ケータハムのEVスポーツカー、プロジェクトVのチーフデザイナーがこだわった1mm

ケータハムのEVスポーツカー、プロジェクト Vが東京オートサロン 2024を会場に、日本で初めてお披露目され、プロジェクトVのチーフデザイナーであるアンソニー ジャナレリ氏が来日し、インタビューを行った。

ケータハムのEVスポーツカー、プロジェクト Vが東京オートサロン 2024を会場に、日本で初めてお披露目され、プロジェクトVのチーフデザイナーであるアンソニー ジャナレリ氏が来日し、インタビューを行った。
ジャナレリ氏のビジョンは、世界的に著名なイタリアのエンジニアリング会社、イタルデザインによって実現されている。プロジェクトVは、リヤアクスルに搭載された272PSのシングルモーターを動力源とするバッテリー電気パワートレインを採用している。先進的な熱マネジメントを備えた55kWhのUSOCリチウムイオンバッテリーパックが組み合わされ、150kWのDC急速充電器を使えば、15分間で20-80%の充電が可能だ。0-100km/h加速は4.5秒未満、推定最高速度は230km/h、WLTP航続距離は400km。
ミニマリストのデザイン哲学は、セブンと同様、プロジェクトVが軽量でシンプルであること。革新的なカーボンファイバーとアルミニウムの複合シャシーを採用することで、車両重量1,190kg(2+1シートレイアウト)を目標としている。ケータハムは現在、日本のVTホールディングスの傘下にあり、オーナーである高橋社長のビジョンを具現化したものでもある。

ジャナレリ氏は、プロジェクト Vを以下のように説明した。
「ケータハムは、シンプリシティ、軽量さ、柔軟性という、ケータハム 7の哲学に基づいています。私のデザイナーとしての役割は、この哲学を形に変換することでした。けれど、今回は軽量のスポーツカーではありません。実際にはスポーツクーペであり、最終的には効率的でなければなりませんでした。
この意味において、コンセプトのシンプリシティは多くの対称的な要素を使用することで達成されています。たとえば、車の側面プロファイルを見ると、前後のアーチが最も対称であります。また、別のシンプリシティのアプローチとしては、スポーツカーの形を可能な限り少ない線で定義しようとすることです。つまり、子供にスポーツカーを描くように頼んだ場合、車輪の周りに二つの円を描き、キャビンの上に一本、それぞれの車輪の上に一本の線しか描かないでしょう。これがスポーツカーの形とも言えるのです。こういったシンプルな線だけで、プロジェクトの全体のプロファイルが説明され、実際にはスポーツカーの本質です。
私の仕事はまた、ケータハムのチーフデザイナーとして、ケータハムのスタイリングDNAを作成することでした。基本的に三つのスタイリングレイヤーのコンセプトを作り出すのです。たとえば、車の底層は黒く、車のすべての空力コンポーネントの機能を示しています。そして、車の中間領域は非常に厳格なラインを作り出し、滑らかで制御されています。すべてのサーフェスには角度がついた部分もあり、ある意味で非常にモダンで、この車にはロボティックな感触があると言えます。

最後に、最上部のレイヤー、全体の表面は非常に柔らかく、有機的で、非常に官能的です。
ですので、この車には全体的にタイムレスなデザインを与えるビンテージな外観を与えています。そして、室内では、文化的でモダンなスタイルをデザインしました。
そして、マーケティング的にも、デザインを非常にシンプルでモダンにしました。ケータハム 7とのファミリー感を作り出すためです。プロジェクトVのデザインプロセスのスタート時には、長い7のシガーシェイプが浮かびます。これは、フロントで認識できるようにしました。ただ四つのホイールとキャビンを非常にシンプルでクリーンなボリュームで覆うだけです。これが形、シンプリシティ、ケータハム7とのファミリー感です。
そしてこれが、できるだけ少ない素材を使用しようとした理由でもあるのですが、このように大きな開口部をもたせたのは、軽さを作り出すためです。ここにはエアを挑発するためのこれらの小さなサイドプレートしかありません。全体の色も、非常に軽く感じられるのではないでしょうか。
インテリアも、同じ原則です。非常にクリーンでシンプル、エレガントです。私たちが達成したかったのは、ドライビングエクスペリエンスに非常に良いフォーカスを当てることです。ですので、スポーツカーで期待される要素だけが見つかるでしょう。クラシックなスタイルの計器盤、ナビゲーションシステムを見るだけの小さな画面、そしてエアコン。これらがこの車に追加したい4つの機能です。それ以外は、ドライビングと車のエモーションに向けられています。
そして電気自動車を製造する際の非常に良い利点の1つは、実際にはパワートレインが非常に小さいことです。これは非常にコンパクトなので、スポーツカーにとっては、大きな利点です。非常にコンパクトな外観スタイルに対して、比較的ゆとりのあるキャビンが作れるのです。リアに追加のシートを収容してみました。こちらのクルマでは、中央に1つのシートのみを配置することにしました。これは主に、例えば子供が親と一緒にドライビングを楽しむことができるようにするためです。通常、子どもはシートの後ろに閉じ込められがちですが、この構成では、道路を見ることができ、父親や家族と一緒にドライビングエクスペリエンスを楽しむことができます。
最後に、この良いプロポーションを作り出すために、優れたハンドリングと楽しさが感じられるダイナミクスには自信を持っています。バッテリーの位置をシートの前と後ろに配置することで、シートは非常に低くなり、頭の位置は7と非常に似ています。これは、運転が楽しいクルマに仕上がっています。プロジェクト Vを楽しんでいただければ幸いですし、7を望む真のカーエンスージアストの次世代の提案を楽しんでいただければと思います」

終了後、アンソニー ジャナレリ氏がインタビューに応じてくれた。

―ジャナレリさんは7のオーナーだそうですが、ケータハムのDNAをどのようにプロジェクト Vに反映させたのですか?

