる。

車両価格はエンジン車より高めだが、国や自治体からの補助金をうまく活用すれば、かなりの恩恵を受けることができる。

一部改良で内外装をリフレッシュし、機能も充実して完成度が高められたメルセデス・ベンツ EQA & EQB。興味を持たれた人は、まず一度、試乗してみるといいだろう。(文:篠原政明 写真:上野和秀、内田俊一)

■ メルセデス・ベンツ EQA250+ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4465×1850×1625mm
(AMGラインパッケージ装着車)
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:2020kg
●駆動方式:FWD
●最高出力:140kW(190ps)/3500-7000rpm
●最大トルク:385Nm/0-3550rpm
●バッテリー容量:70.5kWh
●一充電走行距離離:591km(WLTCモード)
●乗車定員:5名
●タイヤサイズ:235/45R20(AMGラインパッケージ装着車)
●車両価格(税込):771万円

■ メルセデス・ベンツ EQB350 4マティック 主要諸元

●全長×全幅×全高:4685×1835×1705mm
(AMGラインパッケージ装着車)
●ホイールベース:2830mm
●車両重量:2180kg
●駆動方式:4WD(前後2モーター)
●システム最高出力:215kW(292ps)<EEC>
●システム最大トルク:520Nm<EEC>
●バッテリー容量:66.5kWh
●一充電走行距離離:467km(WLTCモード)
●乗車定員:7名
●タイヤサイズ:235/45R20(AMGラインパッケージ装着車)
●車両価格(税込):899万円

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