7は軽くてシンプルで、自分の考えた通りにクルマが先に動いてくれているようで、本当に運転するのが楽しいのです。ケータハムで大事なことは、高いドライビングパフォーマンスを持っていること。私がデザイナーとして果たす役割は、この要素を視覚的に具現化することです。その結果、非常にクリーンかつ高い精度を保ちながら、説明できたと自負しています。サイドから見て、ボディの中間エリアは、その厳格で精度の高いエリアに焦点を当てました。この領域を見ると、そこには精密さが漂っています。これが私が試みている解釈の背後にある理由です。同時に美しいラインを引くことにも注意を払っており、その結果、見るだけで実感できるリアリティが生まれています。

―プロジェクトVで、難しかった部分はどこですか?

まず、リアに追加のシートを追加することが挙げられます。追加しても、クルマのシルエット、プロファイルがまだセクシーで魅力的であり続けなければならなかったからです。デザインをするということは、常に妥協しなければならないということでもあります。ですから、後席に座席を追加しながらも、美しくし続けるために、頭のためのスペースを少し犠牲にする必要があり、非常に難しい課題でした。結果的に、180cmの男性は難しく、小さい子供用の座席になりました。
それともう一つ素晴らしいことがあるんです。サイドのセンター部分の光のリフレクションを見てください。上下左右からボリュームがブレンドするところですね。ここは、精密さとコントロールの観点から非常に、非常にデリケートな部分だったのです。3Dモデラーと一緒に議論しながら、光の反射を正確に具現化するために、真剣に取り組みました。そして、このエリアをわずか1ミリだけ内側に押し込んだだけで、急に光の反射が正確かつ美しくなったのです。たったの1ミリですが、こだわった結果、とても良い結果を生んだのです。

―初めてプロジェクト Vを写真や動画で見た際に、無駄なラインがないと感じました。ビジーな要素を省いていったのでしょうか?

全くその通りです。それはデザインにおいて削ぎ落としのプロセスと呼んでいます。例えば、iPhoneなどのApple製品で、使用されている哲学です。基本的に必要ではないものは何も追加しないのです。でも、スポーツカーのようなダイナミックな製品に対しては、削ぎ落としを行うのは難しさが出てきます。時折、削ぎ落とし過ぎて、エモーションが足りなくなることがありますから。ですから私は、形のコントラストを作り出し、曲線を加えました。精度の高いラインを上下に設定し、曲線を加えることで、ドラマを作ったのです。

―インテリアはかなりモダンで、最新のテクノロジーが使われていますね。そこで葛藤はありましたか?

インテリアではモダンで先進的なものを使っています。でも、全体の外観になじませていかなければなりません。例えば、グラフィックで遊びの要素を加えました。そしてヴィンテージとモダニティを混ぜると、見やすく、機能的に優れた効果を生み出すこともあります。メーターは、非常に読みやすくなりました。現代の車は、複雑すぎると言われることがあります。その点、プロジェクト Vは軽くて、経済的でもあります。小さなスクリーンを製造する方が、複雑な機械的なメーターよりも簡単なのです。丸いダイヤルの裏には実際には液晶がありますが、とても見やすくなりました。見れば、車の速度が簡単にわかります。これは昔から作られているアナログなデザインのメーターです。では、アナログのものを使えば良いと思うかもしれませんが、高価なのです。こちらの方が安くて、作りやすいです。それから、情報が多すぎるクルマもあります。画面を見ると、何を見たらいいかわからないし、クルマの方も、何を伝えればいいかもわからない。そうではないです。運転中は、むしろ情報が単純な方が良いこともあるのです。

―日本のファンにメッセージをお願いします。

ケータハムが電動スポーツカーを出すと聞いて驚くかもしれませんが、実際にはEVスポーツカーにすると、多くの新しい利点があります。特に主張したいのは、車のサイズがインテリアキャビンに比べて非常に小さいことです。そのことはGTカーとして、私にとっては完璧な意味があります。このコンパクトカーには大きなキャビンを作ることができました。EVでなければ、このように作ることはできませんでした。ですから、プロジェクト VがEVであることは重要なポイントです。そして、プロジェクト Vは本当のスポーツカーです。それは単なるパワーだけではありません。この車はシンプルで、軽量で、運転が楽しいです。そして、プロジェクト Vの外観は、EVならではのもので定義されています。もしガソリンエンジンだったら、この比率は実現できませんでした。私がこだわり抜いた美しいEVのスポーツカーを、皆様に楽しんでもらえる日が来ることを祈っています。

ジャナレリ氏に、日本語字幕を付けたYouTubeビデオの評判が良いことをお伝えすると、嬉しそうに笑ってくれた。このプロジェクト Vだが、写真で見るよりも、実物の方が美しいと感じた。光の加減、見る角度によって違う表情を見せてくれるプロジェクト Vとケータハムの未来を楽しみにしたい。
ケータハム プロジェクト V:272馬力のルーフ付きライトウェイトEV

エコ意識のスピードウイーク/ホンダ シビック タイプR/トヨタ GR86:トップギア・ジャパン 058




トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2024/01/66482/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

トップギア・ジャパン 063

アーカイブ